あらゆる可能性を追求した国有林改革を望む


                        (週刊農林、平成9年4月5日号に発表)  小澤普照(林野庁OB) 

 はじめに

 今、林野庁の現役の方々が長官を先頭に改革に取り組んでおられるわけですが、最初に世間の皆様にお願いをしておきたいのは、何とか林野庁を励ましてあげて欲しいということです。
 国有林問題については大変長い期間の集積が今現在の結果をもたらしたわけですから、むしろ過去において係わりをもってきました私どもが受け止めなければならないことが多くあると考えています。
 さて私が国有林経営の中枢であった林野庁業務課長のポストに任命されましたのは昭和57年の10月のことでした。
 それまでの10年間民有林関係の仕事を主としていたのですが、突然、巨大な図体をしているものの操縦不能に近い飛行機の機長に任命された趣がありました。
 世に土光臨調あり、また中山素平氏の論文が数年後にでてくることからも分かりますようにやはり現在と似た状況がありました。
 丁度、国鉄改革たけなわの時期でもありまして、労使交渉の場でも率直に意見を述べさせてもらいました。要約しますと「国鉄は行き詰まって分割民営化が決定的となったが、状況としては国有林がもっと悪い事態に追い込まれていることを認識する必要があること、たとえば国鉄にはそれでも新幹線というような目玉商品があり、鉄道運賃も国民の理解が得られれば変えることもできる。翻って我が国有林にはかつての木曽ヒノキや秋田スギという主力商品も底をついてきている上、木材供給シェアが低下し価格形成力もない状況であるから経営の建て直しには新しい発想をもってお互いに全力をあげて取り組む必要がある。」ということでした。
 当時も民営化の話もありましたし、今ですと解体という言葉もあるようですが経営の当事者というのは、国営でも民営でも同じだと思いますがどうしても墜落を防ぐのに全力投球してしまいますので、このことはある程度ご理解もいただく必要があろうかとは思いますが、したがって現在の状況でも同じようなことがいえますが当事者を孤立させても余り意味がないといえます。
 59年度から、新たに青田売りとの批判もある中で分収育林の事業をスタートさせましたが、臨調の土光会長さんから私を利用してもらってもいいですよと直々励ましていただきまして、初年度のポスターには土光さんの写真を使わせていただきました。
 このようなことは当事者にとってどれだけありがたいことでしょうか。私は一生忘れないようにしようと考えております。

 1.何故著効のある改革ができなかったのか

 このことは人によりまして見解が異なると思いますので、全くの個人的な考えで申し上げます。
 先ず申し上げたいのは、一つは制度的な問題があります。
 国有林の制度問題といえば、殆どは独立採算性に話がいってしまいますが、私の感想としては先ず、官庁と現業事業体としての二足の草鞋を履いたことにあろうと思います。
 つまり国有林は官庁としての要素と企業体としての要素の二面性を持っているということです。
 この辺の事情は例示的にお話しする必要がありそうです。
 先ず人事ですが私を含めて幹部になった人々の殆どは国有林経営にのみ専念するわけにはいかなかったはずです。視野を広くするという利点はありましたが、他省庁を含め多くのポストを渡り歩くことになります。
 これは若いうちだけではなく幹部になってからも断続的な勤務になるところが官庁的側面でありましょう。
 しかも短期滞在ということでよくドイツの営林署長の5年、10年という同一ポスト任用が話題になりますが、署長の最低2年勤務ということだけが定着したにすぎません。
 私は昭和32年の採用後、最初の6年間は、担当区(現森林官事務所)補助員、担当区主任(現森林官)、営林局係員、営林署課長、営林局係長という具合に、いわば叩き上げコースで現場を主体に歩き(入り立ての際配属先の営林局長に現場勤務をお願いしました)、署長になるまでに3つの営林署を体験しました。
 私はこの後、4年間の他省庁出向を経て昭和43年に営林署長に任命されることになりますが、この時期は丁度、いわゆる2確認後で常用化が促進された時期でしたが、私は定年制も無い中での常用化に危惧の念を抱き、定年制の導入の必要性について意見を申し述べたのですか゛、公務員であるから定年制は設けられないということでした。
 しかしその必要性は当時の林野庁もお分かりだったようで、十数年後に労使間合意の定年制が実現した直後、追い打ちをかけるように国家公務員全体に定年が設けられ、国有林職員の定年制はやや短くセットされていましたので公務員定年制に準じて伸びてしまったということもありました。
 さて、国有林経営がここに至った理由はいろいろありますが、既にいわれていることは重複を避けたいと思います。
 過去のことをいってもあまり参考にはなりませんが、前述57年から国有林経営を担当して困りましたことは、企業経営といいながら退職金の積み立てもなく、もちろん常に変動する木材価格に対する調整資金もありませんでした。持ち越し現金制度がありまして、ある程度の弾力的な予算執行は可能となっていましたが、要員の急速な縮減などの事態は予測されていなかったのでありましょう。
 したがつて近年の退職者の急増に伴い、年間400億円にも上る退職金を国家公務員といわれながら利付きの借金で支払ってきたという状況でした。
 人件費の中で大きいのは共済組合の国の負担金もありましてこれが300億円くらいあると思いますが、これらも借金で賄われています。
 また近年まで独立採算制は単年度収支方式だからまずいなどといわれてきましたが、最近は一般会計も単年度方式だということが世間も分かってきたようです。
 当事者にとって官庁であって企業体であるということは、世間のいう官業非能率という語感とはやや異なるものがありました。たとえば、企業体であるから事務も簡素にやるべきなのですが、これが逆でして、官庁としての基本的な事務の上に、企業体としての事務、例えば販売や労使事務が加わる訳ですから2倍までにはならないのですが、通常の官庁の5割り増し位にはなっていたと思います。
 長官在任中に当時の会計検査院長さんに書類の山づくりは止めて本物の山づくりに邁進させていただきたいと申し上げまして、事務量の軽減を図ったり、大蔵省にもお願いをして国有林の事務の一部をアダムスという電算機による会計処理システムに乗せていただくなどの措置をとったことが思い出されます。
 何事も林野庁の失政といってしまえば簡単ですが、なぜ債務が膨らんだかという直接的な理由は、人員の縮減を漸減方式で行わざるを得なかったということでしょう。
 一挙に行うことができれば、退職金は必要ですが、後々の財務は大変楽になります。
 もしこれを失政であるというのでしたら、今現在それができるでしょうか。
 要員も1万人の労使合意ができても一挙に行うにはどういう方法が考えられるのでしょうか。
このような具体的なことに知恵を絞るあるいは応援をしてくれる人や組織があるのかということを真剣に探らなくてはなりません。
 他省庁に約3千人、地方自治体にもかなりの職員を収容していただき感謝しております
が依然として同様な状況は続いております。
 一方、今回もいろいろ提案がありますように、今までも多くの要請なり提案があったわけであります。
 しかしながら、実行に移されたものは余り無いというのが実態でしょう。
 緑の国債を発行したらという声もありまして、私も実現できないかと考え10数年前から検討はしましたが、制度としては可能なのですが、当時の国債の利回りは相当高く期間も短いわけで、これに対して森林国債あるいは国有林債ということになりますとごく低利回りにしてかつ長期のものにする必要があるということで、結局引き受け手が見つからないであろうということで見送られた経緯がありますが、現在ですと超低金利の時代でもありますから再検討のチャンスではあろうと思います。
 公益林と経済林を区分せよとか、林野本庁の組織を国有林と民有林に分けるべきだというようなご意見は、実行に移されはしましたが、経営の建て直しの特効薬とはなり得ませんでした。
 

2. 3兆円の債務処理と今後の対策

 最近の国有林問題は専ら3兆円余の累積債務を切り口として論じられています。
 しかも、借金を始めたのがそもそもの間違いであるという論調になりますが、今でしたら誰でもそういえますが、昭和51年度からの財投資金資金導入に際し当時、導入反対論を唱えた有識者は居られたのでしょうか。私は当時国有林部局ではありませんでしたが本庁に勤務しておりました。しかし反対論を唱えた記憶がありませんので先見の明が無かったといわれれば反論は出来ません。
 なお当時、導入反対論を明白にされていた方がいらっしゃったのであれば、現在進められている林政審の委員等に加えていただけないものでしょうか。
 ところで中山試案あるいは現在もあります民営論ですが、これらの意見の中で、見落としがあるように思えてならないことがあります。
 つまり単純に考えまして商品が無ければ商売が成り立たない訳ですが、外部の方々あるいは内部にも国有林には商品があるという認識があった、あるいはまだあるのかと思われるのです。
 昭和57年頃は、国産材に対する需要が低下してきたことと同時に国有林の木材生産可能な森林資源は減少しており、収入を増加させるための増伐はなんとしても避けなければならないとの決意で取り組んでおりました。
 一頃から見れば山には緑が増えてきていますが、それが即売り物になる木ではありません。
 それからもう一つ、林業は皆伐施業ですと、50年から100年に1回の主伐として、さらに非生産林もありますから毎年、伐採すなわち収益をあげることのできる面積は経営山林の1パーセント程度と見るのが妥当でしょう。
 国有林のように生産林比率の低い森林ではもっと効率が悪くなりますので、この収益面積比はさらに低下し、これは民営化によって向上する性格のものではありません。
 王子製紙の甘利氏の論にもありますように、かの王子にして山林は赤字経営なのです。
 国有林は戦争直後は木がありました。しかしその後木材需要の上昇と物価高騰を抑制せよとの世論におされたこと、洞爺丸台風、伊勢湾台風などの天災も加わり、増伐による大径木の急速な減少は国有林材といえば商品価値があるとする常識を過去の物語にしてしまっていたのです。
 中山論文が出た頃の国有林内部では、民営化してやっていけるのは一つか二つの営林局だろうといわれておりました。
 760万ヘクタールの国有林のうち経済林と目されるものはどのくらいあると考えるべきなのでしょうか。
 直感的には人工林を主体としてこれにヒバ林など一部天然林の生産林が加わることになろうかと思われます。
 ところが人工林でも、若齢、幼齢の森林は20年30年経たなければ経済価値を持たないわけですから、即収入対象になるような印象を与える経済林というような呼び方には、やや疑問を感じるようになりました。
 人工林のなかで、成熟林と呼べるものは商品価値のあるものですから、財投資金導入の趣旨からいえば累積債務の返済には先ずこのような林分の林木を換金して返済に充てるべきでありましょう。
 民営論とのからみでいえば、未成熟の人工林につきましては、20年、30年先でなければ通常の商品としての換金できませんので現在のところ商品価値はありません。これを民営化ということで譲渡などの処理を行おうとしても、通常の売買ではただ同然になりますので、今までの投資額の回収は出来なくなります。未成熟人工林を不良資産とする見方は国際的にも無いと考えます。
 現実には商品価値は無くとも投資額などから計算して一定の価格をつけることはできますが、この価格により、長期超低利の政策資金を導入し立木の将来における伐採権を譲渡することは理論的には可能ではありましょうし、このような方法が採れれば、債務の付け替えにはなりますので、国有林債務を相当軽減することはできます。
 未成熟林の換金方法については分収育林のような方法もありますが数千億円以上のプロジェクトを仕組む場合にはいろいろな角度からの検討が必要でしょう。
 3兆円の債務イコール悪であるという図式を作ってしまいますと問題の解決を誤る恐れがあります。何故ならば民有林においてもかなりの債務は生じております。
 したがって現行利子率の負担は国有林であってもなくても過酷な状況にあるとの論議から結論が導き出される必要があります。
 国有林の借金のけりがついても民有林問題は解決しないことは明かでありますし、まして国有林を民営化すれば問題が解決するわけでもないと思われますのでクールな議論展開が望まれます。
 同様、元本は棚上げして利息の支払いを林野庁にさせるという意見もありますが、私はこの話は慎重にしていただきたいと考えます。
 既に利払いだけでも累積額が1兆7千億円にも達しているということですから、元本の縮小を図らない限り、森林の年成長率が2パーセントから3パーセント程度であることを考えますと非借入金部分の森林資源をプールしましても森林資源を引き当てにした借り入れは限界点に達したということが審議がなされていることの理由でありましょうから現時点では、累積債務のストップをかけることが焦眉の急ということも分かりますが、債務が3兆円にも達した段階では利払いを減少させる方策に全力を挙げることが正攻法であると考えます。
 したがって、人工林の収入を元本返済に充てながら、現在も行われている利子補給も最大限実施するという、いわば挟み撃ち作戦により累積債務の減少を図る必要があります。
 一方、借り入れ対象の事業は極力治山事業型への転換の可能性や森林債の発行などを検討する必要がありましょう。
 もう一つは給与費の問題ですが、一般財政、土地リース代、人員縮減期間はアルバイトなどの非常措置も認めるなどあらゆる措置を講じて借入金に頼らないようにする必要があります。
 なお、相当な規模を持った森林経営の民営化があり得るとすれば林業を主体とするものではなく、レクリェーション利用や教育的利用などのサービス的な側面を含む第三セクタータイプの管理委託会社のようなものかも知れませんが十分な検討を必要とします。

   3. 林政審議会に望むこと

 今までも経営改善の都度林政審の審議を経てきたわけですが、後になって見れば論議不足の思いが残ります。
 前回(つまり現行)は、累積債務が経常事業に影響を与えないよう経理を区分するとか借り換えの利子及び元本償還に一般財政資金を導入するということに目標をおいたわけです
が、その後の経済情勢の変化もあり、このままでは国有林の再建は出来ないということですから、今回はあらゆる可能性を追求していただきたいのです。
 そのためには審議状況の徹底した公開が必要です。新聞のスペースは限られておりますので、新聞発表の一週間後で結構ですから、林野庁のインターネットのホームページに公開していただけば、さらに世間の反響も得られることと思います。
 環境庁への移管の話もあり、所管替えは有償ということは認識されてきたようですが国立公園ですと奥地が多いわけですから経済的資産価値はどの程度のものでしょうか。概略の試算が急がれます。私はむしろこのような問題の起きてきた所以が林野庁(国有林)には環境保護の法的保護制度が無く安心できないということと解するものですから、この際、特別な保護立法措置を講じ、官庁ごとに森林を縦割りにするというような弊害は避け、むしろ林野庁に一元化して必要により共同管理方式で、効率的な保全管理を行い、森林に詳しい林野庁職員を兼務として給与の分担を行う方が国家的には得策ではないのかと考えます。
 また地方自治体への移管論もありますが、北海道有林の新体制への移行方策を見ても分かりますように公有林も一般財政支出の増加を免れない状況になっております。
 また委員の皆様もご承知のように各県の森林整備法人が抱える累積7千億円ほどの債務問題もあり、森林整備法人による整備人工林の単位面積当たりの債務額は国有林のそれと似た状態にあるといわれておりますが、今後の地方自治体の財政負担の増大もありますので、国有林の債務の付け替え型の移管論については地方の意見を良く聴いていただく必要がありましょう。
 むしろ、国有林については元々偏在型の配置に問題の提起もあったところですから、この際、森林の流域ごとに見直しを行って国土・環境保全タイプの森林やカナダのモデル林のような森林を中心に国有林として再編整理まで考えるならばそれは大きな政策ということになります。
 国民一人当たり200坪の国有林の水準は、少なくとも新たな国民的合意が出来るまでは大きく変動させないことが後世のために良いと思う次第です。
 不動産屋まがいの林野庁という声もありますが、戦後食料生産のため50万ヘクタール程度の国有林を放出したり、一方、荒れた山林を保安林として25万ヘクタールも国有林で買い入れもやってきたわけでありますが、民営ばかりであれば(我が国の森林経営が民間企業あるいは個人経営のみに任されているのであればとの意)このようなことも不可能であったことでしょう。
 最近の地方自治体への数千ヘクタールの譲渡や都心部の土地売りなども批判があったりしますが都心の土地も戦後買い入れたものでした。
 民営でしたら売買は自由となるはずですから民営化論を主張される方と売買は良くないという方とは基本的に考えが異なります。樹木も切るなという人もあれば、切らせてくれという人もいます。
 このように対立する意見を調整される立場は辛いものですが乗り切っていただきますようお願い申し上げます。

 同時に林野庁の現役の方々にもお願いがあります。
 観念的にはロマンの香りに満ち溢れている森林も現場に入れば荒々しい自然、険しい山岳林のなかでいろいろな危険とも戦いながら管理経営をしていく必要のある、観念と現実に大きな落差のある世界だということは経験者ならお分かりのはずです。
 森林は真に情熱とファイトのあるものでなければ預けるわけにはいかないと思うのです。
 私は林野庁の職員は山を預かる資格のある人種だと信じております。
 そこで考えていただきたいのは、今現場の備えは手薄になっております。国有林の基本単的な管理を担う森林官も1600人の人材を確保することが出来にくくなっているという話も聞こえてきます。
 現在全国261の営林署に技術センターなどを加えた300程度の現場拠点についての人材配置状況を見ますと私の目算ですが、1種、2種採用の技術職員は、平成8年12月現在で他省庁出向等も含め林野庁採用(行政、国有林部門)総数882名のうち195名の配置です。また林野庁付置研修所の専攻科卒業者473名のうち営林署等の勤務者は132名という状況です。このほかの森林・林業の技術エキスパートと目される人たちを加えましても技術専門職員の現場配置数は非常に少ないといえましょう。このことには私も責任を感じますが、減少したとはいえ平成8年時点では1万7千人の職員がいるわけです。
 その現場重点配置と人材育成すなわち質的向上に意を用いなければ国民の負託は受けられないものと思われます。
 さらに一方、都市部の住民の山仕事などに対するボランティア希望者も増えていますがこのような人達を快く迎え入れてください。
 最近ある営林局では営林署のOBが集まって森林ボランティアのインストラクターをかって出ているということです。このような現象は専門的能力を有する人たちによる非営利活動といえますが、今後一層の増加を図るべき分野といえましょう。
 また、まだ4つの局、支局にすぎませんがインターネットを利用して情報発信と交流を行っています。
 仕事に対する積極的な取り組みと不透明な集団といわれないように情報を発信されるようにお願いをする次第です。

 むすび

 最後にひとりの林野庁OBとして自分自身が何をなすべきかということにふれておきます。
 先ほど、都市住民とOBボランティアのことにふれましたが、私自身はこの3月から、夜の時間とインターネットを利用しましてこのようなボランティアの方々や非営利活動の方々のお手伝いをすることにしました。
 行動ボランティアなどの方々がいろいろ連携をとれるように情報交流を図ることが必要であると考えたからであります。
 他方、森林問題や国有林問題で必要なことは情報不足あるいはPR不足ということでありますので志をともにしていただける情報ボランティアを募って参ります。
 さらに国有林問題を考えるときに避けて通れないことは労使関係であります。
 かつての一時期のような状況では国有林の思い切った改革は出来ないということであります。
 最近は国有林の労使関係も変わってきたといわれておりますが、労使ともにお考えいただきたいのは、世の中森林問題には追い風が吹いているという人はいます。
 しかしこの言葉に甘えてはいけません。すくなくとも国有林に追い風が吹いているわけではないと思うべきであります。
 私はこの際、労使間でもOBはOB同志、現役は現役同志で国民の皆様に国有林の再生にご支援をいただけるよう各種ボランティア活動など社会的に評価される行動をしていくことが大切であると考えます。
 そのような意味で林野庁勤務時代はお互いにシビアな意見も戦わせていただきました当時の全林野委員長の阿部保吉さん、同じく日林労委員長の川本俊彦さんとご一緒に国民の皆様に国有林の再生を訴えることが出来れば幸いと思っております。
  


その後の状況についてのご報告


1.早速、阿部保吉さんからお手紙をいただきました。ドイツの森の視察記が同封されていましたが、そこにはドイツの森の話と同時に日本の国有林再生の方向についても語られていました。
  また、川本さんに連絡をとってくださるとのことです。宜しくお願いします。

2.林野庁の情報発信について書きましたが、4月22日から、林政審議会の審議経過等が、林野庁から農林水産省のホームページを通じて発信されています。ここへのアクセスは本国有林再生フォーラムのホームページから行えるようにしてありますのでどうぞお使いください。

3.郵政省のホームページにアクセスしましたところ、4月17日付で電気通信審議会通信政策部会の中間報告として「情報通信21世紀ビジョン」が発信されるとともに、中間報告に対する国民の意見を求めています。
なお、大手パソコン通信(ニフティなど)を通じ、発言者も明示した審議会議事録が公開されています。
このほか郵政審議会の郵便局のビジョンなど興味のもてる情報も発信されています。
林野庁の皆様のご健闘を祈ります。

4.営林局や営林署から、次々と情報が寄せられていますので、逐次情報ボランティアの活動欄に掲載して参りますのでご覧になってください。

5. 函館市在住の川本さんからお便りをいただきました。週間農林をお読みになられたこと及びNHKの衛星放送で行われた国有林についてのBS討論の感想その他、国有林の再生に関連する内容でしたが、お元気でお過ごしの様子が分かり嬉しく思いました。


参 考

 

本稿は林政審の中間報告を読んでの意見として原稿を依頼されたものです。

21世紀の国有林へ「未来投資」を
                       (週刊農林、平成9年9月25日号に発表)

 

                                         小澤普照

1、公益的機能の重視

 人間の経済活動や日常生活の改革が行われない限り、今後地球環境の悪化が急速に進行することは確実である。その結果、環境を護るための森林自体が破壊される危険が増大しつつある。
 従って、国有林については、今後森林を健全な状態で保全することに全力を傾注して経営管理を行う必要がある。
 一方、国有林の木材生産量は、戦前の年間1千万立米程度から、昭和12年以降10年間の戦時伐採1億6千万立米、昭和22年から現在までの50年間では、伐採についての社会要請が強かった前半の25年間は、天然林主体に4億5千万立米、後半の25年間は3億1千万立米であるが、これは明治から大正年代にかけて造林された人工林樹木が主力供給源となった。
 今後の木材供給については、昭和30年代以降の造林木が主力となるので、本格的供給時期は10年ないし20年後となろう。
 従って、今後の事業としては治山、保護、育成などの業務が主体となり、保安林などの公益林を主力とした流域一体型の森林管理が行われるべきである。

2.経営主体等

 林政審報告にある国有林を名実ともに「国民の森林」として運営するには、国民に「全面的に公開」することを前提に、流域一体の中で、国土保全、自然環境、地域林業貢献などに加えて今後、地球環境、高齢化社会、教育分野などに関連する役割の発揮が要請されると考えられ、今後我が国の行政の中でもっとも重要な分野となるものであるから、基本的な人件費は行政支出をもって賄うべきである。
 このため森林管理技術が中心になるにしても視野が広く、学識水準の高い専門家によって管理されなければならない。
 従って今後の営林署の数は少数ではあっても少なくとも長たるものは国際的にも地域リーダーとしても十分な実力を持つ人材に相応しいポストとし長期間勤務が可能な体制でなければならない。その他の職員についても広く森林問題の専門家としての人材の供給源となりうるものであることが必要である。
 なお「エージェンシー」論議については、その制度内容が現行の政府現業、特殊法人、民営などとどう異なるのかが不透明であり判断材料がないので先ず構想や内容が明らかにされる必要がある。

3.会計制度及び累積債務問題

 今回の林政審中間報告ではざっと数えただけで23項ほどの、さらに検討すべきとの字句があり、これらの検討は財政構造改革会議や農林水産省、林野庁などに委ねられた。
 このことは国有林問題の解決の困難性を示したものといえるが、一方、国土の20%を占める国有林の今後の方策は我が国の未来にとって重要な事項であるので、この方向付けや運営については、政治の場や行政庁で詰めていくにしても並行的に我が国を代表する有識者に審議会会長を加えたメンバーで構成する賢人会議などにおいて基本論議をし、ご意見をいただくことを提案したい。(注)下線を施した部分の提案に関しては、偶々林野庁において9月以降、ほぼ同趣旨の有識者懇談会が設置されました。
 なお国有林は従来、企業会計制度のもとで運用されてきたが、実態は退職金の積立制度すらないシステムであり、一般会計型の官庁と独立採算型事業体の二面性を持つ組織であったため、木材貿易自由化以降、その欠点が露呈し、現在に至ったと考えられる。
 そこで債務については、将来返済金として換金可能な戦後の造林資源部分を明確にするとともに、既に現在の累積債務の金額を上回る償還及び利払いを実行していることを考えれば、当面は年率5%を超える利率の実質引き下げに全力をあげる必要がある。このため国債の発行(無利子などの場合は損金算入、相続税など税制配慮も検討)、他部門予算間との一時的融通措置、分収造林などへの下流地域や民間資金の導入が必要である。
 さらに環境税などの新規財源の検討も必要である。

4.むすび

 いずれにしても国民の理解を得るには目に見える改革の速やかな実行が必要である。
 藩政時代、明治維新、さらに戦後と永年にわたる様々な怨念の集積ともいえる歴史を背負う国有林の再生を行うため、国有林の名称も直ちに「国民の森林」に変更するとともに、公益や森林へ支出については、即見返りが来るものではないため決断が鈍りがちであるが、21世紀のための「未来投資」として合意をいただくことを心からお願い申しあげるしだいである。


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