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木材流通とは

第3章 流通経路及びポジション

ある商社が小売業に進出して失敗した原因

いま述べたことを図にすると、次のようになります。

 S林業は、日本の有力企業です。①~⑦までを占有していますが、山林部門、製材部門、問屋部門、建築部門の四部門に分けており、そのうち、製材部門と建築部門とは完全に別会社で管理しています。山林部門と問屋部門とは同じ会社内に置かれていますが、それぞれ別の取締役がおられてそれぞれ管理して大変上手に運営して利益を上げておられます。

失敗した例としては、日本最大手のA商社が⑥番の小売部門にまで進出してきて、僅か二年半の間に億単位の損を出して廃業してしまったということがあります。

A商社が五〇%出資し、大手の合板メーカーと製材メーカーに残りを出資してもらって、その大手の商社の名前をつけて、仲買さんというか小売屋さんからの猛反対を受けながらも、工務店売りの小売業を始めたのです。それだけ大手の会社が出資しているのですから仕入れには全然心配はなかった。敷地も二、〇〇〇坪位持っていたから、在庫にもことかかなかった。しかも、流通のベテランである商社とメーカーから三〇人位の営業マンを投入して始めたのですから、機構的には全然問題ないと言えるようなところまでいっていた。にもかかわらず、なぜ二年半の間に何億円もの損をしてやめなければならなかったというと、小売業としての流通管理=商流を知らなかったから、ということになります。

その会社では、売掛金が回収できず減らないで残っていたのです。山本工務店に対して一二〇万円、田中工務店に対して五〇万円というように、売掛金が残ったままになっている。しかし、相手の山本工務店や田中工務店に聞いてみると、「わしら、買掛金は少しも残ってない」と言う。「お前とこ高い値段つけてきたから、そんなもん払えんといって、その月の間に始末して、こちらで買った金は払ってあるで」「だから、わしとこの買掛金はゼロや」と言うのです。けれども、会社の帳面に、山本工務店の売掛金は一二〇万円残っており、田中工務店の売掛金は五〇万円依然として残っているわけです。帳面上は売掛金が残っているのだから、会社の収益バランスは数字の上では合っていたわけですけれども、実は相手方では買掛金はゼロだと思っている。二〇〇軒か三〇〇軒の得意先が買掛金がゼロだと言っているのに、だんだん売掛金がふえてくる。これはおかしいなと気が付いて、商社らしいやり方で顧問経理士が全ての得意先に債権残高を照会した。そうしたら、返事をしてきたところもあるし返事をしてこないところもあったのですけれど、返事をしてきたところの大半は、「おたくの売掛金はない」或いは金額が少ないという返事だった。それでびっくりして、大商社が五〇%の出資をしているのだから倒産はできないけれども、戦線を縮小し撤退してしまった、というわけです。この場合は、営業マンに悪意があって売掛金の報告をし、そのまま残していたわけではなく、「いつか少しでも入金してくれるだろう」と甘い考えだったということのようですが、そこには小売業のような中小企業にとってとくに必要な社内の牽制組織が確立されていなかったと言えますし、また、末端の木材業者・工務店などと木材の取引を行う場合の厳しさを、経営者が完全に知らなかったことによる失敗であった、と言えましょう。