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平井信二先生の樹木、木材研究

キバナヨウラク属の樹木
5.キダチヨウラクの概要
 キダチヨウラクキダチキバナヨウラク、イエマネ、グメリナ、メリナGmelina arborea LINNAEUSはインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、ビルマ、支那雲南省、インドシナに広く分布し、また早生樹種として東南アジア各地、アフリカ(とくに南アフリカ、熱帯アフリカ)、ブラジルその他で植栽されてい る。英名には現地名のyemane、学名のgmelinaがそのまま使われることが多く、またMalay beechwood、Malay bush beech、Indian bulang、Candahar tree、Kashmire tree、white teak、coomb teakの名もある。現地名はインドでgamhar、gambhar、gomari、khamara、sewan、shivan、バングラデシュでgamar、gamari、スリランカでet-demata、ビルマでyemane、yamane、タイでsaw、so、so- maeo、中国で雲南石梓、テン石梓、大葉石梓、石梓、酸樹、■騒、ベトナムでloi tho、tho、nghien datなどという。
 高さ30m、直径75cmまでになる落葉高木であるが、ときに高さ40m、直径1.4mまでのものがある。樹幹は通直過で、樹皮は灰白色、灰褐色を呈し、始めおおよそ平滑であるが、後に不規則な鱗片状になって剥落する。ふつう若枝・葉下面・葉柄・花序 に黄褐色の細軟毛を密布する。小枝はやや扁平で稜があり、葉痕が明瞭に現れる。葉は広卵形で長さ8~25cm、幅4~18cm、鋭尖頭、基部は広い楔形から浅心形を示す。厚い紙質で、全縁、基部は3出脉になり側脉は3~5対、基部近くに2~数個の黒色盤状の 腺体をもつ。葉柄の長さは3.5~10cmである。
 花は集散小花序につき、それらが複成して頂生の円錐花序になり、総花序柄の長さは10~30cmある。がくは鐘形で長さ3~5mm、外面に数個の黒色盤状の腺体をつける。花冠の長さは3~4cmで、鮮黄色を呈し、外面に黄褐色の細軟毛が密布し内面は無毛、 また両面共に疎らに腺点がある。2唇形で、上唇は全縁または2浅裂、下唇は3裂しその中央裂片はやや大きい。雄ずいは4個で2長2短、長い雄ずいと花柱とは花冠の喉部から少し超出する。子房は無毛で腺点があり、花柱にも疎らに腺点がある。柱頭は不同 長に2裂する。石果は楕円形、倒卵状楕円形で長さ1.5~2cm、熟して黄色を呈し乾いて黒色となる。核(内果皮)の中に1~2個の種子がある。
 次の変種が区分される。
 Gmelina arborea LINNAEUS var.arborea:母変種。
 Gmelina arborea LINNAEUS var.glauscens C.B.CLARKE:東南アジアで植栽されるものに見られ、葉の下面は無毛である。
6.キダチヨウラクの材の組織
 散孔材であるが、乾季と雨季が明瞭な処に生育するものは、道管の径の変化でやや環孔材的な傾向を示す。辺・心材の区別が明瞭でないことが多く、辺材は幅6cmほどで薄い黄白色、心材は黄白色から淡灰褐色、淡黄褐色、黄褐色などでときに淡紅色を 帯びる。不明瞭な生長輪が見られることがある。木理は浅く交走、ときに通直、肌目は中位ないしやや粗で、くすんだ光沢がある。辺材は青変に侵されやすい。ときに引張あてを生ずることがあり、脆心材は見られない。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~3個、ときに小道管を伴って5個までが接続、またやや団塊状に接続するものがある。分布数は3~15/mm2である。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.04~0.32mmを示す。せん孔板は水平ないし少し傾 斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、その径は0.008~0.011mmである。一般にチロースがよく発達していて薄壁である。
 材の基礎組織を形成するのは有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、1~4個の隔壁をもっている。長さは1.1(0.6~1.8)mm、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.002~0.004mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は薄く0~2まれに3細胞層で道管を囲むが、ときに翼状柔組織、さらに連合翼状柔組織になるものがある。放射方向に2~4細胞層のターミナル柔組織と思われるものが不明瞭に見られることがある。基礎組織中に単独で散在 する柔細胞も不顕著、不規則で、以上3種のものは移行的または区別困難である。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmで、細胞中に含有物は少い。
 放射組織は1~6細胞幅で、1~2細胞幅のものは少い。2~25細胞高である。その構成はほとんどが通常の小型の平伏細胞からなる同性であるが、ときに軸方向端末の単列の1層ときに2層が、軸方向の高さがやや高く、放射方向の長さが短い大型の平伏組 胞ないし方形細胞に近い形のものの層となり、やや異性化の傾向を示す。細胞中に束状にならない針状結晶を含むことが多い。樹脂様物質の含有は少い。シリカは認められない。  
7..キダチヨウラクの材の性質
 材の気乾比重は0.40~0.72の範囲の記載があるが、多くは0.45~0.55の間にあって、これを外れる値は少ない。すなわち生育の条件、年令などによる変化が少なく、樹心から外側へ向っての推移を求めた研究結果でも、樹心以外は均等が著しい樹種 であることを示している。材質数値の例をあげると、生材から含水率12%までの収縮率は接線方向2.4~3.5%、放射方向1.2~1.5%、縦圧縮強さ286~398kg/cm2、横圧縮強さ26~31kg/cm2、曲げ強さ622~765kg/cm2、曲げヤング係数9.0~9.8×10(4)kg/cm2 、せん断強さ75~105kg/cm2、ヤンカ硬さは縦断面で263~351kgである。
 化学的組成の例では、ホロセルロース71.2%、セルロース43.9%、ペントザン15.2%、リグニン26.3%、温水抽出物1.8%、アルコール・ベンゾール抽出物4.6%、1%NaOH抽出物10.2%、灰分0.65%を示す。
 製材は容易で鋸歯の摩耗は僅かである。乾燥は一般に比重の割には遅いが、割れが出ることはほとんどなく狂いも少ない。乾燥したものは使用中の寸法が安定している。鉋削などの切削は容易で刃物の鈍化が少く仕上げ面も良好である。ただし旋削には 材が軟らか過ぎて適当でない。接着では酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤では問題はないが、他の合成樹脂接着剤ではあまり良くない。着色、塗装、研磨はほぼ良好である。ロータリー単板切削は比較的容易である。製材、乾燥、切削加工、単板切削を 通じて人工植栽木で節が多いものはそれぞれ適当な対応が必要とされる。心材の耐朽性は屋内使用ではやや高いとされることが多いが、また耐朽性があまりないとの評価もある。
 キクイムシ、白蟻に対する抵抗性はないとの評価が多い。心材への防腐剤 の注入は道管中にチロースが多いためきわめて困難である。  
8.キダチヨウラクの材その他の利用
 材は比較的軽軟で加工性がよく、乾燥後の寸法が安定し、屋内使用での耐朽性がやや高いため、各方面で広く利用されている。
 建築を含む軽構造材、パネル・軽フローリング・枠材・モールディング・ドアーなどの建築内装・造作材、ボート・現地民のカヌー・オールその他の船具などの船舶材、かごのようなものを含む車両材、家具・キャビネット、種々の器具、箱・容器・包 装材、ドラムなどの楽器、マッチの軸木と箱、各種型材、版木、玩具、仏像その他の彫刻などがあり、これらのうちには合板の形で用いられるものもある。パーティクルボード、ファイバーボード、木毛セメント板にも作られる。パルプはとくにこの目的 で造林されているものが多く、クラフトパルプ製造は容易であり、中間程度の品質のものが得られ、漂白にも困難はない。現地では燃材として使われることも多い。
 材以外の利用では、樹皮・葉・果実が胃痛その他の内服薬に、果汁が腫物の外用薬に用いられ、葉が家畜の飼料となり、アッサムではえり蚕の飼料とされる。花は蜜源となる。中国・雲南省の西双版納(シーサンパンナ)のタイ族は、花を粉末にしても ち米と混ぜ、バナナの葉に包んで蒸したものを新年の料理とする。樹は街道樹に用いられ、またコーヒー・ココアのプランテーションで庇陰樹として植栽される。  
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