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木&の生字引を亡くして/

社団法人木造住宅産業協会 近畿支部 留河一
今や故人となられました中川藤一氏は、私にとりましては中川木材店社長としてよりも、木造住宅産業協会近畿支部の幹事として、非常に印象の深い、尊敬申し上げる方でありました。

従って親しくお近づきさせて頂いたのも、"木住協"を通じてのほんの短かい間でありましたので、氏を偲んで申し上げる資格も、又資料も持ち合わせていない私でありますが、"木住協"の諸々の活動を通じての余りにも立派なお人柄、即ち燻し銀の如く目立たず、それでいて奥行の知れないご造詣の深さには驚くばかりで、ここにその感銘の一端を記させて頂き、追悼に賑わいを添えさせて頂けるならば非常に光栄に存じ上げる次第でございます。

木造住宅産業協会は申すまでもなく木造軸組工法による住宅振興のための団体でありますが、それだけに何といってもその出発点は"木"にあるわけです。

ご高承の通り木造軸組建築は日本古来の建築工法でありますが、それ故に却って木材の特質や卓越性等が、恰も空気の存在の如く忘れられ、特に現代の人々には余り理解されていないのではないでしょうか。

そんな時代背景にあって氏の"木"というものに対するご造詣は、単にご商売柄とは云えない深く高いものを持っておられました。

勿論それは氏の"木"に対する強い愛情と、熱心な研究の集大成だと拝察申し上げるのですが、それが故に"木"を通じての各界各人とのご交流の広さ、そして存在の偉大さについては、木住協主催のシンポジュームにおけるパネラーとして、又美原木材団地内のウッドリームの運営、協会内の諸活動等々において垣間見られ、自然に滲み出る氏のご識見と味として、非常に感銘を受けた次第でございました。

およそ"木"に関しては、山にある時から材木としての流通に至るまで、洋の内外を問わず学問的にも、又実業的にも精通しておられ、正に"木"についての生字引と申し上げても過言ではありますまい。

このような意味から私達の木住協の将来について大切な星を失った感じで、何をおいても先ず"木"の本質、即ち物理的或は感性的特質、歴史的生産的経過をベースとして、当協会の活動を益々活性化してゆかねばならない大切な時に誠に惜しみても余りある氏のご識見であり存在でありました。

一朝一夕にして氏の代りはとても務め得ない私達ですが、少くとも氏の"木"に対する真心と愛情は、これを鑑として引継いで、協会の発展と木造軸組住宅の振興に精進いたしますことをお誓いして追悼の言葉とさせて頂きます。