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平井信二先生の樹木、木材研究

マンソニア属の樹木
l.マンソニアの概要
 マンソニアMansoniaアオギリSterculiaceaeに属し、熱帯西アフリカとインド、ビルマに隔離分布して5種ほどがある。そのうちよく知られているのは次のマンソニアである。
 マンソニアMansonia altissima A.CHEVALIERは熱帯西アフリカのリベリアから東ヘカメルーン、コンゴに至るギニア湾岸地域のやや乾燥性の低地降雨林に生ずる。英名はmansonia、African black walnut、コートジボアールでbete、boroua、ガーナでaprono、ナイジェリアでoftn、afon、odo、urodo、カメルーン、コンゴでkoulという。
 高さ40m、直径1.3mまでになる落葉中~大高木で、樹幹はほぼ円柱状で通直、鈍頭の板根をもつ。枝下は15m~25mに達するものがある。若い樹では多少輪生状に分岐する。樹皮は灰褐色で広く浅い割れ目ができる。小枝に密毛があるものから、疎毛あるい はほとんど無毛のものまである。葉は互生する単葉で、広倒卵形、長さ15~30cm、幅7~23cm、先端は僅かに尖頭をもつかまたは円頭、基部は心形を示す。縁に低い小鋸歯があり、通常波状を呈する。葉身の基部から通常7本の掌状脉を出し、側方の 脉はさらに外側に支脉をもつことが著しい。各側脉の先端は鋸歯に至る。両面の中肋上などに星状毛を密生するものから、両面ともほとんど無毛のものがある。葉柄の長さ1.5~6cmである。
 小枝の頂部に長さ7.5~15cmの散房状の円錐花序を出し、花序軸に星状毛を被むる。花は両性花で、白色で芳香がある。がくは長さ約12mmで、弯曲し裂けて片側に垂れる。花弁は5個、倒卵形で長さ約18mmである。長さ6~7mmのずい柱の上に小い頭状 になって雄ずい10個と雌ずい1個がつく。雌ずいの子房は5個の心皮からなる。1花からできる果実は2~5個の分果で、長さ3.5~5.5cmの翼果、果柄上に小い束になって垂下する。室部の径は約1.8cm、その片側につく翼は長倒卵形などで長さ5cmほど、網脉が 目立つ。  
2.マンソニアの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別はきわめて明瞭で、辺材の幅は約5cmあり灰白色、黄白色を呈する。心材は灰褐色、褐色でしばしば紫色を帯び、ときに紫黒色までを呈し、色相の変化が多い。また暗色の縞が現れるものもある。外気にさらされて時が経過する とともに褪色することが著しく、淡黄褐色までに至るものがある。生長輪は組織の疎密の変化でおおむね認められる。木理は通直ときに交走し、肌目は中位ないしやや精で、光沢は少い。生材時に僅かに匂いがあり味はない。縦断面でリップルマークが認 められる。
 道管は単独および2~4個ときに8個までが放射方向ときに団塊状に接続し、接続しているものが多い。分布数は7~45/mm2で変化が多い。単独道管の断面形は楕円形などで、道管の径は0.03~0.23mmにわたるが、0.15mm前後のものが多い。せん孔板は水 平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、その径に約0.003mmである。道管と放射組織の間の半縁壁孔対もこれと同様である。チロースが認められる。
 材の基礎組織を形成するのは小い有縁壁孔をもつ繊維状仮道管または真正木繊維で、長さは1.4mm、径は0.01~0.02mm、壁厚は0.003~0.005mmである。縦断面でみて層階状配列をする。
 軸方向柔組織では、短接線柔組織が明瞭で、放射方向に1ときに2細胞層、接線方向では放射組織の間を全部架橋するものから、多少分断し、また単独散在の柔細胞の形に移行するものもある。生長輪末端では放射方向に1~2細胞層で接線方向にほぼ連続 したターミナル柔組織となる。縦断面でみて柔細胞ストランドは層階状配列をする。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~2、まれに3~4細胞幅であるが、大部分2細胞幅であって、高さは13~25細胞高を示す。その構成は異性で、単列のものと、多列放射組織の軸方向両端1層ときに4層までの単列部は直立細胞または方形細胞の層、他は平伏細胞の層である。
 端末の大型細胞中に菱形の結晶を含む。シリカは含まれない。接線断面でみて、放射組織は比較的整った層階状配列を示す。  
3.マンソニアの材の性質と利用
 材の気乾比重に0.60~0.70の記載がある。収縮は比重相応に普通である。材の強度も普通であるが、衝撃に対する抵抗はやや大きいという。
 乾燥は容易で比較的速く、狂いなどの損傷も少い。製材、各種の切削加工、釘付け、接着も良いが、材中に含有するキノン系物質のマンソノンが不飽和ポリエステル樹脂による塗装を阻害する。また切削加工などで材粉中の同物質による眼、鼻、喉の粘 膜刺戟の健康障害を生ずることがよく知られている。心材の耐朽性は一般にきわめて高いと評価され、ヒラタキクイムシ、白蟻に対しても抵抗性がある。ただし丸太で放置された辺材にピンホール、カミキリムシの食害がある。
 材色と性質がアメリカグルミblack walnut、Juglans nigra LINNAEUS)によく似ているので、その代用としてヨーロッパを主に広く用いられており、わが国にも輸入がある。すなわち建築内装・装飾材、パーケット・フローリング、高級家具の表面材・縁材、車両、船舶、楽器、器具、旋削工芸品その他で、これら はスライスドおよびロータリー・ベニヤあるいは合板の形で用いられることも多い。多少特殊のものをあげると、自動車の計器板・窓枠、ラジオ・テレビのキャビネット、ピアノの外装、カメラボディ、銃床、海中構造物その他がある。わが国に輸入され たものは化粧ベニヤでの利用が多く、箱根細工の寄木、象がんで暗褐色材としても用いられている。  
4.Mansonia gagei DRUMMOND
 Mansonia gagei DRUMMONDはビルマのテナセリウム産で、現地名はkalametという。
 高さ12m、直径40cmまでになる高木である。葉は長楕円形で長さ7.5~11.5cm、幅2.5~5cm、基部は僅かに心形を呈し、葉柄の長さは約0.6cmである。托葉は皮針形で脱落性である。
 散房状の円錐花序を腋生し、花序軸に星状細軟毛を布く。小花柄は束生し長さ6mmほど、がくは外面に星状細軟毛があり、花弁は5個、倒卵形で長さ4mm、蕾中では捩れている。長さ2mmほどの細いずい柱に、雄ずい、雌ずいとその中間に退化雄ずいをつけ る。雄ずいは10個で、丁字着の葯1個をつけ、花系は葯より短い。退化雄ずいは5個で倒皮針形、花弁状を呈する。雌ずいの子房は5個の心皮からなり、これらは退化雄ずいと互生し、各心皮の上に糸状の花柱がつく。果実は翼果になる分果で、各分果は長 さ1.3cmほど、各々種子1個をもつ。
 散孔材で、心材は褐色を呈する。材の気乾比重に1.02の記載があり重硬である。
 材は生材では不快な匂いをもつが、枯死または伐採されたまま長い期間がたつと次第に芳香に変わってくる。これは化粧料に用いられるが、供給が少くまた高価である。  
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