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平井信二先生の樹木、木材研究

ナンキョクブナ属の樹木
15.Nothofagus perryi VAN STEENIS
 Nothofagus perryi VAN STEENISはパプア・ニューギニアに生じ、場所によっては豊富であり、この地域の重要な材の一つである。英名をNew Guinea beech、Papua New Guinea beechという。
 高さ40mまで、直径1.6mまでになる中~大高木、通常板根をもつ。葉は卵状長楕円形で長さ4.5~11cm、幅2~4.5cm、先端に向って浅い鈍鋸歯がある。中肋の2/3までまたはほとんど先端まで隆条が現れる。側脉は6~8対、葉柄の長さは4~6m m、托葉の長さは7mmほどである。
 雄花は長さ4~12mmの花序柄の上に3個ずつがつく。果実の殻斗は長さ10~15mm、幅11~18mm3層があり、長さ15~25mmの柄につく。堅果は卵形で長さ5~8mmである。
 散孔材。辺材は白色、心材は淡紅褐色から紅褐色を呈する。材の組織では、道管にら せん肥厚が見られないこと、軸方向柔組織のうち、ターミナル柔組織は放射方向に2~5細胞層であることなどがあげられている。
 材の気乾比重に0.82の記載がある。心材の耐朽性は中位ないしやや高い。一般構造物、建築構造材、フローリングを含む建 築内装・造作材、家具、器具その他に用いられる。樹は行道樹、庭園樹に植栽される。  
16.Nothofagus pseudoresinosa VAN STEENIS
 Nothofagus pseudoresinosa VAN STEENISはパプア・ニューギニアに生ずる。高さ45mまで、直径はときに1mを越える大高木で、ときに樹幹に短い突起条をもつものがある。若枝と葉の下面に蝋質または樹脂質の分泌物を生ずる。葉は楕円形などで長さ2.5~9cm、幅1.2~5cm、全縁、中肋の 半長までに隆条がある。側脉は8~9対、葉柄の長さは8~10mm、托葉は楕円形で長さ4~6mmを呈する。
 雄花は単出する。果実の殻斗は楕円形ないし倒卵状長楕円形で長さ5~7mm、1~2層からなり、無柄である。堅果は卵形で長さ7~8mmある。材はN ew Guinea beechとして利用される。  
17.Nothofagus pullei VAN STEENIS
 Nothofagus pullei VAN STEENIS(異名Nothofagus cornuta VAN STEENIS)はニューギニアに生ずる。高さ50mまで、直径1.8mまでになる大高木である。葉は広楕円形から楕円形で長さ1~4.5cm、幅0.7~2.8cm、全縁、中肋の約半長までに隆条があり、側脉は5~8対ある。葉柄の長さは1~3mm、托葉は楕円形を呈し長さ 4~5mm、遅くなって脱落する。雄花も雌花も単出する。果実の殻斗は長さ2.5~5mm、幅2mmで単層のみであるが、しばしば先端で細裂し、無柄または長さlmmの柄につく。堅果は鈍頭の球形ないし楕円形で長さ5~6mmである。
 材はNew Guinea beechの主要な供給源の一つで、一般構造物、建築、家具、器具、土木材その他の用途があり、地方的には橋梁などによく用いられている。樹は行道樹、庭園樹に植栽される。  
18.Nothofagus resinosa VAN STEENIS
 Nothofagus resinosa VAN STEENISはニューギニア産で、インドネシア(イリアン・ジャヤ)名をgaruwaという。
 高さ50mまで、直径1.05mまでになる大高木で、樹皮は灰色を呈し鱗片化する。若枝と葉下面に蝋質または樹脂質の分泌物を生ずる。葉は楕円形から広楕円形で長さ4~10cm、幅2~5cm、縁は先端に向って細かい波状をなし、中肋は少くとも半長までは隆 条がある。側脉は8~10対、葉柄の長さは5~10mm、托葉は卵形から楕円形で長さ5mmである。
 雄花は単出しほとんど無柄、雌花も単出する。果実に殻斗が欠如しており、堅果は広楕円形で長さ9~10mmである。
 材はNew Guinea beechとして利用される。  
19.Nothofagus rubra VAN STEENIS
 Nothofagus rubra VAN STEENIS(異名Nothofagus bernhardii VAN STEENIS、Nothofagus decipiens VAN STEENIS、Nothofagus dura VAN STEENIS、Nothofagus eymae VAN STEENIS)はニューギニア本島および西に近隣のダントルカストー諸島に生じ、インドネシア(イリアン・ジャヤ)名でdiri、snokko、pemmemという。
 高さ45mまで、直径1.2mまでになる大高木で、樹皮は灰色から暗褐色を呈し、縦の割れ目が入って鱗片化する。葉は卵状長楕円形ないし楕円形で長さ2.5~9.5cm、幅1.5~4.5cm、全縁、中肋の半長以上に隆条が出て、側脉は5~7対ある。葉柄の長さは2 ~5mm、托葉は楕円形から長楕円形で長さ4~9mmである。
 雄花はやや無柄で3個ずつが1花序につく。雌花は単出する。果実の殻斗は変化があり、長さ7~10mm、幅7~14mmで2~3層からなり、無柄または長さ7mmまでの柄につく。堅果は球形ないし広卵形で径は4~6mmである。
 材の気乾比重に0.97の記載がある。材はNew Guinea beechの供給源の一つである。  
20.Nothofagus starkenborghii VAN STEENIS
 Nothofagus starkenborghii VAN STEENISはニューギニア、ニューブリテンに産し、石灰岩地に生ずる。インドネシア(イリアン・ジャヤ)でseneko、パプア・ニューギニア地域でkatulaという。
 高さ45mまで、直径lmまでになる常緑大高木で、ときに凸出した板根がある。樹皮は淡灰褐 色を呈し、薄い片または大きい鱗片になって剥がれる。葉は楕円形まれに倒卵形で長さ3~8cm、幅1.2~3.5cm、微凹頭、基部は浅心形を示す。全縁で、中肋は上面で溝があるが隆条は出ない。側脉は6~10対ある。葉柄の長さは5~10mm、托葉は楕円形から 広楕円形で長さ4~7mm、鋭頭である。
 雄花は短柄があって3個ずつが1花序に団塊状につき、雌花も1花序に3個ずつがつく。果実の殻斗は球形ないし倒卵形で長さ11~15mmである。
 材はNew Guinea beechとして利用され、家屋の柱、橋梁の敷板、柵柱などに用いられる。  
21.その他のニューギニア産のナンキョクブナ属の樹木
 ニユーギニアにはなお次の種類その他が知られている。  
 (1)Nothofagus crenata VAN STEENIS
 (2)Nothofagus nuda VAN STEENIS:稀産する種類で保護を要するとされている。
 (3)Nothofagus stylosa VAN STEENIS
 (4)Nothofagus womersleyii VAN STEENIS
22.ニューカレドニア産のナンキョクブナ属の樹木
 ニューカレドエアには次の種類が知られている。
 (1)Nothofagus aequilateralis VAN STEENIS
  (2)Nothofagus balansae VAN STEENIS
  (3)Nothofagus baumanniae VAN STEENIS
  (4)Nothofagus codonandra STEENIS
  (5)Nothofagus discoidea VAN STEENIS
23.Nothofagus apiculata COLENSO
 Nothofagus apiculata COLENSOはニュージーランドに生ずる。高さ10mまでの常緑小高木で、若枝には軟毛を布く。葉は長卵形ないし楕円形で長さ1.8~2.5cm、小尖頭、基部楔形を示す。全縁または不規則な少数の鈍鋸歯がある。側脉は不明瞭で、無毛、有柄である。堅果は有毛 で、2~3個の翼をもつ。  
24.Nothofagus cliffortioides OERSTED
 Nothofagus cliffortioides OERSTEDはニュージーランド南島に生じ、英名をmountain beech、cliffortia-like beech、現地名をtawhairaurikiという。
 Nothofagus solandri OERSTED(black beech)に近似の種類で、高さ5~10mの常緑小高木、まれにこれより高くなる。枝を下方から出して拡がり、若枝に細軟毛がある。葉は長卵形ないし円形で長さ0.4~1.6cm、鋭頭、まれに鈍頭、基部は円形から心形を呈する。厚い革質で、全縁、縁は厚目 になってしばしば下面に巻きこむ。上面は無毛、下面はやや密に自色毛を布く。短い葉柄をもつ。果実の殻斗は長さ6~7mmである。
 材はNothofagus solandri OERSTEDと同様であるが、耐朽性は低い。  
25.Nothofagus fusca OERSTEDの概要
 Nothofagus fusca OERSTED(異名Fagus fusca HOOKER FIL)はニユージーランド産で、英名をred beech、tooth-leaved beech、birch、現地をtawhairaunui、towai、hutu tawhaiという。
 高さ35mまで、直径2~3mまでになる常緑高木であるが、早春に新葉が出るとすぐに旧葉が落ちる。樹形は良く、樹幹は円柱状で通直である。若令木の樹皮は白色に近く平滑であるが、年を経ると灰色から褐色となり、割れ目が入って縦に 長い裂片となりややささくれ立ってくる。小枝はジグザグ状になり細軟毛をもつ。葉は広卵形から円形に近いものがあり、長さ1.5~4cm、幅1.5~2.5cm、鋭頭ときに円頭、基部は楔形から切形を示す。薄い革質で、疎らに深い鋭鋸歯があり、側脉は3~4対 ある。縁毛があるほかは無毛で、下面の最下脉腋にドマティア(domatia、寄生小虫の住居)をもつ。葉柄の長さは2~4mmで細軟毛を生ずる。
 雄花序は小校に1~8個がつき、長さ4mmの柄をもつ。各花序には通常1~3、しばしば5個の花がつき、葯は長さ3mmで橙色ないし紅色を呈する。雌花序は無柄で腋生し、3個の花からなり、長さは約3mmである。殻斗は4個の裂片からなり、大きい歯裂がある 4層ほどでできていて、粘質毛をもち、中に堅果3個を含む。  
26.Nothofagus fusca OERSTEDの材の組織、性質と利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は淡褐色などを呈し幅3~7.5cm、心材は褐色または暗褐色を呈する。生長輪は存在するが、不明陳である。
 道管は単独および2~5個が放射方向に、ときに7個までが団塊状に接続し、分布数は40~100/mm2で ある。単独道管の断面形は楕円形ないし長楕円形を呈し、道管の径は0.03~0.13mmを示す。せん孔板は水平ないし傾斜し、単せん孔をもつ。道管と放射組織辺縁の大型綱胞との間の半縁壁孔対または単壁子対は円形から横の線状長精円形までを呈し、階段 状などに配列する。チロースが見られる。
 材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊維状仮道管にときに少数の隔壁をもつものがある。径は0.01~0.2mm、壁厚は0.004~0.005mmである。
 軸方向柔組織はきわめて少なく、道管周辺も含めて単独で散在 する柔細胞と、放射方向に1~2細胞層のターミナル柔組織とがある。柔細胞の径は0.01~0.03mm、壁厚は0.001~0.002mmほどである。
 放射組織は1~2細胞幅、2~20細胞高であるが、ときに2細胞幅のもので、軸方向端部のほか2列部の中間にも1~7層の単列部があって丈が高いものがある。またまれに広放射組織が存在するとの報告がある。構成は異性で、単列部の大部分は丈が低い 直立細胞、方形細胞またはこれらとほぼ同高の大型の平伏細胞の層からなり、他は丈が低い通常の平伏細胞の層からなっている。細胞内には着色した内容物があり、またシリカを含むものがあってこのものは晩材部に偏在する傾向がある。
 材の気乾比重は0.64~0.86、生材から気乾までの収縮率は接線方向7.1%、放射方向3.3%の記載がある。強度的数値の例では含水率12%、比重0.76のもので、縦圧縮強さ386kg/cm2、曲げ強さ800kg/cm2、曲げヤング係数13.5×10 4kg/cm2、せん断強さ120~137kg/cm2がある。
 製材、切削加工などは比較的容易である。心材は耐朽性があるとされる。材は一般構造物、建築構造材・造作材、家具、工具の柄などの器具材、枕木・杭・柵柱・橋梁などの土木材その他に用いられる。  
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