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平井信二先生の樹木、木材研究

カキバチシャノキ属の樹木
17.Cordia myxa LINNAEUS
 Cordia myxa LINNAEUS(異名Cordia obliqua WILLDENOW、Cordia wallichii G.DON、Cordia latifolia ROXBURGH)はパキスタン、インド、スリランカ、ネパール、ビルマに分布する。
 かって東南アジア、マレーシア地域でCordia myxa LINNAEUSとされたものの多くは、現在は別種カキバチシャノキCordia dichotoma FORSTER FIL.として扱われることが多い。またここにあげるCordia myxa LINNAEUSがエジプト、西アジア、東南アジア、マレーシア地域に導入されたものが植栽または自生化していると考えられる。インドでlessora、gondi、buhal、bhokar、shelu、iriki、sepistan、pistan、geduri、タミール語でvidi、naruvili、スリラン カでlolu、ネパールでboeri、ビルマでthanat、中国で毛葉破布木などという。
 高さ12mほどになる落葉高木ないし低木である。樹皮は暗灰色を呈して粗く、塊状片になって剥落する。小枝は無毛である。葉は広卵形から円形に近く、長さ4~12cm、幅4~ 11cm、鈍頭または円頭、基部は円形から切形ないし心形を示す。全縁または僅かに波状の牙歯があり、葉身の基部から3脉まれに5脉を出す。上面は多少ざらつくが著しくなく、下面に細軟毛を生ずる。葉柄の長さは1~3cmである。
 頂生および側生の集散 花序は大きいが疎らで散房状を呈し、白色の小花をつける。がくは筒状鐘形で長さ3~4m、隆条があり、短い裂片をもち、通常細軟毛を被むる。花冠の筒部はがくと同長またはそれより短く、5個の裂片は長さ2.5~3mmで、花冠筒の内面は有毛である。石果 は球形に近く長さ1.3~2.5cm、黄色、淡紅色、ときにほとんど黒色で、微細な皺がある。漏斗形の宿存がくの上にのる。中果皮(果肉)は膠質で、ほとんど透明で甘く、内果皮(核)は骨質で皺があり、種子1個を含む。
 散孔材。辺・心材の区別は不明 瞭で、灰褐色などを呈する。生長輪は多くは不明瞭である。材の水浸出液は著しく蛍光を発するとの報告がある。
 材の気乾比重に0.37~0.78の記載があり、おおよそ中位ないしやや軽軟であるが、かなり強度があるという。製材、乾燥、切削加工 などは容易で、耐朽性はやや低く、昆虫の食害を受ける。
 材は建築構造・造作材、一般家具、車両、ボート、器具、農具、井桁、茶箱、銃床その他に用いられるが、燃材としては不良という。
 樹皮の繊維はロープなどに作られ、またボートのコーキン グに用いられる。果肉は食べられ、膠質を利用してとりもち、糊などとし、種子の仁もまた食べられる。未熟の果実は野菜とピクルスにする。葉はビルマたばこの巻き葉に使われ、この目的で植栽され、また庭園樹、行道樹とされているものもある。  
18.Cordia rothii ROEMER et SCHULTES
 Cordia rothii ROEMER et SCHULTES(異名Cordia angustifolia ROXBURGH、Cordia gharaf EHRENBERG et ASCHERSON、Cordia sinensis LAMARCK)はインド西部、スリランカ、アラビア、アビシニア、ケニアから南方・東方にモザンビーク、ローデシア、ボツワナ、南アフリカ、ナミビアにわたって分布する。英名をgrey-leaved saucer berry、grey-leaved cordia、インドでgondi、gundani、liar、タミール語でnaruvili、ケニアでndea、muthee、ol durgo、maderなどという。
 高さ6~13mの小~中高木で、樹皮は灰色、灰褐色を呈し、平滑ないし縦の割れ目がある。葉は対生に近く、倒皮針形、倒卵形で長さ3~10cm、幅1.3~4.5cm、円頭、ときに浅い凹入があり、基部は狭い楔形を示す。全縁または 上半部に不規則でやや広い鋸歯があり、上面はざらつき、下面は僅かに有毛である。葉柄の長さは約lcmで、長毛を生ずる。
 集散花序は頂生または腋生で長柄があり、白色ないし黄白色の小さい花を疎らにつける。がくは倒円錐形で、不明隙に小さい裂片があり、外側は黄色の細軟毛を布く。花冠の筒部はがくと同長か少こし長く、4個の裂片は楕円形で反捲する。花糸は無毛 で花冠の喉部に着く。石果は卵形で長さ1~2cm、先瑞は短く尖がり、黄色から橙紅色を呈する。縦条があり無毛である。中果皮(果肉)は膠質で透明である。肥大したコップ形で有歯の宿存がくが果実の下方1/3を包む。
 辺材は淡黄色、心材は褐色で黒 色の縞がある。材の気乾比重に0.72~0.82の記載がありやや重硬である。
 材は建築構造材・造作材、家具、器具、農具、その他に用いられ、また燃材にも使われる。樹反の繊維からロープが作られ、また収斂性の物質を含むのでうがい薬に用いられ る。  
19.Cordia alba ROEMER et SCHULTES
 Cordia alba ROEMER et SCHULTESはインド西部産の高木である。J.ILIC:『CSIRO Atlas of Hardwoods』によって材の組織の概要をあげる。
 散孔材。道管は単独およびおもに放射方向に2~3個が接続し、分布数は1~6/mm2である。単独道管の断面形は広楕円形などでやや角ばっており、道管の径は0.09~0.26mmを示す。せん孔板は水平またはやや傾斜し、単せん孔をもつ。チロースが認められ る。
 材の基礎組識を形成する真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.025mm、壁厚は0.003~0.004mmほどである。
 軸方向柔組織はほとんどが不規則な帯状柔組織で、量が多く基礎組織様で道管を包含しており、単独で道管に随伴する周囲柔組織は見られない。
 この帯状柔組織は放射方向に4~15細胞層あり、間隔は繊維の2~10細胞層で出現するが、輪廊は不規則で著しい波状を呈する。柔細胞の径は0.015~0.08mm、壁厚は0.001~0.002mmほどで、内容物は少ない。
 放射組織は2~7、多くは5~7細胞幅で、15~45細胞高または以上である。構成は異性で、鞘細胞は存在するが少ない。軸方向両端1~3層の単列部と鞘細胞は直立細胞、方形細胞または丈が高く放射方向の長さが短い大型の平伏細胞の層、他は通常 の小型の平伏細胞の層からなっている。細胞内の内容物は比較的少なく、砂晶の存在が見られる。  
20.Cordia fulvosa WIGHT
 Cordia fulvosa WIGHTはインドの南デカン地方産の小高木である。Cordia vestita HOOKER FIL.et THOMSONに似ているが、葉はそれより小さい。葉は互生し、葉身の基部近くから出る3~5個の脉が目立ち、上面にふつう隆起した白色の盤状体があってざらつく。花序はCordia macleodii HOOKER FIL.et THOMSONと同様で、花は白色を呈し、花冠筒部はがくと同長またはそれより短い。  
21.Cordia lowriana BRANDIS
 Cordia lowriana BRANDISはインド産の低木ないし小高木である。葉は互生し、楕円形、楕円状皮針形で長さ5~7.5cm、鋭頭、基部も鋭形を示し多少左右不同である。上半部に深い牙歯があり、側脉は4~6対あって、最下のものは葉身基部近くから出て3出脉様を呈する。両 面ともに無毛で、葉柄の長さは1.3cmほどである。
 枝端の葉腋から小い密な集散花序を出し、花序軸は有毛である。花は小さく白色を呈する。がくの筒部は円筒形で、花冠の筒部はがく筒部と同長またはそれより短い。
 心材は褐色を呈し、放射断面で装飾的な斑模様が出る。  
22.Cordia macleodii HOOKER FIL.et THOMSON
 Cordia macleodii HOOKER FIL.et THOMSONはインド中部産で、インドでdhengan、dhaiman、godela、pedda battaraなどという。
 落葉高木で、樹皮は灰色を皇し、コルク質で軟い。小枝に灰色または淡褐色の星状綿毛を密布する。葉は互生するがときにやや対生状となり、心臓形で長さ12.5~17.5cmである。葉身の基部近くから3~5脉を出し、上面は隆起した 盤状体があってざらつき、下面に灰色または淡褐色の星状軟毛を密布する。葉柄の長さは5~7.5cmである。
 側生の短柄あるいはほとんど無柄の集散花序を出し、花を頭状様につける。がくは倒円錐形で長さ13mm、明瞭な隆条と溝があり、灰色または淡褐 色の星状軟毛を密布する。花冠の筒部はがくと同長またはそれより短く、裂片はへら形で開出または反捲する。石果は長さ1.3~1.7cmで鋭頭、食べられない。
 散孔材、心材は淡褐色、紅褐色から濃褐色を呈し、暗色の縞が出る。道管は単独および各 方向あるいは団塊状に2~6個が接続し、分布数は9~10/mm2である。単独道管の断面形は円形などで、道管の径は0.05~0.29mmを示す。せん孔板は水平またはやや傾斜し、単せん孔をもつ。チロースが著しく多い。材の基礎組織を形成する真正木繊維また は繊維状仮道管の径は0.01~0.02mm、壁厚は0.005~0.008mmである。
 軸方向柔組織は量が多く、周囲柔組織は連合翼状柔組織に発達するものがあり、さらに道管を包含する帯状柔組織に移行する。帯状柔組織とみられるものは不規則な輪廓を呈しまた分 断する。放射方向に4~22細胞層まであり、出現間隔は繊維の4~20細胞層または以上となる。柔細胞の径は0.015~0.06mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は5~8細胞幅、40細胞高までまたは以上となる。その構成は異性で、鞘細胞は放射組織の 外廓を完全に包囲しない。軸方向の両端単列部1~2層と鞘細胞は直立細胞、方形細胞または丈が高く放射方向の長さが短い大型の平伏細胞の層、他は通常の小型の平伏細胞の層からなる。大型細胞中には菱形の結晶が存在する。
 材の気乾比重に0.64~1. 00の記載があり、やや重硬ないし重硬である。材面が装飾的なものは家具、キャビネット、額縁などの工芸品、釣竿その他に賞用され、また器具、農機具などにも用いられる。  
23.Cordia octandra A.DE CANDOLLE
 Cordia octandra A.DE CANDOLLE(異名Cordia serrata ROXBURGH)はインドのトラバンコール産の高木である。全株ほとんど無毛で、葉は卵形、長さ7.5~15cm、鋭尖頭を示す。多少鋸歯があり、葉柄の長さは1.3~2.5cmである。花は大きく白色を呈する。がくは円筒状鐘形で、花冠の筒部はがくより長く、7 ~9個の裂片がある。雄ずいは通常8個ある。材は淡褐色を呈し、気乾比重は0.38で軽軟である。  
24.Cordia perrottetii WIGHT
 Cordia perrottetii WIGHTはインドのデカン地方に生じ、Cordia rothii ROEMER et SCHULTESにきわめて近似し、あるいは同種でないかとも考えられている。
 小高木で、葉はほとんど対生、ときに互生して簇出する。楕円状長楕円形などである。花は白色を呈し、花冠筒部はがくと同長またはそれより短い。  
25.Cordia vestita HOOKER FIL.et THOMSON
 Cordia vestita HOOKER FIL.et THOMSONはインドのヒマラヤ山麓地域産で、インドでkumbi、ajanta、bairula、latoraなどという。
 落葉小高木で、樹皮は暗灰色を呈し、年数を経ると大きい鱗片になって剥げる。葉は互生し、卵形などで大きく、基部は楔形ないし円形で心形を示さな い。上面に隆起した盤状体があってざらつき、下面に細綿毛を布く。花は片側生の総状花序につき、これが複成して円錐状となる。花は小さく白色を呈し、がくは棍棒状で長さ13mm、隆条と溝がある。花冠筒部はがくと同長またはそれより短い。石果は長 さ1.3~1.6cmである。
 材の気乾比重に0.83~0.85の記載があり重硬である。家具、器具、車両、井桁などの用途がある。果実は食べられる。  
26.Cordia oblongifolia THWAITES
 Cordia oblongifolia THWAITESはスリランカ固有の低木である。  
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