v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

ビヌアン(その2)
4.ビヌアンの材の物理的性質
 ビヌアンエリマ)の材質については多くの報告がある。材は軽いないしきわめて軽く、気乾比重0.22~0.48の範囲の値の記載があり、平均的には0.35~0.40である。国立林業試験場がニューブリテン産のものについて行った材質試験の結果をあげる。
 気乾比重0.22~0.41のもので生材から気乾までの収縮率は接線方向3.4(2.4~6.1)%、放射方向2.0(0.9~3.9)%、軸方向0.03(0.02~0.05)%、含水率1%の変化に対する平均収縮率は接線方向0.24(0.21~0.28)%、放射方向0.15(0.13~0.15)%、軸方向 0.01%、気乾比重0.31~0.41のもので縦圧縮比例限度180(111~221)kg/cm2、縦圧縮強さ268(214~311)kg/cm2、縦圧縮ヤング係数8.2(5.8~10.4)×10(4)kg/cm2、放射方向の横圧縮比例限度14.4(12.7~16.0)kg/cm2、横圧縮ヤング係数0.45(0.41~0 .48)×10(4)kg/cm2、縦引張比例限度406(355~502)kg/cm2、縦引張強さ609(522~711)kg/cm2、縦引張ヤング係数7.9(5.9~9.1)×10(4)・kg/cm2、放射方向の横引張比例限度20.3(15.1~25.3)kg/cm2、横引張強さ49.2(47.5~52.8)kg/cm2、横引 張ヤング係数0.50(0.47×0.54)×10(4)・kg/cm2、曲げ比例限度298(233~366)kg/cm2、曲げ強さ478(366~551)kg/cm2、曲げヤング係数6.1(4.8~6.9)×10(4)・kg/cm2、せん断強さはまさ目面47(35~65)kg/cm2、板目面52(34~68)kg/cm2、衝撃 曲げ吸収エネルギー0.33(0.25~0.41)kg・m/cm2、ブリネル硬さは横断面2.8(2.2~3.6)kg/mm2、まさ目面0.5(0.4~0.7)kg/mm2、板目面0.7(0.5~0.9)kg/mm2である。また古野毅氏のセレベス島産材の結果によれば、気乾比重0.36~0.40のもので含 水率1%の変化に対する平均収縮率は繊維に直角方向0.20(0.19~0.21)%、繊維方向0.02(0.01~0.04)%、縦圧縮強さ385(336~424)kg/cm2、横圧縮比例限度39(34~44)kg/cm2、曲げ強さ577(392~651)kg/cm2、曲げヤング係数7.8(5.9~9.1)×10(4 )・kg/cm2、せん断強さ62(57~67)kg/cm2、衝撃曲げ吸収エネルギー0.22(0.17~0.25)kg・m/cm2、ブリネル硬さは横断面3.0(2.3~3.6)kg/mm2、縦断面0.7(0.5~0.9)kg/mm2である。以上の値は材の比重が小さいのに対応してそれぞれ低い値を示し ている。
5.ビヌアンの材の化学的性質
 ビヌアンの材の化学的組成について国立林業試験場がニューブリテン産材で求めた結果は次のようである。ホロセルロース63.2%、aセルロース57.7%、ペントザン7.7%、リグニン28.3%、熱水抽出物3.6%、アルコール・ベンゾール抽出物2.7%、灰分1.8%。
 また古野毅氏がセレベス産材について求めた例によるとホロセルロース54.3%、aセルロース46.6%、ペントザン11.6%、ガラクタン0.6%、リグニン34.8%、冷水抽出物1.5%、熱水抽出物5.4%、アルコール・ベンゾール抽出物2.1%、1%NaOH抽出物10.5%、灰分1.2 %である。
 パルプ製造適性は概して中庸程度と見られるが、樹そのものの生長がきわめて早いのでこれからのパルプ用造林樹種として有望なものの1つと考えられている。
6.ビヌアンの材の加工的性質と利用
 ビヌアン材の乾燥は通常生材含水率が高いため乾燥時間が比較的長くかかり、また表面割れ、狂い、コラップス、内部割れのような欠点が割合出やすい。厚さ2cm、まさ目板で仕上げ含水率10%までに低下させる人工乾燥スケジュールとして、初期乾球温 度50C、乾湿球温度差4C、終期乾燥温度75C、乾燥時間10~20日が提案されている。切削の手加工および機械加工は一般にともに容易であるが、比重に対応してみるとそれほど良好でない。鉋削でときにけば立ちが出るおそれがある。接着性では各種接着剤 による接着力は材の比重に相応した低い値を示すが、接着耐久性は酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤以外はほぼ良好である。塗装性はほぼ普通。釘の保持力は小さい。単板切削では軟材であるのにかかわらず裏割れの出現が多く剥き肌は中程度である。
 脆心材の存在が単板切削の際のチャックに対する大きな障害となる。合板への接着性はあまり良好でない。耐朽性は屋内使用では普通であるが屋外および接地条件ではきわめて腐朽しやすい。また丸太で置かれたものは変色の入るのが早く、アンブロシア の食害も普通に生じる。乾燥材では辺材相当部分はキクイムシの食害を受け、白蟻・海虫に対する抵抗性もきわめて低い。辺材部分の防腐処理は開槽法によってもきわめて容易であるが、心材部は浸透にやや抵抗があり圧力注入処理が必要とされる。パー ティクルボード、ハードボードに一応使用できると考えられるが、ハードボードの製造試験結果によれば、そのままでは材質が良好でなく付加処理が必要とされている。
 材の用途は合板の心板・裏板、包装材、マッチ軸木および箱、コンクリート型枠、器具材、低質の家具材とくにランバーコアー、軽構造材および建築の内部造作材、棺材などである。わが国にはパプア・ニューギニア地域から合板原木としてかなりの量 が輸入されている。現地ではカヌー、漁網の浮子、筏の浮木などに使われる。
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