v2.1

平井信二先生の樹木、木材研究

ハリエンジュ属の樹木(その1)
1.ハリエンジュ属
 ハリエンジュ属(ニセアカシア属)Robiniaはマメ科Leguminosaeマメ亜科(ソラマメ亜科)Subfam.Papilionoideae(異名Subfam.Faboideae)、またはマメ科の3亜科をそれぞれ科に独立させた場合のマメ科(ソラマメ科)Papilionaceae(異名Fabaceae) に属する。約20種がアメリカとメキシコに自然に分布している。
 英名はlocust、独名はRobinie、仏名はrobinier、中国名は刺槐、洋槐という。
 落葉の高木または低木で、小枝には通常托葉の変形した刺があり、また腺毛をもつものがある。頂芽を欠き、冬芽は裸出している。葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は対生し、小托葉をもつ。
 雌雄同株で、腋生の総状花序に白色、淡紅色などの両性蝶形花をつける。がくは鐘形で、2唇となり上唇は2、下唇は3個の小さい裂片となる。花冠の旗弁は1個、翼弁は2個、竜骨弁は2個で下側で合着し、後2者に長い爪状部がある。雄ずい10個であるが 、上端の1個と、これとは離生し、互いに中間で合着した他の9個との2体雄ずいである。葯は2室で縦裂する。雌ずいは1個で、子房は有柄、中に多数の胚珠を含む。花柱は糸状で柱頭は小さい。果実は豆果で線状長楕円形など、扁平で上縁に狭い翼をつけ る。2弁になって裂開し、数個の種子を含む。
 この属ではハリエンジュRobinia pseudoacacia LINNAEUSが最も普通で、高木になり、世界中の温帯、暖帯で多く植栽されてよく知られており、材の利用もこの種に限られるので、材の組織、性質と利用はハリエンジュの項で記す。その他の諸種は低木性のものが多い。花が淡紅色などで美しく、観賞用 として植栽される。  
2.ハリエンジュの分布と名称
 ハリエンジュRobinia pseudoacacia LINNAEUS(異名Pseudoacacia odorata MOENCH)はアメリカ東部・中部原産であるが、世界中の温帯、暖帯で広く植栽され、また野生化している処も多い。
 この樹をわが国ではアカシアと通称していることが多いが、本当のAcaciaは同じマメ科であるが、オーストラリア、アフリカ、アジア西部の熱帯、亜熱帯、暖帯に多い黄花のもので、わが国では暖地に植栽されてミモザmimosa(この呼び名も誤称)とい われているものである。
 札幌や大連のアカシア並木や、北原白秋の歌謡「この道」の「……アカシアの花が咲いている」や、多くの詩歌に出てくるアカシアはこのハリエンジュである。ハリエンジュは植物学書の標準的な和名で、林学関係などではニセアカシアといっている方 が多い。そのほかギゴウカン擬合歓または偽合歓)、イヌアカシアの名もあり、明治11年に導入されたものに明石屋樹という当字を用いたことがある。なお明治以前にも導入されたが育たず、明治8年に入ったものが初めて根づいたとされている。
 英名ではblack locustが標準的で、また単にlocust、yellow locust、white locust、green locust、red locust、post locust、honey locust、pea-flower locust、American locust、common locust、acacia、false acacia(イギリスでいう)、bastard acacia、silver chainなど数多くある。独名はgemeine Robinie、Robinie、Akazie、falsche Akazie、Scheinakazie、Schotendorn、gemeiner Schotendorn、virginischer Schotendornなど、仏名はfaux- acacia、acacia、robinierなど、中国名は刺槐、洋槐、徳国槐(青島で)などという。  
3.ハリエンジュの形態
 高さ25mまで、直径90cm~1.2mまでになる落葉高木で、土壌の深い肥沃地で旺盛な生長を示すが、また他樹の生育が困難な瘠地でもよく育つ。樹幹の形は一般に枝の分岐や曲がりがあってあまり良くない。樹皮は褐色などで縦の割れ目が入る。小枝と葉 柄に初め細軟毛を布き、後にほとんど無毛となる。葉のつけもとにつく托葉はふつう1対の長さ1~1.5cmの刺に変化している。
 葉は互生する奇数羽状複葉で長さ12~25cmである。小葉は7~19個で楕円形または卵形、長さ2~5cm、円頭などで先端は少し凹んだり、微凸になったりする。基部は円形など、全縁、初め細軟毛があるが、後にほとんど無毛となる。長さ2~4mmの小葉 柄をもち、葉軸への着部に1対の針状の小托葉がある。
 5~6月に開花し、腋生で下垂する長さ10~20cmの総状花序に白色の花を密につけ芳香を放つ。花梗の長さは7~8mmである。花は長さ1.5~2.5cmで、がくは上唇が切形に近いものから広く凹んでいるものがあり、下唇には3個の鋭頭の牙歯があり、微細 毛を布く。花冠の旗弁はおおよそ円形に近く基部に黄班がある。翼弁は2個、竜骨弁2個は前縁で合着する。雄ずい10個のうち上の1個は離生し、9個は中部まで合着する。雌ずいは1個で子房は無毛である。
 豆果は線形、楕円形などでときに鎌形に曲がり、長さ5~10cm、扁平、褐色となって無毛である。
 種子3~10個を含み、腎形などで長さ5~6mm、扁平で紫褐色を呈する。  
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る