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平井信二先生の樹木、木材研究

イトスギ属の樹木(その2)
7.ミンコウヒバ
 ミンコウヒバCupressus chengiana S.Y.HUは支那四川省西部・北部、甘肅省南部の海抜1,200~2,900mの高地に生じ、中国名は岷江柏木という。
 高さ30m、直径1mまでとなる高木で、枝葉を密生し、樹皮は灰褐色で割れ目が出る。鱗状葉をつける小枝は1平面に配列せず、斜向して下垂しない。末端で断面は円形、径1~1.5、まれに2mmに近い。鱗状葉は斜方形で長さ約1mm、規則的に4列に並ぶ。背 部はアーチ形をなし、その中部にある腺体は明瞭または不明瞭である。熟した球果は球形に近いかやや長く径は1.2~2cmである。種鱗は8個または10個で、楯形の上面は扁4角形または5角形、平坦で、紅褐色または褐色を呈し白粉を帯びない。各種鱗に種 子が多数つく。種子は扁円形または倒卵状円形で長さ3~4mm、幅4~5mm、両側につく翼の幅はやや広い。
 材の性質と用途はウンナンヒバCupressas duclouxiana HICKELと同様である。  
8.ウンナンヒバ
 ウンナンヒバCupressus doclouxiana HICKELは支那雲南省中部・西北部、四川省西南部の海抜1,400~3,300mの高地に生じ、英名にYunnan cypress、Chinese cypressがあり、中国名は乾香柏、沖天柏、雲南柏、漠柏、乾柏杉という。
 高さ25m、直径80cmまでになる高木で、樹幹は通直、樹皮は灰褐色を呈し、割れ目が入って長い条片になって剥落する。枝は開出し、樹冠は広く円形に近い。鱗状葉をつける小枝は一平面内に配列せず、また下垂しない。1年生枝は断面が4稜形で径約1mm である。鱗状葉は密につき、斜方形に近く長さ約1.5mm、先端はやや鈍いか、ときにやや尖がり、背面に縦の隆条と腺体がある。青緑色を呈し、微かに蝋質の白粉を被むる。ほかに明瞭な腺点はない。
 雄花は球形に近いか楕円形で長さ約3mm、12~16個の雄ずいをつけ、葯隔は三角状卵形を呈する。球果は球形で径は1.6~3cmあり、8または10個の種鱗からなる。熟して暗褐色または紫褐色となり白粉を被むる。種鱗の楯形の上面は5角形または4角形に近 く、幅8~15mm、不規則な四周への放射状の皺紋があり、平らかまたはやや凹んだ中央に尖頭の短い突起をもつ。稔性の種鱗には種子が多数つく。種子は長さ3~4.5mmで、褐色または紫褐色を呈し、両側に狭い翼をもつ。
 材は淡黄褐色または淡褐色を呈し、木理は通直、肌目は精で、香気がある。材の組織はシダレイトスギCupressus funebris ENDLICHERと同様であるが、仮道管の径は小く、接線方向で平均0.026、最大0.034mmまたは以上と記載されている。加工に容易で、心材は耐朽性があるがシダレイトスギには及ばない。雲南省地方では重要な材の一つで、建築、家具、器具、車両、船舶、 橋梁、パルプなどに用いられる。  
9.Cupressus gigantea CHENG et L.K.Fu
 Cupressus gigantea CHENG et L.K.Fuはチベットのヤルツァンボ川流域の海抜3,000~3,400mの高地に生ずる。英名をgiant cypress、Tsanpo cypress、中国名を巨柏、雅魯蔵布江柏木という。
 高さ30~45m、直径1~3m、まれに6mまでになる高木で、樹皮は灰紫褐色を呈し縦の割れ目が入る。鱗状葉をつける小枝は密に分岐して1平面をなさず、太くて末瑞で径1~2mm、断面はふつう4稜形まれに円形で下垂せず、常に蝋粉を被むる。鱗状葉は斜方 形で整斉な4列に配列し、背部は鈍い縦条があるかまたはアーチをなす。灰青色から緑色を呈し、先端は鈍く、腺体は不明瞭である。
 球果は楕円形で長さ1.6~2cmである。種鱗は12個で、木質、5角形または6角形、または上部のもので4角形、楯形の上面は平坦で、中央に明瞭な尖頭の突起をもつ。稔性の種鱗に種子多数がつき、その両側に狭い翼をもつ。材質は優良とされる。  
10.オオイトスギ
 オオイトスギ(ヒマラヤイトスギ、ブータンイトスギ、ヒマラヤヒノキCupressus torulosa D.DON(異名Cupressus nepalensis LOUDON)はインドのパンジャップ以東のヒマラヤ地域、ネパール、ブータン、チベット東部・南部の石炭岩地などに生じ海抜1,800mから3,000mくらいまでの地に至る。わが国へは明治28年(1895)に渡来したとされる。英名をHimalayan cypress、Bhutan cypress、Indian cypress、twisted cypress、独名をHimalaya-Zypresse、仏名をcypres toruleux、中国名を西蔵柏木、喜馬拉雅柏、乾柏杉、インドでdevi diar、galla、leauri、surai、raisal、dhupi、チベットでsarru、surinなどという。
 高さ45m、直径1mまたは以上までになる中~大高木で、樹冠は広い円錐形であるが、頂端は円くなる。樹幹は通常通直、樹皮は鈍褐色で、長く狭い条片で剥がれ、繊維質である。枝は水平に出て先端で上向する。鱗状葉をつける小枝は1平面に配列せず、 疎らに分岐し、断面は円形で、末端の方で径約1.2mm、やや下垂するか、または下垂しない。鱗状葉は斜方形に近く長さ1.2~1.5mm、先端は通常やや鈍く、背部は平たく、中部に短い腺体がある。黄緑色に灰白味を帯び、僅かに白粉を被むる。
 球果は広卵形または球形に近く径1.2~1.6cm、熟して灰褐色から暗紅褐色を呈し灰白味を帯びる。種鱗は10または12個あり、楯形の上面は5角形で放射状の条紋があり、中央に小い突起をもつか、または平坦に近い。稔性の種鱗に種子が6~8個または以 上がつく。種子は長さ4mm、やや扁平で円頭、紅褐色、両側に狭い翼をもち小さい突起瘤がある。
 辺・心材の区別があり、辺材は白色ないし黄白色、心材は淡黄褐色、淡褐色を呈する。生長輪は明瞭である。木理は通直、肌目は精で、芳香をもつ。組織では樹脂細胞が晩材部で接線方向に並列して現れ、高齢木ではきわめて多くなる。
 材の気乾比重に0.48~0.70の記載があるが、0.60程度が平均的と思われる。製材、乾燥、切削加工は容易で、心材の耐朽性はきわめて高く、ヒマラヤスギCedrus deodara LOUDONと同等または以上とされる。建築構造材・内装造作材、とくに寺院に用いられ、家具、器具、車両、枕木その他に使われるが、量的には少い。心材は香木に用いられることがある。
 栽培品種に次のものがある。
 (1)Cupressus torulosa D.DON cv.Majestica:丈高く壮大で、枝は黄色を呈する。小枝は太く外方へ曲がる。鱗状葉は小枝に4列になってかたく重なってつく。しばしば先端でやや曲がり背側に縦の溝がある。
 (2)Cupressus torulosa D.DON cv.Ericoides:開出したブッシュ状の低木で、葉は突錐形の針状葉である。冬に葉は淡褐色となる。  
11.カシミールイトスギ
 カシミールイトスギCupressus cashmeriana ROYLE ex CARRIERE(異名Cupressuis torulosa D.DON var.cashmeriana KENT、Cupressus pendula GRIFFITH)の原産地は確認されていないが、多分インドのカシミールまたはチベットと推測されている。ヨーロッパを始め各地で庭園樹として植栽されている。英名をKashmir cypress、独名をKashmir-Zypresse、仏名をcypres de Cashemireという。
 世界で最も優美な樹の一つとされる。オオイトスギCupressus torulosa D.DONによく似ているが、ふつう小高木で、樹冠は円錐形を呈し、枝は始め上向するがそれから長くなって小枝とともに著しく下垂する。小枝は扁平で、これにつく鱗状葉は長さ2mm、先端は槍状になって開出し、上面で灰青色、下面ではより暗色となり、 両側に白粉を被むる。
 球果は球形で径は1~1.3cm、熟して暗褐色を呈する。種鱗は10個あり、楯形の上面の中央で凹み、そこに鋭頭の刺状突起をつける。各種鱗に種子が約10個つく。種子は狭い翼をもつ。
 オオイトスギの栽培品種でCupressus torulosa D.DON cv.Corneyana(異名Cupressus corneyana KNIGHT ex CARRIERE) とされたものはこれと同一と考えられている。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る