v1.1

平井信二先生の樹木、木材研究

ヒメツバキ属の樹木(その2)
4.イジュを含めたSchima wallichii KORTHALS subsp.noronhae BLOEMBERGEN全体について記載する。散孔材。辺心材の境界は不明瞭で淡黄褐色の辺材から褐色~紅褐色の心材に徐々に移行する。琉球産のイジュについては年輪がほぼ認められるが台湾以南のものでは生長輪はふつう不明瞭である。木理は通直および交 走するものがあり肌目はやや精~精。道管はおもに単独、ときに2~3個が斜方向および接線方向に接続し分布数25~80/m㎡。断面形はおもに楕円形で輪郭が角ばっており、階段せん孔で階段数10~25、側壁の有縁壁孔も階段状をあらわす傾向を示し尾状部 にらせん肥厚がある。チロースはふつう見られない。材の基礎組織を形成しているのは繊維状仮道管で長さ1.5~3.2mm、径0.02~0.05mm、壁厚0.004~0.010mmである。軸方向柔組織はきわめて少なく散在する柔細胞のみである。径は0.02~0.04mm、壁厚0.0 01~0.002mm。ときに多室結晶細胞があり結晶は5~20個がほぼ鎖状に連なる。放射組織はほとんど単列と2列でときに4細胞幅までのものがある。1~30細胞高。構成は異性で単列のものはおおむね直立細胞ないし方形細胞からなり、多列のものは上下両端1 ~4層、ときに中間の数層が直立または方形細胞、他は平状細胞からなるが、また両種細胞の移行形態のものが見られる。細胞内には濃色の物質を含んでいる。まれに結晶があるがシリカは見られない。
 
5.イジュの材の性質と利用
 ヒメツバキ類全体の気乾比重の値としては0.53~0.85があげられているが、Schima wallichii KORTHALS subsp.norohae BLOEMBERGENに該当すると思われるのを拾ってみると0.56~0.67、0.60~0.73、0.60~0.75、0.65~0.80、0.67、0.69、0.71、0.72、0.74、がありほぼ0.70程度のようである。材質数値を求めた例をあげると台湾産木荷、気乾比重0.71のもので生材から全乾 までの全収縮率は接線方向6.7%、放射方向4.5%、体積10.7%、縦圧縮強さ441kg/c㎡、横圧縮強さ113kg/c㎡、縦引張強さ875kg/c㎡、横引張強さ59kg/c㎡、曲げ強さ1062kg/c㎡、曲げ比例限度838kg/c㎡、曲げヤング係数14.0×10(4)kg/c㎡、せん断強さ12 6kg/c㎡、割裂抵抗118kg/cm、ブリネル硬さは横断面3.75kg/m㎡、同じく台湾産の気乾比重0.67のもので曲げ強さ1008kg/c㎡、曲げヤング係数10.6×10(4)・kg/c㎡、衝撃曲げ吸収エネルギー0.63kg・m/c㎡、マレー産、気乾比重0.62のもので全収縮率は接線 方向10.1%、放射方向4.5%、縦圧縮強さ470kg/c㎡、曲げ強さ893kg/c㎡、曲げヤング係数11.2×10(4)・kg/c㎡、せん断強さ119~133kg/c㎡、インドネシア産、気乾比重0.69のもので縦圧縮強さ449kg/c㎡、曲げ強さ859kg/c㎡、曲げヤング係数12.5×10(4) ・kg/c㎡、せん断強さ66~77kg/c㎡などがある。
 材の科学的組成については台湾産木荷で求められた次の例がある。セルロース56.3%、αセルロース39.5%、ベントザン14.4%、リグニン28.5%、冷水抽出率2.2%、温水抽出物2.7%、アルコール・ベンゾール抽出物2.7%、1%NaOH抽出物18.6%、灰分0.5 %。
 加工的性質としては一般に材は重さ硬さが中庸ないしやや重硬で、製材および切削加工にあまり困難はなく鉋削面には光沢がある。乾燥は遅くないが、人工乾燥の方法を少し誤まると反曲やコラップスが出やすい。耐蟻性は高い方が、耐朽性は中庸程度 で屋外使用ではやや劣るとされている。
 用途は柱などの建築構造材および壁板・床板・階段などの造作材、車両・船舶材、土木材、器具材、とくに農機具・漆器木地・紡績シャットルその他、砂糖などの樽材、彫刻などの工芸材、薪炭材その他であるが、台湾およびインドネシアでは一部単合 板およびパルプに使われている。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る