今後の森林の新たな利用の方向

      -21世紀型森林文化と新たな社会の創造-

平成11年2月18日

中央森林審議会



1 はじめに

(1)検討の背景
 近年、環境や資源の有限性が認識されるとともに、国民の価値観も、自然とのふれあいや、ゆとりを重視する方向へと変化しており、国民の間では、森林について、国土の保全、水資源のかん養等の企益的機能の発揮に対する要請が一層高まっていることに加え、さらに森林環境教育の重要性が指摘されたり、ボランティア等として広く国民が直接森林づくりに参加するなどの動きが見られるようになってきている。

 このような動きは、森林の果たす重要な役割に期待し、より主体的かつ積極的に森林とかかわりあうことに国民の関心が向いてきているものと考えられる。
 国民意識の潮流は、今後、自然環境との調和を含めた暮らしの質的向上を求め、精神的な充足や生きる意味を見出せる社会を志向するものとなっている。森林は、精神的、物質的両面において豊かな恵みをもたらす存在であるとともに、人類の生存基盤である地球環境を形成しており、21世舵においては、従来以上に、こうした森林の持っ意義に期待されるものと考えられる。

 これらの動向を踏まえつつ、森林と人とのより豊かな関係を構築し、新たな社会の創造に寄与していくため、今後の森林と人との多様なかかわりを展望し、森林の多面的な高度利用を図っていくことが必要である。

 (2)審議の経過

 中央森林審議会は、農林水産大臣からの諮問を受けて、今後の森林の新たな利用の方向を明らかにするため、平成10年9月10日に設置された森林利用部会において、森林と人と
のかかわりについて、論議・検討を重ねてきたところである(参考1「中央森林審議会委員及び専門調査員名簿」)。
 森林利用部会においては、これまでに6回に及ぶ論議・検討を重ねるとともに、参考人からの意見聴取と現地調査を実施したほか、インターネット等を通じて国民からの意見を求めた(参考2)。

 同部会においては、持続的発展が可能な社会を創造していく上で森林が果たすべき多様な役割を踏まえ、森林環境教育をはじめ国民に森林との多様なふれあいの機会を提供し、今後の循環型社会の構築等に資するよう、森林の利用の推進方向に関する検討を行い、この報告書をとりまとめた。

(3)提案の視点
 今後、ゆとりと美しさに満ち、持続的発展が可能な社会を目指していくためには、人間生活の基盤となる森林の多面的な機能を将来にわたり高度に発揮させるとともに、国民が森林とのふれあいを通じ心身ともに森林の恵みを享受しながら、森林の多様な営みや役割について学び、環境との調和や資源の循環利用といった知恵を社会生活の中で生かしていくことが重要である。
 また、多面的役割を有する森林の管理を担うべき林業・山村の活性化を図っていくためには、国民参加による森林づくりを進め、森林・林業・山村への国民的理解を醸成していくことが必要である。
 こうした視点に立って、国民一人一人が生涯を通じ森林との多様で豊かなかかわりあいを持っことにより、新たな文化と生活様式、すなわち21世糸己型森林文化を創造し、新たな社会の構築に寄与していくため、この提案を行うこととした。


2 森林利用の変遷と動向
(1)社会構造の変化と森林とのかかわりの希薄化
 森林に恵まれた国土を有する我が国では、森林を有効に利用しながら保全する知恵や技術が育まれてきた。すなわち、山村においては、木材等を生産する経済活動を行いつつ、森林を管理する生活が営まれてきており、それによって、森林の有する国土の保全、水資源のかん養等の公益的機能が発揮されてきた。
 また、山村では、住民が生活に用いる薪炭用材の伐採、落葉かき、きのこの採取等を通じて、日常的に身近な森林とのかかわりあいが保たれてきた。
 昭和25年当時は、全人口約8,400万人のうち、約5,300万人が郡部に居住し、国民の多くがこのような日常的な森林とのかかわりを持っていたが、昭和30年代の高度経済成長の始まりとともに、都市に人口が集中するようになり、国民の日常的な森林とのかかわりは、薄れてきた。
 また、燃料革命により、化石エネルギーが多用されるようになるにつれ、薪炭用材の伐採のための森林の利用も行われなくなり、山村においても、その生活様式は、殊々に変容してきた。
 さらに、外材との競合や需要構造の変化等から、、木材生産が伸び悩むとともに、右肩上がりで推移していた木材価格も、昭和55年をピークに低迷に転じ、林業をめぐる情勢は悪化の一途をたどってきた。そのことが、山村の過疎化に一層の拍車をかけることになりこ特に、近年は、都市部への流出という社会減に加え、若い世帯の減少、少子化傾向などの理由から、出生者数を死亡者数が上回るという自然減の山村が増加する傾向となっている。
 このため、昭和40年代以降、多くの国民が、森林は遠くから眺める存在という中で育ってきており、森林とのふれあい方や森林の営みそのものを知らないと言えるような状況となつている。

(2)森林の新たな価値と利用
 山村に多くの人口が居住し、森林の利用や整備が活発に行われていた時代には、都市住民は、森林の管理について、特に、意識することも少なく、また、意識する必要性も小さかった。我が国社会経済における都市の存在が大きなものとなる中で、下流域の狭い平地部に稠密な状態で居住している都市住民にとって、国土の保全、水資源のかん養、生活環境の保全、教育・文化・保健などの森林の持つ公益的機能が高度に発揮されることが益々重要となっている。さらに、地球温暖化など地球環境の悪化が一層進行するおそれがあるとともに、資源やエネルギ←の供給が制約されることが表面化する可能性が高まっていることから、地球環境の保全や資源の循環利用を推進するための取組が世界的に強化されつつあり、これらについての森林の新たな価値が注目されるようになっている。
 このため、身近な景観から地球環境に至るまで様々な環境を保全・形成する機能を含む多面的機能を有する資源として、森林の適切な管理を図っていくことが一層重要となっている。
 しかしながら、山村においては、森林管理の担い手不足が深刻化し、森林の管理水準が低下していることなどから、こうした森林の多様な機能が十分発揮されなくなることが憂慮される状況となっている。
 このため、今後、新たな役割を担っていくべき森林を美しく健全な状態で21世紀に引き継いでいくため、山村住民のみならず、都市住民においても、その参加と連携の下に、多様な機能を有する資落として、その保全と利用のあり方を考えていくことが従来にも増して必要となっている。

3 新たな森林利用の方向

(1)森林に期待される役割
 森林は国土の7割を占めており、我が国の森林率は世界有数の高い水準となっているが、国民一人当たりの森林面積は0.20ヘクタールと、世界平均の一人当たり0.74ヘクタ
 ールと比較して貴重な資瀬となっており(平成6年)、その利用と保全を適切に行っていくことが重要である。今後、森林は、環境と調和し、持続的発展が可能な社会を目指していく上での基盤となる役割として、次のとおり、その多面的な機能を高度に発揮していくことが期待される。

 ア 木材生産
 木材は、国民生活に不可欠な基礎的資源であるが、製造・加工に必要なエネルギ}消費が少なく、長期間にわたって利用することにより、森林が吸収した二酸化炭素を貯蔵し、地球温暖化の防止に寄与している。また、木材は、優れた湿度調節機能などを持ち、人の健康面に良い影響を与え、軽くて丈夫であるなど優れた性質を備えている。
 外材との競合等から、木材自給率は、2割程度の低水準で推移しているが、石油製品等への依存に片寄らず、再生産可能な資漁として、成熟してきている森林資瀬の有効活用を推進していく必要がある。   

 イ 国土の保全・水資源のかん養

 我が国は、地形が急峻で河川が急勾配であることに加え、地質が複雑かつ脆弱であること等から、雨水は一気に海まで達し、土砂災害や洪水が発生しやすい国土条件にある。国民の資産の集積が進む中で、一旦、こうした災害が発生すれば、被害は極めて甚大となる。

 また、国民の生活水準の向上等に伴って、水需要は、増大してきている。
 森林は、水の循環を良好な形に維持し、土砂の崩壊や流出を防止することによって、山村地域のみならず、広く下流域の都市住民の生命や資産を守るとともに、都市の渇水問題の解消に重要な機能を担っており、安全で安心できる暮らしに不可欠な役割を果たしていくことが期待される。

ウ 生活環境の保全
 環境や生活の質に対する国民の関心の高まりに伴い、快適な生活環境を求める国民の要請は、一層高度化している。
 このため、景観の保全、騒音の緩和、大気の浄化など、快適な生活環境を保全・形成する森林の働きは、益々重要である。

エ 教育・文化・保健
 国民の価値観が物の豊かさより心の豊かさを求める方向へと変化するにつれ、森林との日常的なふれあいの機会が少なくなった都市住民を中心に、健康づくりや精神の癒しの湯、野外活動の湯等として、森林とふれあいたいとする要請が高まってきており、また、山村の伝統文化等を活用した都市・山村交流の場としても期待されている。さらに、次代を担う子ども達は、体験を通じて学習する機会が減少しており、森林は、多様な活動を通じて子ども達の「生きる力」を育む場として期待されている。

オ 生物多様性の保全
 森林には、それぞれの環境に応じ、多様な植物、動物、菌類、微生物などが生息・生育している。こうした生物多様性(生態系、種、遺伝子のレベルで、生物が多様な変異性を持つ状態)は、人類の生存基盤である自然生態系を健全に維持するとともに、生物資源の持続的な利用を因っていくための基礎となるものであり、森林の適切な管理を通じ、それを保全していく必要がある。

カ 地球環境の保全
 森林は、地球温暖化の原因となる温室効果を持つ二酸化炭素を吸収し、炭素として貯蔵することにより、地球環境の保全に大きな役割を果たすことが期待される。
 また、森林は、その生態的な働きにより、水や大気の循環などを維持しているが、世界人口の増加による森林の収奪的利用等に伴い、森林の減少・劣化が進んでおり、地球的規模での生物多様性の減少、気候変動、砂漠化等につながっている。
 このため、森林生態系の健全性の維持を基本としつつ、森林の管理を推進するとともに、我が国は、豊かな森林を有する先進国として、持続可能な森林経営の確立に向けて、内外の取組を進めていく必要がある。                         

(2)今後の社会における森林と人との新たなかかわり
(森林の多様な機能の持続的発揮)
 今後、以上のような森林の多面的な機能を将来にわたって持続的、かつ、高度に発揮させていくためには、それぞれの森林にどのような役割を発揮させるべきかについて、地域住民や国民のコンセンサスをつくり上げていくことが重要であるとともに、それを踏まえた適切な森林管理が継続的に行われることが必要である。
 そのためには、厳しい状況下に置かれている林業・木材産業の現状をみれば、その振興施策の計画的かつ着実な実施を図り、森林管理の基礎となる林業生産活動を維持・確保していくことが何よりも重要である。また、森林・林業・山村に対する実態的な理解に基づく国民の多様なニーズを的確に把握し、調整するよう努めていく必要がある。
(循環型社会と森林)
 近年、地球温暖化問題をはじめとする環境問題やエネルギー等の資源の有限性が世界的に認識される中で、人類の永続的な生存と発展を図っていくためには、環境と調和した循環型社会の構築を図っていくことが、基本的な課題となっている。
 このためには、国民が、環境に与える負荷を最小限に抑え、資瀬を循環利用する生活態度を学び、身につけ、今後の新たな社会や個人の生き方を創造していく必要がある。
 森林では、太陽エネルギーを受けて土壌中の有機物を栄養源に植物が育ち、多様な食物連鎖を経ながら動物の命を育み、やがてはこれらが括れたり、死んで、次の命を育む有機物がつくられるという循環が行われており、こうした循環によって、人類の生存に不可欠な森林生態系が維持されている。
 また、森林に降った雨については、森林の土壌により浄化されつつ徐々に流れ出し、田畑を潤したり、水道水として使われるなど様々な用途に利用されながら、川となって海に入り、そして再び、蒸発して雨となるという水の循環が行われている。
 さらに、樹木については、木材として利用された後、腐朽し又は燃焼して、大気中に二酸化炭素を放出し、これが再び、樹木に吸収され、光合成により樹体を形成するという循環が行われている。
 森林は、こうした循環という営みを通じて、生態系や地球環境を形成し、人間生活の基盤となっており、森林とふれあい、森林の中での多様な体験を通して、「自然c英智」を学び、社会生活のあり方を実感として学んでいくことが必要である。
(森林との新たなかかわり)
 しかしながら、国民の多くは、日常的に身近な存在として森林とのかかわりを持たなくなつており、多様な役割や営みを有する森林について、一面的で観念的な理解しかされないことになりがちなことが懸念される。

 このため、国民一人一人が、森林の多様な役割や営みについて実感として学び、今後の新たな社会や個人の生き方を創造していくとともに、森林の恵みを将来にわたって享受していけるよう、国民が生涯を通じて森林とかかわりあえる条件づくりを進めることが重要であり、森林との多様なふれあいの湯を提供していく必要がある。
 森林においては、従来から、ハイキング、登山やキャンプなど保健休養等のための利用が行われてきているが、これらに加え、森林環境教育、森林づくりへの国民の直接参加など、より一層積極的に森林とかかわりあうという視点から、森林の利用を推進していく必要がある。

4 森林環境教育の推進

 (1)森林環境教育の意義
 森林では、樹木をはじめ多様な動植物が相互のかかわりの中で生命活動を営んでおり、これらを取り巻く水・空気・土等の多様な要素とともに森林生態系が形成されている。また、森林では、水・空気・土等の循環の中で、こうした生命の営みが繰り返され、木材をはじめ再生産可能な産物を供給しており、森林は、適切な保全を図りながら利用する限り、人に多様な恵みを持続的に与えるものである。
 以上のような森林の多様性、相互の関連性、総合性、さらには人間生活とのかかわりをみると、森林は、他に代え難い最良の野外教育や環境教育の湯である。
 また、特に、子ども達が体験を通じて学ぶ機会が限られている今日、自分で課題を見つけ 自ら学び自ら考える力や、心身のたくましさが、次代を担うべき子ども達から失われつつあることが懸念されている。
 森林の中では、様々な状況において、自ら判断し、行動することにより、新しい発見や驚き・感動を味わうことができる。「森を学校に」して、自らの行動で体験として、学んでいくことにより、子ども達の「生きる力」が育まれていくことが期待される。                        
 さらに、体験に裏打ちされることにより、知識の広がりと深まりが生まれ、その経験が日常の生活態度に実感を伴って組み込まれていくことが可能となる。
 しかしながら、かつてのように、日常の中で、子ども達が親や年長者等から森林での遊び方や森林の生き物、森林からの産物の利用等について教えられることがなくなった今日においては、まず、森林とのかかわり方についてのオリエンテーションをはじめ、森林についての基礎的な知識を学ぶことが重要であり、その上で、森林や環境について、より深く学び、理解していけるよう、活動を行う者のレベル等に応じた多様な森林環境教育の機会を子ども達をはじめ多くの国民に提供していく必要がある。    

E)推進方向

ア 森林の整備と活用

(国有林)
 国有林においては、野外活動に適した箇所が「レクリエーションの森」として1,276
箇所(平成7年3月末現在)指定されており、森林環境教育の場としての活用が期待される。
 このため、今後とも森林環境教育に対する国民的な要請に幅広く対応できるよう、施業体験の森や、自然観察路、案内板等の整備を実施していくことが必要である。また、国有林の多くは、民有林に比べ、奥地に広がり、豊かな自然環境を有しており、より多様な森林環境教育に利用していくことが期待される。
(民有林等)
 他方、民有林においては、森林体験が可能なふれあいのための森林として、県民の森等2,940箇所(平成7年3月末現在)が用意されているが、今後、入門的な森林環境教育のみならず、利用者のレベルや目的に応じた森林環境教育の場として活用していくことが期待されており、こうした多様な利用に対応した整備がされているかどうか点検していく必要がある。
 また、これらの森林を管理する地方自治体の林務担当者のみならず、林業関係者、教育関係者などが相互に連携して、積極的に「森林体験教室」などを企画し、教育的利用を進めていくことも必要である。
 また、地域によっては、都道府県等の企画により個人の森林を森林環境教育のフイールドとして活用する制度や林業研究グループによる自主的な林業教育等も行われているが、安全面等の課題があることや森林所有者にとってのメリットが分かりにくいことから、フィールドの提供も限られたものとなっている。 
 このため、森林所有者に実施内容を説明する等の対応をするとともに、保健保安林等について、森林の教育的利用が推進されるよう、運用面で配慮する等によりフィールドの確保を図るための方策について検討する必要がある。
 また、児童・生徒の教育の場である学校林については、全国で約25,460ヘクタール
(平成8年度)設定されているが、森林が成長し保育等の作業体験の場として活用しにくくなったことなどから減少し、十分活用されていない状況にある。今後、森林環境教育の充実という今日的課題に対応していくため、体験学習の場として学校林を活用するためのプログラムの開発・提供、学校林活動の指導者の研修など、子ども達が森林とのかかわり方を学ぶ湯として、学杖林の新たな活用方策について検討されることが望まれる。    
イ 指導者の養成と活用
 森林や環境について、より効果的に、かつ、奥深く学んでいくためには、森林内において、専門的指導者の下で十分な知識と技術に裏打ちされる形で、多様な活動を体験することにより、森林とのかかわり方の基礎を習得することが重要である。
 この湯合、指導者は、知識を付与することや多数のメニューを消化することを優先するのではなく、参加者のレベルに合わせ、参加者に何を得てもらいたいかという「ねらいの絞り込み」をしつつ、参加者自らが能動的に楽しみながら、森林の持っ多様な価値に気付くような体験の機会を提供することが重要である。そのためには、指導者は、森林に関する専門的知識や技術のほか、参加者に応じ、教育プログラムを組立て、場を設定し、そして、それを具体化するという企画者としての能力が求められる。
 このため、実際のフィールドとなる森林や施設での研修等により、実践的な指導者の養成を図っていくことが必要である。また、県民の森等において施設の運営や指導に当たる人材が自らプログラムの開発や様々な企画を行えるようにするため、国としても森林技術総合研修所等を活用して研修の充実を図るとともに、地域の試験研究機関や民間の環境教育事業者等とも連携し、既に指導者として活動している者も対象とした研修の実施体制を整備することが重要である。さらに、フィールドでの指導の実践経験を指導者の養成のための研修等にフイードバックするための仕組みづくりを図っていくことも必要である。
 また、青少年を対象とした森林環境教育を推進するため、こうした研修等の機会を学校教職員等にも提供していくことが望まれる。
 さらに、生物クラブなど森林について学ぶことに興味を有している大学のサークル活動等との連携などにより、専門的知識を有する者から楽しみに重点を置いた活動をサポートする者まで、多様な指導者等の育成と活用を図っていくことも必要である。

ウ プログラムの充実

 森林環境教育を推進していくためには、ソフト面の充実を図っていくことが重要である。

 森林体験活動については、従来、利用者が定められたプログラムを消化するだけになってしまう場合や、一、二泊程度の入門的な活動にとどまる場合が少なくない。
 初心者や子ども達をはじめ利用者が、森林に親しみや関心を持ち、森林の多様な営みや役割等に気づいて、より深く理解していけるよう、利用者のレベルや目的に応じ、森林とのかかわり方についての基礎的な知識から地球温暖化防止など地球的規模の森林の役割に至るまで、体験活動を通じて総合的かつ段階的に学んでいけるプログラムを提供していくことが重要である。また、活動の湯となる森林や施設の特色を十分活かしたプログラムであることが重要である。この湯合、クラフトやツリーハウスづくりなど、子ども達が楽しみながらものづくり等に自主的に取り組めるようにするとともに、地域の歴史、伝統文化、生活様式等に触れる機会を組み合わせることにより、その地域における森林と人とのかかわりについても学習できるようなプログラムが望まれる。

 このため、実際に教育的利用に供される森林においてプログラムの開発ができるよう、森林総合利用施設の開設者をはじめ地域の関係機関の連携等によりプログラムの開発体制を整備する必要がある。また、公的に開発されたプログラムについては、その蓄積と情報提供を図り、各地の取組を考慮して、より多様なプログラムが開発されるようにしていくことが必要である。

エ 教育関係機関との連携
 森林環境教育の推進を図っていくためには、教育関係機関との連携を図っていくことが重

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要であり、今後、新教育課程における「総合的な学習の時間」の創設や平成14年度からの完全学絞週5日制の実施等に伴い、森林における子ども達の体験活動の機会を増大させていくことが期待される。

 このため、学校教育においても、森林や木に関する基礎的な学習や入門的な体験の機会が提供されることが望まれるところである。
 また、森林環境教育に取り組む民間教育事業者等とも連揖し、多様で幅広い教育機会を提供していく必要がある。
 この場合、教育関係者の自発的な活動のみに期待するのではなく、森林・林業関係者等が、森林環境教育の重要性を認識し、教育関係機関に対しパンフレットや副読本等の資料や具体的な実賎事例等の情報を提供するとともに、教育関係者の相談に応じる等の積極的な対応が必要である。そのため、協議会の設置など、地域において森林・林業関係者と教育関係者との連携を深めるための具体的方策について、検討すべきである。

オ 子ども達の自主的な活動の推進

 次代を担う子ども達の森林環境教育を推進するとともに、子ども達が学校外での体験活動を通じて、「生きる力」を身につけていくことを支援するため、森林と出会い、森林に興味を持ちながら様々な体験活動を行う機会を広く子ども達に提供していくことが重要である。
 このため、文部省と連携して、森林インストラクター等の指導の下に、子ども達が樹木・草本等の観察会や植林・下刈り作業の体験など森林環境教育の機会を広く提供する取組を積極的に進めることが必要である。その実施に当たっては、多くの子ども達や保譲者の参加を促進するため、例えばPTAの主催する事業として行うことも一つの方法である。また、生活に身近な窓口等での広報に努める必要があり、文部省が全国展開を進めている、子ども達の体験学習等に関する情報を収集し提供する「子どもセンター」などのネットワークを活用する等により、森林体験の機会に関する情報提供を幅広く行っていくことが期待される。
 また、森林での学習活動等を通じ、青少年を緑を愛する人間性豊かな社会人に育てることを目的として、全国で、約3,800団体、団員数約27万人(平成10年1月現在)の「緑の少年団」が組織されており、森林学習、野鳥観察などの学習活動のほか、植林・下刈り作業、登山道等の清椅や募金などの奉仕活動等を行っている。
 「緑の少年団」は、森林環境教育を推進する上で、その活動を通じ、重要な役割を果たしていくことが期待されており、自主的な活動の一層の活性化を支援していく必要がある。「緑の少年団」は、地方を中心に結成されている状況にあり、森林や自然とかかわる機会り少ない都市の子ども達の活動の活性化が重要である。このため、教育関係者等との連携の下に、森林環境教育の見地から、都市の子ども達も含めた活動の方向等について、合意形成を図ることが望まれる。

身近な森林における多様な活動の展開
(1)活動の意義
近年、自然とのふれあいや余暇の充実を重視する国民の意識の高まりを背景に、里山林などの身近な森林を中心に、多様な余暇活動が展開されるようになっている。例えば、落ち葉を集めて行うイモ焼き、刈り取ったツルを活用したツル細工、杉の葉染め、間伐材の加工や毒づくり、さらには、この炭を利用したピザづくりなど、森林からの産物を利用したものづくりを行いながら、親子連れや仲間で森林とのふれあいを楽しむ活動が展開されている。
 こうした活動は、森林とのふれあいを楽しむことを中心に、森林とのかかわりを持っものごあることから、森林に馴染みの少ない都市住民にも、始めやすく、かつ、維続しやすいものとなっている。また、生活環境の保全のための身近な森林の保全活動と一体として行われる場合も少なくなく、このような活動を通じて、地域住民等が、生活環境を形成する身近な短林を保全することへの関心を高めるようになることが期待される。
 さらに、身近な森林において、生活環境の保全のための活動を行う中で、森林の持つ価値を見出し、森林とのかかわりを持った生活様式を実践する国民が育っていくことが期待されるとともに、森林からの産物によるものづくりやその活用を行うことにより、楽しみながら資源の循環利用について学ぶ場となることも期待される。
 最近では、里山林や都市近郊林の保全、景観の保全、海岸の防風林の保全などの地域環境つ保全を目的としたもののほか、生物の生育・生息環境の保全、豊かな海づくりのための植木活動など、多様な活動が行われるようになってきており、今後、こうした活動が、地域の継続的な活動として根付くとともに、より多くの参加者を得て、広がりを持った活動として展開されていくことが望まれる。


2)堆進方向                                 
ア 森林づくりとの関連性についての理解の促進

 身近な森林の保全活動を活性化し、広げていくためには、森林とのふれあいを楽しむことが中心の活動であっても、活動の意義や目的を正しく知り、やりがいを見出していけることが重要であり、森林において行う作業がその森林にとってどのような影響や意味を持つのかについての理解が必要である。

 実際の保全活動においては、森林において行う作業の意味や方法について、参加者の十分な理解がないため、積極的な保全活動に取り組めない湯合がある。また、参加者が、十分な理解をしないまま、作業を実行していることもあるため、時として、適切な作業方法でない場合もある。

 このため、地域において、分かりやすい技術指針を整備するとともに、保全活動に参加する住民が保全活動の計画づくりの段階から参加できるようにすることが重要である。また、活動成果を参加者に知らせ、フイ←ドバックしていくことも必要である。そのことにより、自らの活動が森林の保全にどのようにかかわっているかを明らかにし、単なる楽しみだけでなく、行為の意味を理解し、達成感を味わいながら、より深く森林について考える契機となっていくことが重要である。

イ フィールドの確保と専門家の養成

 このような活動について、森林所有者の理解を得ていくためには、森林所有者と地域住民との間で、信頼関係が醸成される必要がある。
 このためには、活動の対象となる森林で行おうとする手入れの方法や活動内容と、その結果として森林がどのように変化していくかを示すとともに、地域住民等の団体が森林所有者との間で森林の保全に関する協定の締結等を行い、これに即して活動していくことも必要である。この湯合、必要に応じて、行政があっせん・仲介等の支援を行うことも考慮する必要がある。

 また、専門家が技術面でサポートしたり、情報提供をすることも必要であるが、現在、萌芽更新等の広葉樹の取扱いについて熟知した専門家が少ないため、多様な森林整備を進める上からも、都道府県の林務関係技術職員の研修の強化などを含め、これらの技術に関する専門家を計画的に育成していく必要がある。このような専門家としては、林業技術を重視するよりも、広葉樹の取扱いや竹林の管理手法のほか、炭焼きや森林からのさまざまな産物を活用したものづくりなど、市民がマスターし得る技術を教えることができる者を養成していくことが望まれる。
 地域住民による自主的な森林の保全活動は、森林の持つ公益的機能の高度発揮に資することから、保安林において行われる保全活動についての運用面での配慮等により、保全活動を助長する等の支援方策を検討する必要がある。


6森林づくりへの国民の直接的な参加
(1)活動の意義
 森林づくりに直接参加する活動は、手をかけた木々が育ち、また、そのことにかかわりを持つことによって、健康的な喜びや生きがいをもたらすとともに、公益的機能を有する森林の整備に参加する活動として、社会参加や社会貢献を行うという意義を持っている。
 森林づくりに直接参加する取組は、森林の手入れが行われつつ、森林整備やこれに携わる山村の仕事に対する参加者の理解を深めるばかりでなく、森林・林業・山村に対する国民的理解を広げていく上での先導的な役割が期待される。
 また、都市住民等が森林づくりに直接参加することによって、林業労働力が補完されるようなことは考えにくいが、自主的に森林づくりに参加したいという都市住民等の意欲に、山村側も勇気づけられるとともに、山村と都市との交流が生まれることも期待される。
 こうした国民参加による森林づくりの動きは、昭和50年代後半から顕在化してきており、平成8年1月の総理府の世論調査では、森林づくりへの参加の意向を有する者が約半数に上るなど、森林づくりに対する国民の関心は、高まってきている。森林づくりへの直接参加は、ボランティア団体の活動に参加する形で行われており、こうした活動を行う団体は、最近、設立されたものが多いものの、全国で約280団体(平成9年8月現在での調査)に上っている。


(2)推進方向

ア 活動のための森林の提供
 森林づくりボランティア活動においては、フィールドとなる森林を確保していくことが課題となっている。森林づくりボランティア活動は、人工林をフィールドとして行われる場合が多いが、ボランティア活動の成熟度が浅い湯合も少なくないため、ボランティア活動への対応に伴って森林所有者に様々な負担があることや受入れについてのコンセンサスが十分できていないことなどがボトルネックとなっている。                     
 このため、貌状では、市町村有林を中心に国有林及び公有林がフィールドとなる場合が多、。国有林においては、分収造林制度や分収育林制度を通じ、国民参加による森林づくりを臣進してきており、平成4年度からは、「法人等の森林」制度を設け、法人等の社会貢献活動こ対応するとともに、森林づくりへの直接参加を一層推進するため、平成11年度から「森林づくりに参加したい」、「直接森林とふれあいたい」などの様々な声に応えるため、新たにボランティア団体等の活動の場として、「ふれあいの森」の導入を図っていくこととされている。公有林においても、その企共的な役割にかんがみ、利用の一層の推進が図られることが望まれる。
また、ボランティア活動の推進に当たっては、特に私有林において、ボランティアと森林所有者双方の信頼関係の下に、安心してフィールドの提供が行われるよう、ボランティア側の技術の向上等を図るとともに、森林所有者の役割や、不幸にして事故や火災が発生した場合の双方の責任範囲を明確化するための条件整備を図っていく必要がある。さらに、ボランティア活動やその受入れについてのノウハウの蓄積とその普及を図っていくことも必要である。

イ 森林づくりへの参加の促進
森林づくりへの直接参加を促進していくためには、山村や林業関係者による企画・情報発言のみならず、社会教育施設や多様なネットワ←ク等を活用して、幅広い参加者を得ていくことが重要である。

 森林づくりへの直接参加を促進するため、受入先、参加希望者等の情報の収集とネットワーク化を支援する施策も実施されているが、きつい労働には参加したくない人やイベントならば参加できる人等も参加できるよう、入り口を広くするとともに、さらに次のステップへ生みたい人を育てていく必要がある。このため、活動を楽しみながら入門的な体験ができるよう森林総合利用施設等を活用するとともに、こうした目的にあった企画やプログラムの開削こも取り組んでいく必要がある。その際、事前に、体験する作業内容等が分かるように配意することも必要である。

 森林づくりに直接参加した者の活動を維続的なものにしていくためには、受入側がプロとしての林業労働者と同列に扱うことなく、ボランティアの自発性を十分理解し、また、参加者が不当な義務を課せられたと感じたりすることがないような形で、習熟度等に応じ、段階を踏みながら活動していけることが必要である。

ウ 森林づくりに関する技術指導
 森林づくりボランティア活動の育成のためには、その自主性を尊重しつつ、森林づくりに関する技術の向上を支援していくことが重要である。承林づくりボランティアの歴史が浅いこともあり、その活動においては、総じて、森林の取扱いについての知見の蓄積が少なく、今後、専門家による技術指導や安全指導の充実を図るとともに、技術を有する指導者の養成を支援していくことが重要である。
 このため、都道府県等の研修施設や森林総合利用施設などを活用して、作業技術の指導や安全指導等を受けられるような体制整備に配慮していく必要がある。特に、初心者が入門的な講習等を受けられるよう、公的な施設における教育機会の提供を図っていくことも必要である。
 また、良質な技術指導を受けるためには、専門的知識と技術を有する指導者の活用を図っていくことも重要である。
エ 団体活動への支援等
 森林づくりを行うボランティア団体の活動を支援していくためには、活動団体を把握するとともに、その活動状況に関する情報の受発信やキーバーソンのネットワーク化等を図っていくことが重要である。この場合、こうした対応を円滑に行っていくためには、関係機関の連携の下に、行政が一定の役割を担っていくことが望まれる。なお、ボランティア団体への支援については、個別のボランティア団体に対するものよりも自主的な活動を専重しながら森林づくりボランティア活動全体の支援につながるようにしていくことが必要である。
 また、社会貢献のための活動の一環として、森林づくりに直接参加する企業が増加してきており、ボランティア団体がこれらとの連携を進めていくことも重要である。
 さらに、「緑の募金」により、森林整備、緑化の推進等に対する支援が行われているほか、「緑と水の森林基金」の運用益により、森林整備に関する普及啓発、調査研究などの民間活勤への支援が行われているが、ボランティア活動への支援に当たっては、多様な森林づくりの活動に応じ、一層きめ細かな対応が期待される。

(3)森林整備に囲する計画への国民参加

 国民参加を通じた森林整備を推進していくためには、森林づくりへの国民の直接参加が図られるようにするとともに、各種の森林整備に関する公的な計画の策定に当たって、国民の要請が反映されるようにすることが重要である。
 このため、平成10年の森林法の改正や国有林野事業の改革により、まず、地域森林計画や国有林の管理経営基本計画等の策定手続について、計画の案の段階から公告・縦覧を行い、意見を反映できるよう改善が図られたところであるが、今後、その的確な運用等により、森林整備に国民の要請がより積極的に反映されるよう努めていく必要がある。

7 健康づくり等のための利用

(l)健康づくり等における森林利用の必要性

近年、健康に対する関心の高まりやゆとりを重視する方向への国民の価値観の変化に伴い、森林の中で「ゆったりしたい」あるいは「滞在したい」という国民のニーズが高まっている。
 森林は、従来から森林浴などの森林内活動を通じて、保養の場として利用されてきているが、最近、特に、都市化の進展やストレス社会の進行に伴い、森林や樹木などが持つヒーリング効果を積極的な心身のリラクゼーションに活用することへの関心が高まっている。また、最近、若者のコレステロール値が高いなど生活習慣病の予備群の存在が懸念されており、生活習慣病の予防や体力向上を目指して森林浴等に励む人々も、増加する傾向にある。
 森林浴については、森林の内外で活動を行った湯合を比較し、血圧を下げる効果やストレスホルモンの分泌を抑制する効果があることが医学的に明らかにされてきており、森林は、健康づくりのための野外活動やリラクゼーション等により、心身ともに、人を再生させる場にして、利用していくことが求められている。
 一方、人口に占める高齢者(65歳以上)の構成比(高齢化率)は、現在15.7%(平
成9年)であるが、2015年には、25%になり、急速に高齢化が進むことが見込まれている。時間をかけながら高齢化が進んだ諸外国と比べ、我が国では、高齢化に対応した社会資本の整備が十分には行われていない。
 我が国社会経済の成熟化に伴い、今後、人生に生きがいを持ち、いかに健康で暮らすかと言う問題に社会全体が対応していくことが重要となっており、子ども達から高齢者まで、また、様々な身体機能を持つ者の利用に配慮したきめ細かな社会資本の充実が急務となっている。

 このような状況の中で、森林は、子ども達から高齢者までのすべて世代の健康づくりの場等として利用するとともに、とりわけ高齢化の急速な進展に伴い、高齢者等の生きがいの場として利用していくことが期待されている。

(2)推進方向

ア 健康づくり等の場としての整備
 森林を健康づくり等の場として利用していくため、年齢や障害の有無にかかわらず、すべての人の利用に対応した「ユニバ}サルデザイン」という考え方を踏まえ、森林や施設の整備を図っていく必要がある。
 すなわち、あらゆる世代の者や様々な身体機能の者が健康づくり等に利用できる方法を備えた森林を整備していくことが重要である。
 民有林においては、森林溶などの野外活動を通じ、健康の維持増進を図る地域づくりを推進するとともに、国有林においては、健康保養の場等としての自然体養林の整備等が行われてきている。今後、さらに、やすらぎの場ともいえる森林の中で、医学的に裏打ちされたプログラムにより、心身を癒し、たくましさと豊かな感性を回復・増進させることを推進すべきであるが、様々な身体機能の者や高齢者等の利用に対応した森林や施設の整備は、緒についた段階である。

 諸外国では、様々な身体機能の者の利用のための森林や施設の整備等に関するガイドラインが整備されているが、我が国においても、様々な身体機能の者の利用に十分配慮をしていく必要があり、例えば、車椅子での移動ができるよう、なだらかな勾配で幅員の広い林内歩道を作設するとともに、木道に車椅子の後退を防ぐための刻みを入れるなどの工夫をしていく必要がある。しかし、森林内すべてにおいて、そのような整備を行うことが求められるのではなく、森林の保全と整備のバランスを考えながら、ビユーポイントの設置等を含め、より多くの者が効果的にアクセスできるような、その場に相応しい工夫をすることが重要である。
 比較的早い時期に整備された森林や施設においては、案内板さえ十分整備されておらず、こうした利用に対応していない場合が多い。また、トイレなどの整備が低いなど、最近のニーズにも対応していない状況にある。
                   
 このため、既存の施設についても、その整備状況を点検する必要がある。

イ 情報の提供等
 様々な身体機能の者の森林の利用を可能にするためには、ハード面の整備と併せ、どのような身体機能の者がどの程度の利用ができるのかを事前に知り得るよう、こうした森林について、関係機関の広報等も活用し、広く情報提供をすることが重要である。さらに、様々な身体機能の者の森林内での活動を支援するため、身体機能に応じ、どのような方法でどこまでアクセスすることが可能かについての情報を入り口や遊歩道などの案内板等により、利用者が知り得るようにすることが必要である。
 また、森林を多様な世代の者の健康づくり等に利用していくためには、森林の楽しみ方についての案内板等によるガイドや利用プログラムの設定など、森林や施設の整備と一体となつたソフトの充実が重要であるほか、生涯学習機関等との連携等も必要である。
 さらに、こうしたソフトを備えた森林に関する情報について、インターネット等による情報提供など市民が入手しやすい方法での情報提供を一層推進する必要がある。

ウ 利用を支援する仕組み
 様々な身体機能の者の森林の利用については、諸外国では、それらの者が野外レクリエーション活動を行うためのプログラムや器具類の開発等が行われているほか、これらの者の活動を支援するボランティアの訓練も行われている。
 今後、我が国においても、様々な身体機能の者が森林を利用できるよう、森林や施設の整備と併せ、これらに合致した利用プログラムの開発と提供を積極的に推進する必要がある。
 また、地域において、様々な身体機能の者による森林の利用を支援するための体制整備やマンパワーの充実が望まれるところである。
 さらに、継続的に森林裕を行った湯合に、人の健康にどのような好ましい影響があるかについては、世界的にみても十分に解明されておらず、研究の推進が今後の課題となっており、森林の持つ健康の維持増進効果に関する分野の研究が推進されるよう、医療関係者による医学的研究を支援するとともに、その成果をより効果のある健康づくりに役立てていくことが期待される。

                            
森林とのふれあいのための条件整備
(1)都市・山村交流の推進
過疎化・高齢化の進展、林業生産活動の低迷等に伴い、国民のニーズに応じた森林の管理を担う山村は、集落機能の維持さえ困難となるなど一層厳しい状況にある。

 このような中で、林業・山村の活性化を図っていくためには、森林とふれあいたいという国民の志向の高まりに対応し、都市との交流の促進を図り、森朴・朴業・山村に対する国民勺理解を醸成していくことが必要であり、山村がこれに積極的に対応していくことが重要である。この場合、立地条件や森林の現況等の特色を生かしつつ、森林とのふれあいに対するニーズに応じて的確に対応していくことが必要であるが、特に、国有林及び公有林においては、自然環境の保全等を十分考慮しながら、森林とふれあう機会の提供にできる限り努めていくことが重要である。

 しかしながら、山村における様々なイベント等においては、受入れに伴うサービスが山村側の負担になりがちであり、都市住民側にも、ゲストとしてイベントに参加しているとの意識があり、山村側は便宜供与をすべきものであるとの考え方が散見される。また、山村側においては、受入れによるメリットが見えにくい場合が多く、都市住民がどのような森林とのふれあいを望んでいるのかが分かりにくいことも多い。

 このような活動が、山村側として積極的に対応するものとなり、都市住民にとっても魅力あるものとなるためには、山村を訪れる都市住民と山村住民との間の相互理解と信頼関係の醸成が重要である。

 このため、例えば、イベントなどの企画の段階から、都市住民の参画を求めていくなど、山村側にとって過大な負担とならない形で、かつ、都市側のニーズを的確に把握しつつ、森林とのふれあいの場を提供していくことが重要である。

 一方、都市住民は、森林を利用するに当たって、山村が、農林業の生産活動や生活が一体として営まれる場であるとの側面を尊重した活動を十分心がける必要があり、森林を利用する者に対する体験活動等に関する指導に際し、こうした面での基礎的な指導が行われることが望まれるところである。

 また、受入側からみて、これらの受入れが、スムーズに行われるようにするためには、特に、森林内における活動に際しての事故など不測の事態に対応した条件整備が重要であり、受入れ側の責任の範囲の明確化や保険又は共済の活用を図るとと、もに、入込み者側は、自らの行動に責任を持つとの自己責任の原則を徹底することが重要である。
                               
 他方、国有林のレクリエーションの森の環境整備に当たっては、「森林環境整備推進協力金」により利用者の自主的な協力を得る制度が導入されつつあるが、民有林を含め、多くの森林や施設では、その利用に際して、森林の維持管理に充てるための協力金や対価の徴収がなされていない。今後、ハード面の質的向上や利用者に提供されるソフト等の充実により、森林の利用についての付加価値を高めるなどの取組を進めるとともに、森林の保全等のためには利用に応じた適正な負担も必要であることについて、理解とコンセンサスを得ていくことが必要である。


(2)山村の活性化への寄与
 森林を利用して都市住民との交流を図る取組は、@山村側が主催する各種のイベント、山村側が主体となって都市の子ども達に山村生活体験活動の機会を提供する取組や山村留学等のほか、A都市側の発意によって森林づくりに直接参加する取組など多岐にわたっている。
 このような取組を、山村の活性化につなげていくためには、森林に対する国民の関心の高まりを的確に捉えて、山村の持つ地域資源の価値を最大限に活かした山村ならではの新たな産業の起業化等の取組を図っていくことが望まれる。この場合、各種の施設の整備等に当たつては、森林が形成する山村景観と調和し、かつ、男女いずれの感性から見ても魅力あるものとしていくことが大切である。

(森林体験産業)
 立地条件など地域の実情に応じ、豊富な森林を活かして、来訪者が森林とのふれあいや地域材を活用したものづくりを楽しんだり、森林を利用した教育等を受ける機会を提供する、いわば森林体験産業の起業化の可能性についての検討が必要である。この場合、廃校や廃屋を含め山村文化施設の活用や山村に馴染んだ既存の森林総合利用施設等を活用するとともに、森林や基盤となる施設の整備とソフトの開発等について、民間活力を活用しつつ公的な整備や支援を行うことが必要である。また、地方自治体等の保健休養施設の活用等を図りながら、最期滞在型の森林の利用を推進していくことも検討すべきである。
 このような取組については、諸外国においても、民間事業者が行うものを含め、自然体験活動の機会の提供を主目的とする事業が行われているところである。例えば、フランスにおいては、子ども達の長期の自然体験活動の拠点となるヴァカンス・余暇センター(CVL)が、フランス全土で2万以上開設されており、年間100万人以上の子ども達が、1週間から3週間程度滞在して、登山、自然探求、スポーツなどの野外活動を行っている。
                              

(グリーン・ツーリズム)                 
 また、農山漁村でゆとりある休暇を過ごすグリ←ン・ツーリズムにおいては、農林漁業の体験や地元との交流、四季の食などを楽しむ旅の中で、森林とふれあう活動が行われ、森林の利用を推進する役割を果たすことが期待される。このため、山村において、森林の案内や林業体験等の指導を行う者の養成、農林家民宿等の滞在施設の条件整備、自然とふれあうことのできる拠点の整備等が相互の連携の下に推進されることが必要である。
(エコ・ツーリズム)
 さらに、近年、自然環境への悪影響を避けることを重要な要素とし、ツアー参加者にガイドが付いて、環境教育が行われながら実施されるエコ・ツーリズムが、地域への経済効果をももたらすものとして、ガラバゴス諸島、ケニア、ネパール等をはじめ世界各地で行われるようになっており、我が国でも、屋久島や西表島などで実践されている。また、こうした取組と併せ、山を歩くトレッキングも行われるようになっている。
 今後、豊かな自然環境に恵まれた奥地等の森林を活用して、こうしたエコ・ツーリズムやトレッキングの推進を図っていくための方策について、研究していくことが望まれる。
(3)指導者等の活動の推進
 森林での様々な活動を指導する者の全国的な資格制度として、「森林インストラクター」制度が実施されているが、その資格を有する者は、ボランティアや副業として活動している場合が多く、依頼に応じいっでも対応するような職業としては確立していない。
 このため、「森林インストラクター」の資格を有する者を地域ごとに組織化し、依頼に対応できる者を紹介する体制を整備する等により、その積極的活用を図っていく必要がある。
また、「森林インストラクター」の積極的活用を図っていくため、森林総合利用施設等の関係施設との提携や教育関係機関等と連携した様々な企画での活用等を推進していく必要がある。
 こうした指導者による良質なサービスの提供を確保していくため、今後とも、資格制度により、ニーズに応じた指導者の知識と技能を確保することが必要であり、そのためには、指導者の一層の活用を図ると同時に、活動を維持することが可能となるような対価の支払が行われるよう条件整備に配慮していく必要がある。
                                              
 現在、23道府県においても、森林における活動の指導者の資格制度が設けられているが、これらは、その沿革から、森林・林業に関する普及啓発を目的としたものが多く、今後、森沐環境教育などを重視した指導者の育成を図っていくことが望まれる。
 さらに、山村と都市との交流を図っていくためには、地域の森林に精通した案内人の役割を果たす者が必要であるが、山村の高齢者や林業関係者は、山村での生活等を通じて、森林中自然とのかかわり方を熟知しており、こうした者を活用するための方策について検討していくことが望まれる。


(4)情報発信とネットワークの形成
 森林の利用を推進するためには、森林の魅力やふれあうことのできる森林に関する情報の人手を容易にすることが重要である。
 森林を利用した各種イベントや利用することができる森林の所在など、都市住民等の受入れのための情報発信の取組については、限られた範囲にしか提供されていないケースも見られ、必ずしも十分とは言えない。より多くの都市住民等が関心を持てるよう、インターネット等により誰でもいっでもアクセスできるような手法を利用することはもちろん、柿妹都市県携や山村留学など都市住民との長続きのするつながりやネットワークを核に情報の輪を拡大していくような取組も必要である。この場合、都市住民の視点から見て、魅力ある情報であることが必要であり、企画そのものや集客を都市と山村が連携して実施するような工夫も重要である。
 また、森林づくりボランティア活動などを契機として、山村に住んで活動することを希望する者も出てきており、林業労働力確保支援センターが行う見学会などにより、林業就業体粂等に関する魅力ある情報の提供と活用を図っていく必要がある。
利用に適した森林の貌況に関する分かりやすい情報に、一般市民がインタ←ネット等を通して手軽にアクセスできるよう、情報の収集・提供のための仕組みづくりも必要である。
〔5)教育及び試験研究面での条件整備
  国民が生涯を通じ、世代に応じた森林とのかかわりを持てるための機会をつくっていくためには、子ども達等に対する森林環境教育の機会の提供などに加え、高等教育や試験研究の段階における対応も重要である。                             
 最近、一部の大学においては、すべての学部生を対象として、森林づくり活動を含む講座が開設されており、そのような森林体験の機会が拡大されるとともに、森林・林業関係講座においては、景観等を含む様々な環境を保全・形成する機能を持つ資源としての森林の管理技術を担う人材の養成が図られることが望まれる。また、技術的な専門家を有する大学演習林の活用も望まれる。
 さらに、生涯学習関係機関と連務した森林体験に関する公開講座の開設など、地方自治体や企業等による森林に関する学習機会の提供を推進していくことが必要である。
 今後、国民のニーズに応じ、森林の多面的な利用を推進していくためには、試験研究分野の役割が期待されるところであり、関係研究機関における森林の利用に関連する科学的なデータの蓄積や研究者層・組織の充実を含め、調査・研究の充実を図ることが必要である。この場合、学際領域の研究の充実など他分野との連携も視野に入れた試験研究の推進が必要である。


 おわりに
 経済の量的拡大を志向し生活水準の大幅な向上をもたらした20世舵の文明は、地球環境の有限性に直面し、また、経済的な豊かさとともに、精神的な豊かさやゆとり、自然とのふれあいを求めるという国民意識の潮流を生み出した。
 こうした状況をスタートラインとして始まる新たな世糸己においては、精神的、物質的両面において、森林が、国民生活の質を高め、社会経済の持続的発展を可能とするための基盤として、新たな役割を果たしていくことが期待される。
 我が国では、森林を有効に利用しながら、保全するという人間の活動を通じて、人が森林とかかわりあう知恵が育まれてきたが、今後、こうした知恵を新たな世舵にふさわしいものへと発展させていくことが必要である。
 そのためには、国民一人一人が生涯にわたって森林とかかわりを持ち、双方向的な森林と人との豊かな関係を栴築していくことが重要である。
 森林の管理を担うべき山村は、森林と人とがふれあう湯を持つフロントランナーとして、都市住民の積極的な参加と連携の下に、新たな社会の創造に貢献していくことが求められる。
                                
そのためには、山村自らが、豊かな森林や自然、伝統文化などの価値を再認識し、自らの地域資源に誇りを持つことが必要である。さらに、林業等をめぐる極めて厳しい状況を展望を持ち得るものにしていくことが重要であり、森林と人との多様なかかわりを踏まえ、国民的視点に立って、森林・林業・山村に関する基本的課題に取り組んでいくことが望まれる。
 21世紀の幕開けを迎えようとしている今日、こうした取組を通じて、森林と人とが豊かなかかわりあいを持つ21世紀型森林文化を創造するとともに、国民一人一人が環境との調和と資源の循環利用を図る生活様式を実践することにより、持続的発展が可能な社会を構築していくことが望まれるところである。

                            


(参考1)
 中央森林審議会委員及び専門調査員名簿

中央森林審議会委員
[中央森林審議会会長]
北村 昌美   山形大学名誉教授(部会長)
 井本 郁子  (株)緑生研究所取締役研究主幹
 宇野  佐  (財)海中公園センター理事長
 大沢 雅彦   千葉大学理学部教授
 太田 猛彦   東京大学大学院農学生命科学研究科教授
 岡島 成行   前読売新聞社編集局解説部次長
 栗原 慶子   林業家
 小坂  忠  (社)日本河川協会会長((礼)園東建弘済会理事長)
 小林富士雄   大日本山林会副会長
 小林 正夫   日本製紙(株)代表取締役社長
 古本 琢磨   全国木材協同組合連合会会長
 田中 善彦   日本林業同友会副会長
 田部長右衛門  山陰中央テレビシ寸ョン放送(株)代表取締役会長
 林  興平   全国町村会監事(島根県邑智町長)
 平山 征夫   新潟県知事
 甕   滋    地方競馬全国協会会長
 山本 博人   全国森林組合連合会代表理事副会長
 芳村 真理   メディア パーソナリティー
 
専門調査員
 浅野 房世  (株)エネ・イー・エヌ環境計画室取締役
 稲本  正   オーク・ヴイレッジ代表
 川嶋  直  (財)キープ協会常務理事
 坂井 武志  森づくりフォーラム事務局長
 清水 囲明   タレント(野外活動家)
 下村洋之助  群馬県立医療短期大学教授
 辻  一幸   山梨県早川町長
 羽生 卓史   日の出町森林組合代表理事組合長
 林   進    岐阜大学農学部教授
 平野 吉直   信州大学教育学部助教授
 小林 一三  (社)日本林業技術協会技術顧問

(注)中央森林審義会森林利用部会は、上記の中央森林審議会委員のうちの、北
  村会長、宇野委員、岡島委員及び芳村委員並びに専門調査員(小林専門調査
  員を除く)計14名で構成される。

                       
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