v1.1

平井信二先生の樹木、木材研究

ビヌアン(その1)
1.ビヌアン(エリマ)の名称と分布
 ビヌアンの学名は、Octomeles sumatrana MIQUELで、ダティスカ科(ナギナタソウ科)Datiscaceaeに属し、この属はビヌアン1種のみからなりたっている。スマトラから西イリアンにわたるインドネシア(ジャバ、小スンダ列島を除く)、サラワク、サバ、フィリピン、パプア・ニューギニア、ソ ロモン諸島にわたる広い地域に分布する。河流沿いなどの低地に多く、ときに二次林で群生する。生長がきわめて早く早成樹種として人工植栽される。
 インドネシア地域、ボルネオ北部ではbinuang、benuangなど、フィリピンではbinuang、barong、baluangなど、パプア・ニューギニア地域ではerima、illimo、asimaなど、ソロモンてはfote、poreなどの現地名がある。わが国ではかつてビヌアンとして 知られていたが、近年パプア・ニューギニア地域のものが合板原木として輸入されることが多くなったため、エリマの名の方がよく行きわたっている。
2.ビヌアンの形態
 きわめて大きいものは高さ70m、直径3.2mまでに至る大高木で、樹幹は円柱状で通直、枝はやや水平に出て樹冠は円く割合に小さい。枝下高25mに達するものがある。板根は一般に比較的小さいが、また大きいものもある。樹皮は灰白色~灰黄色でやや不 規則な裂け目を生して薄く剥げ落ちるが比較的平滑に近い。葉は互生し広卵形、広倒卵形などで大きく長さ12~30cm、幅6~23cm、急尖した鋭頭、基部は、心形、ふつう全縁でときに葉縁に鋸歯のあるものがある。下面有毛。葉脉はほとんど掌状を呈し中 助の側脉は5~10対、側脉の着点に腺瘤(domatia)がある。葉柄の長さは6~10cm、ときに30cmある。雌雄異株で花序は穂状になって垂れ下がり、雄花序の方が雌花序より長く、20~30cmとなる。雄花は径が約5mmで萼片は4~9個、花弁は5~8個または0、 雄ずいは5~8個ある。雌花も径が約5mmで萼片が合着して筒状になり、花弁と雄ずいはなく花柱5~8個が萼筒の縁について多汁質である。子房は1室。果実は樽形の朔(さく)果で長さ約1.2omあり紡錘形である。長さ約0.8mmの細かい種子が塊になって入っ ている。
3.ビヌアンの材の組織
 散孔材。辺材と心材の区画が不明瞭で一般に黄白色から淡黄褐色を示す。辺材相当部分の幅は広く、内部の心材と考えられる部分はときに濃色で淡紅褐色を帯びていることがある。生長輪は認められない。木理はふつう交走し肌目は粗い。材面に光沢が なく特別の味はないが、生材の時および水中貯木にされたものはときに甚しい悪臭を放つことがあるのがよく知られている。これは材中に含まれるカプロン酸などによるものと考えられている。ときに脆心材の著しいものが見られ、ある例では丸太直径の 1/3、材積の14%を占めるものがあることが報告され、この樹種の材の重要な欠点とされている。
 材の顕微鏡的構成要素の占有割合を測定した例をあげると道管13.1%、真正木繊維72.8%、軸方向柔組織5.9%、放射組織8.2%である。
 木口面で見ると道管はおおよそ均等に散在し単独のものが多く、ときに2~3個がおもに放射方向に接続する。分布数は比較的小さく2~8/mm2、断面は円形、広楕円形などで径は0.06~0.36mm、多くは0.2~0.25mmである。単せん孔でせん孔板は水平か僅か に傾斜する。接続する道管相互間に存在する有縁壁孔は交互配列をし径0.05~0.08mmで孔口はしばしば結合している。チロースはほとんど見られない。真正木繊維は材の基礎組織を形成し長さ1.7(1.2~2.3)mm、径0.02~0.07mm、壁厚0.002~0.005mmであ る。軸方向柔組織では0~4層の比較的薄い周囲柔組織が見られ、ときに不規則な翼状柔組織になるが、その場合は接線方向に4細胞までのび、管孔を外れて放射方向に1~8細胞層である。柔細胞の径は0.02~0.07mm、壁厚は0.001~0.0015mmである。基礎組 織中に散在する単独の柔細胞はほとんど見られない。放射組織は単列でときに一部2細胞幅になるものから、2~5細胞幅の多列のものがあるが、後者ことに4~5細胞幅のものが大部分である。軸方向には3~50細胞高である。その構成は異性で、単列のもの および多列のものの上下両端1~2層およびときに周辺の一部は直立細胞または方形細胞からなり、多列のものの他の大部分は平伏細胞からなっている。柔組織および放射組織中にはシリカは見られない。
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