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木材流通とは

第3章流通経路及びポジション

各ポジションから二段階以上乗り出すのは危険

①の山林家の中には、日本で最大の山林所有者である国有林から、県有林、村有林、会社所有林を持つ会社、森林組合、む論、林業経営者といわれる個人の人々も入っています。素材生産業者の中には、そのことを業としている会社や営林署の人たち、森林組合の作業班、伐採人夫を数人連れた親方といわれる人たちも入ります。 問題は、この①~⑦の番号で見た各ポジションの間では、それぞれの仕事の難易あるいは販売可能な一ヵ月間の売上げによって、それぞれ三%~三〇%位の利益を確保しなければならないわけですが、かといって山元から消費者に直接自分で売れば倍以上の値段で売れるから①番から⑦番までを占有しようと考えてみても、この番号の中で、自分の占めているポジションから川上へ一段階、川下へ一段階下がった所までの市場を占領することで精一杯である、それ以上を欲張ると失敗する、ということです。例えば、②の伐採業者が①の山林家までやる、あるいは③の素材流通業までをやる、というように上・下一項目まではいけるけれども、それ以上は無理だということです。 大阪の業界へも産地直売と称して、③の人が金を持って⑥番まで進出してくる人が跡を絶ちませんが、まず九〇%の店は失敗して、早くて二年、遅くて五年までで旗を巻いて負債をかかえて帰ることになっています。買った土地を高く売ってその利益で負債が支払えばよい方だという事例が多いのです。

 これはなぜかと言うと、商流の管理が十分になされるためには、沢山の人を確保し、経営者、支店長になる人の心構えと能力がすぐれていなければならないので、利益を多く得るために人をふやして他の番号の所まで占有しようと試みたが、逆に利益を上げることができずに赤字を抱えることになるわけです。責任者も社員も、ポジションによって管理する体質がそれぞれ違っているので、三部門を越して管理することは不可能なのです。上下合わせて三部門を制覇することは至難のことです。一方向へだけならば、自分の本来のポジションを含めて二部門までは社員の派遣ですまされますが、一方向への三部門となると、それぞれの専門家の採用が必要となってきますから、別の会社を作って別な観点から管理する方がよいということになります。けれども、それは決して合理化したことにならない場合が多い。利益を上げるためにしたことが、逆に親会社の足を引っ張る結果となっしまうのです。

このことは川下へ行くほど、他のポジションの占有はむつかしくなってくることを意味します。とくに、④番の製材業と、⑥番の小売業とがむつかしい。その他のところは、相互のとり合いが、比較的容易に行けるところです。私が紀州から大阪へ出てきて製品問屋をやり始めた時に、「お前んとこの親父はずっと山林をやっとったんやから、山林業や素材生産業、素材問屋まで入ってもいいんやないか」と言われたことがありましたが、山を買う時にだまされるとか、出材する時に不要な費用をかけすぎるとか、そういうことで失敗する時が必ずあるから、製品問屋に専念すべきで山林業にまで手を出すべきではないと、自制した経験があります。製材所が山林業に乗り出した場合には成功例が多いのに比べて、山林業あるいは素材生産業の人が、製材所や製品問屋をやるために山から降りてくるというのは大変危険なことで、間違いを起こす元になるのです。

製材業のむつかしさは、毎日毎日扱う材によって歩止りが違うところにあります。簡単に言えば一八cmの丸太で一〇・五cm角も挽けるし、一六cmの丸太でも一〇・五cm角が挽けます。すると、歩止りは三割にも五割にもなってしまいます。それによって何が生じるかと言うと、値段の安い背板が沢山出てくるということになります。ということで、外材のように同じような規格の丸太が大量に次々と入ってくるというのであればともかく、国産材のように千差万別の木材が入ってきて見張っていなければならないものの場合には、能率と歩止りを専属に考える人がいないとやってゆけないわけです。