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平井信二先生の樹木、木材研究

タイワンツバキ属の樹木
1.タイワンツバキ属の概要
 タイワンツバキGordoniaツバキ科(Theaceae)の常緑、ときに落葉の高木でまた低木状のものもある。ツバキCamelliaに近い。おもにアジア南部および東南部の熱帯、亜熱帯の産で20~60種が知られており、そのうち2種が北米東南部の産である 。さらにごく近縁でおもに熱帯アメリカ産のbloodwoodLaplaceaをこの属に含めると20~30種がふえることになる。樹皮はおおよそ灰色~褐色でフレーク状の裂片になって新しく剥げた部分と古い部分とが淡色と暗色の斑紋になっているものが多い。と きに板根が出る。葉は互生する革質の単葉で長楕円形、倒卵形など、全縁またはわずかに鋸歯があり、ふつう短い葉柄をもつ。花は葉腋に1個、ときに枝端に2~3個をつけやや大きく通常白色を呈ししばしば無梗。苞は2~4個またはそれ以上あり、萼片は5 個が覆瓦状に配列して大小不同で苞との区別がつきにくい。花弁は5個あって通常基部で合着する。雄ずいは多数で花糸の下部は短い筒状に全部が合着するかまたは5群になって束生し、これらの基部は花弁に付着する。葯は丁字着である。雌ずいは1個で 子房上位、多くは5室、まれに4~3室で各室に4~8個の卵子を含む。花柱は太い1本であるがまれに3本にわかれる。柱頭部分は単一または短く5裂する。花後にできるさく(蒴)果は長楕円状円筒形または卵形などで木質、上端から縦に5片、ときに4~3片に 胞背裂開し中軸を残す。萼は宿存性。種子は各室に数個あり偏平な斜卵形などで片側から上辺にやや長い翼を具える。
 材は散孔材で、辺心材の境界はふつう明確でない。灰褐色、淡紅色、紅褐色などで肌目はやや精または精、道管の径はやや小。材の気乾比重の値に0.47~0.82が得られているが、通常0.65~0.80の範囲のやや重硬な程度のものが多いようである。切削加 工などは通常容易で仕上げは良好、耐朽性はふつう中庸程度以下である。材が大きくなく量的にまとまって出材することが少ないので市場材としては重要でない。建築、家具、器具などの一般的な用途に地方的に使われている程度と思われる。
2.タイワンツバキ
 タイワンツバキの学名はGordonia axillaris DIETRICHで異名にCamellia axillaris ROXBURGH ex KER-GAWLER、Gordonia anomala SPRENGEL、Gordonia shimadae OHWIがあり、Gordonia tagawae OHWI(和名コウシュンツバキ)も多分同一と思われる。支那中南部(浙江、四川、広東、広西、雲南、海南島など)、台湾、香港、インドシナに分布し、台湾では全域のおもに低地から海抜2,000mまでの処に生ずる。別名ナンバンツバキがあり、台湾・中 国名は大頭茶である。
 常緑の小~中高木で高さ12~15m、直径50~60cmになり、樹皮は平滑に近く灰白色と灰褐色の斑紋をなす。葉は厚い革質で長楕円形、倒皮針形など、長さ8~12cm、幅2~3.5cm、円頭、鈍脚で全縁または上半部に波状の鈍鋸歯がある。短い葉柄をもつ。花 は上部葉腋に単生または枝端に2~3花をつけほとんど無梗。台湾では冬に開花するが南方では年中花がつく。花は1日で凋落する。苞が多数つき萼片はほぼ5個、花径7~9cmで花弁は5個、先端がやや凹み辺縁がちぢれ、白色で葯の黄色と鮮かな対比をなす 。雄ずいは多数、雌ずいは1個で子房5室、花柱は単一で柱頭が不明瞭に3裂する。さく果は長楕円形で長さ2~3cm、上半部に鈍い5稜角がありふつう5片に裂開する。種子は偏平で長さ約1.5cm、長い翼を具える。
 材は淡紅色で、緻密、気乾比重0.76の記載があり硬く靭性がある。建築、薪炭のほか砂糖搾りの棟木などの用途もあり、樹皮は山地民が狩猟用の網の染料に使うという。花が美しいのでむしろ庭木に植栽されて知られている。
3.マレー半島個有のタイワンツバキ属の樹木
(1)Gordonia singaporeana WALLICH ex RID.LEY:大きいものは高さ40mまでになる常緑高木で花部以外は無毛である。斑紋状の樹肌は林間でよく目立つ。葉は薄い革質で長楕円状皮針形など、長さ7~15cm、短尖頭またはやや円頭で上部2/3に細鈍鋸歯があり基部は狭くなり葉柄はきわめて短いかと きに無柄あるいは有翼状をなす。花は夕方開花して翌朝には雄ずいをつけたままで落花する。花梗の長さ約1cm。花径4~5cm、萼片に密に絹毛を布き子房にも短毛がある。さく果は卵形で長さ2.5~4cm、陵角がある。種子は長さ約1.5cmで長さ約1.3cmの翼を つける。
  (2)Gordonia concentricicatrix BURKILL:マレー名にsamak pulut、kelat merahがある。高さ35mまでになる。樹皮は灰色で老木ではしばしば不規則な同心環の剥離紋様を示す。花部以外は無毛。葉は薄い革質で倒卵形、楕円状皮針形など、長さ8~17cm、短尖頭または鈍頭、鈍鋸歯があり葉柄の長さは1~1.5cmである。花は帯黄 色で径2~4.5cm、花梗の長さ1~1.5cm、萼片と花弁の外面に絹毛があり子房は球形に近く密毛を生ずる。さく果は卵形で長さ2.5~4cm。種子の長さ約2cmである。材は建築、樹皮は魚網と布の染料に用いられる。
  (3)Gordonia multinervis KING:マレー名にsamak pulutがある。高さ30mまでになり、樹皮は橙褐色で大きいパッチになって剥げる。花部以外は無毛。葉は薄い革質で倒卵形、下方に次第に狭まり長さ14~20cm、円頭または短凸頭、鈍鋸歯縁または全縁、側脉の数が多くときに25対以上、短い葉柄がある。
 花径は2.5~3cmで花梗の長さ0.5~1cm、萼片の外面に絹毛を布き子房にも短毛がある。さく果は卵形で長さ3~4cmある。
  (4)Gordonia imbricata KING:高さ15mまでの低木または小高木で樹皮は褐色、密に割れが入る。花部以外は無毛。葉は厚い革質で葉形に変化が多く卵状長楕円形、倒皮針形など、長さ4~17cm、鈍頭または円頭、全縁またはそれに近く下面はしばしば帯白色を呈する。葉柄の長さ は0.2~1cm。花径は2~3cmでほとんど無梗、多数の苞は萼片に移行し萼片外面に細軟毛がある。花弁は淡黄色でその外面と子房に細軟毛を布く。さく果は楕円形で長さ4~5cm、5稜があって細軟毛がある。種子の長さは約1.9cmである。
  (5)Gordonia penangensis RIDLEY:高さ9~13mの小高木。樹皮は褐色で平滑か密に浅い割れが入る。小枝に細軟毛を布く。葉は薄い革質で楕円状皮針形など、長さ6~10cm、長い鋭尖頭でときに有尾状となる。細鋸歯縁または全縁、葉柄の長さは約0.5cm。花径2~3cmでやや無梗、萼 片および花弁の外面、太くて5裂する花柱、子房に細軟毛を布き雄ずいの数はきわめて多い。さく果は長さ3.5~5cmで萼片を宿存しない。
  (6)Gordonia hirtella RIDLEY:高木。小枝に圧毛がある。葉は薄い革質で楕円状皮針形など、長さ9~14cm、鋭尖頭、鈍鋸歯縁、下面に圧毛がある。葉柄の長さ0.5~0.8cm。花径は1.5~2cmで乳白色、花梗の長さ約0.2cm、萼片と花弁の外面に絹毛を布く。さく果は楕円形で長さ約 2cm、外面に短毛がある。
  (7)Gordonia maingayi DYER:高さ18mまでの小高木。樹皮は褐色でほぼ平滑。小枝に細軟毛を布く。葉は革質で倒卵形または倒皮針形、長さ6~8cm、短い鈍い凸頭をなし上部2/3に不明瞭な鋸歯がある。側脉は少なく6対ほど、葉柄の長さ0.8~1cm。花径は1.5~2cmでやや無梗、萼 片・花弁の外面と子房に絹毛がある。さく果は卵形で長さ2.5~3cm。
  (8)Gordonia scortechinii KING:高木。小枝はわずかに有毛。葉は革質で楕円形ないし長楕円形、長さ5~7.5cm、鈍頭または浅い凹頭、ほぼ全縁で葉柄の長さ0.5~0.8cmある。花径1.5~1.8cmで萼片と花弁の外面および子房に細軟毛がある。花柱が3本にほとんど離生することと子房 が3室であることが特異で、さく果は未知であるが、多分3片に裂開すると考えられている。
  (9)Gordonia taipingensis BURKILL:高さ20mまでの高木。小枝に細軟毛がある。葉は楕円形ないし楕円状長楕円形で長さ10~18cm、鋭尖頭、中部以上に疎らな鈍鋸歯がある。葉柄の長さ1.5~2cm。花径は5~6cmで黄白色、花梗の長さ約1cm、萼片に金黄色の密毛があり、花弁の外面、 子房にも絹毛がある。
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