v1.1

平井信二先生の樹木、木材研究

フシノハアワブキとその他の
1.フシノハアワブキの1群
 これまで記した我国産のアワブキSabiaceaeアワブキMeliosmaの樹木はすべて単葉の種類であるが、複葉のものについては地域別に3つにわけて考えられてきた。第1は山口県から対島、朝鮮南部、支那中部に分布するフシノハアワブキ(一名ヌルデ アワブキ)で学名にMeliosma oldhamii MIQUEL ex MAXIMOWICZがあてられる。
第2は奄美大島以南の琉球、台湾、フィリピンに分布するヤンバルアワブキ(一名リュウキュウアワブキ、テサソノキ、ハゼバアワブキ)で学名にMeliosma rhoifolia MAXIMOWICZまたはMeliosma oldhamii MIQUEL ex MAXIMOWICZ var.rhoifolia HATUSIMAがあてられる。
第3は利島以南の伊豆諸島に産するサクノキ(一名サクダモ)で学名にMeloisma hachcijoensis NAKAIまたはMeliosma oldhamic MIQUEL ex MAXIMOWICZ var.hachijoensis JOTANI et OHBAがあてられる。これらの分類学的取扱いは人によって違っているが、それぞれの区別点を明確にあげることが難しいのでここではすべて1種のみとして、標準和名フシノハアワブキで他は別名、学名はMeliosma oldhamii MIQUEL ex MAXIMOWICZで他は異名として扱っておく。台湾名は山猪肉、中国名は南京珂楠樹、羽葉泡花樹である。
2.フシノハアワブキの形態
 落葉または半常緑、ときに常緑の中高木で高さ15~20m、直径60cm、ときに1mに達するものがある。樹幹は直立し枝は太い。樹肌はほぼ平滑で褐色である。冬芽は裸芽で褐毛を密生する。葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉はふつう5~21個、ヤンバルア ワブキおよびサクノキとされるものでは11~25個あり葉柄を含めて長さ10~30cmになる。小葉は卵形から狭長楕円形にわたり長さ4~13cm、幅2~5cm、鋭頭または鋭尖頭、基部は楔形、サクノキとされるものではやや歪形、上半分に低い疎鋸歯があるかと きに全縁、下面脉上は有毛である。ほとんど無柄または短柄があり、葉の中軸、葉柄には黄褐色の毛を生ずる。
 6~8月に長さ・幅ともに20cmにもなる円錐花序を頂生ときに腋生し花序軸には褐色の短毛を布く。花の径は3~4mmで汚白色、萼片は4~5個、花弁5個のうち3個は大きい。完全雄ずい2個、仮雄ずい3個、雌ずいは1個で子房に密毛がある。石果はほぼ球形 で径は5mm、紅色から黒色に熟する。
3.フシノハアワブキの材の組織、性質と利用
 散孔材で辺心材の区別は不明瞭、淡紅色から紅褐色と呈する。年輪は認められる。横断面で見る道管孔の単独のものはきわめて少なく2~7個が塊状に接続してそれらが平等に分布する。分布数は15~30/m㎡で塊状に接続してものを1とみると5~10/m㎡で ある。単独のものの輪廓は歪円形で角ばっている。径は0.04~0.21㎜。単せん孔または階段せん孔で階段数は1~8である。基礎組織をなす真正木繊維は長さ0.5~1.9㎜、径0.02~0.06mm、壁厚0.003~0.005㎜。道管の周辺および年輪界近くで隔壁木繊維が 多く見られる。山林遍氏によれば年輪界にある数層は繊維状仮道管であるという。軸方向柔組織では0~1層の周囲柔組織と僅少の0~1層のターミナル柔組織があり散在する柔細胞はほとんど見られない。柔細胞の径は0.02~0.04㎜、壁厚はは0.001~0.002 ㎜である。放射組織は1~9細胞幅でときに広放射組織様を呈し3~70細胞高またはそれ以上である。構成は異性であるが大部分は平状細胞からなり、単列部および多列のものの周辺の1部に方形ないし直立細胞の層がある。
 材はヤンバルアワブキとされるものについて軽軟との記載例があるが、山林遍氏の報告に朝鮮産フシノハアワブキで気乾比重0.94を挙げている。値が高いのは試料が22年生という若木の材の故であろうか。用途は薪炭材のほか箱、小器具などがある。葉 は豚の飼料とされる。
4.アワブキ属の概要
 アワブキ属Meliosmaには約50~130種があるとされ多くはアジア東部および南部に、1部は西インド諸島、メキシコ南部から中米を経てアマゾン低地、ブラジル東部に至る熱帯アメリカに分布する。形態的な特徴はこれまで各種について記したことに示さ れているが、なお要点の二、三を摘記する。常緑または落葉の木本で冬芽は裸芽、葉は互生する単葉または奇数羽状複葉である。花は両性、まれに単性花の雑居性で頂生または腋生する円錐花序につく。花は小さく萼片および花弁は(3~)5個。花弁の外 側の3個は大きく内側の2個は小さい。雄ずいは(4~)5個でうち2個が完全雄ずいで小花弁に対生し他の3個が仮雄ずいで大花弁に対生する。雌ずいは1個で子房上位。石果は通常1個の核をもち種子1個を含む。材の組織で著しいのは道管に階段数の少ない 階段せん孔があり、ときに小孔を伴ってやや網状せん孔の形になりまた単せん孔を併存するものがあることと、隔壁木繊維をもつことである。木材としての有用性は一般に低い。
5.アジア産のアワブキ属の樹木
 (1)アリサンアワブキMeliosma callicarpaefolia HAYATA:一名ウスバアワブキ。台湾高地固有。台湾名:薄葉泡花樹。小高木、直径15cm、単葉。材は淡黄紅色で年輪は明瞭である。
 (2)Meliosma caneifolia FRANCHET:異名Meliosma myrianthum DIELS。支那一円。中国名:泡花樹。低木~小高木、単葉。
 ほかに支那各地にMeliosma pendens REHDER et WILSON垂枝泡花樹)ほか五十数種がある。
 (3)Meliosma simplicifolia ROXBURGH:インド、スリランカ、ネパール、バングラディシュ、ビルマ、ボルネオと分布が広い。小~中高木、単葉。材は紅褐色。
 (4)Meliosma pungens WALPERS:ヒマラヤ北西部産。小高木、単葉。
 (5)Meliosma dilleniaefolia BLUME:ヒマラヤ産。小高木、単葉。材は白色で均一、やや硬い。
 (6)Meliosma arnottiana WIGHT:インド、スリランカ産。大高木、複葉。
 (7)Meliosma sumatrana WALPERS:マレー、スマトラ、ボルネオ、ジャバ、セレベス、フィリピン産。小~中高木、複葉。
 (8)Meliosma lanceolata BLUME:タイ南部、マレー、スマトラ、ボルネオ、ジャバ産。小~中高木、複葉。
 
6.新大陸のアワブキ属の樹木
 Meliosma alba WALPERS:メキシコ東部産。メキシコ名:ayon、paloblanco。高さ15m、直径10cmになる、単葉。材の気乾比重は0.61でその外観はsoft maple Acer rubrum LINNAEUSに似ている。現地では家具材として評価されている。
 このほか各地産にMeliosma panamensis STANDLEY(パナマ産)、Meliosma glabrata URBAN(コスタリカ産)、Meliosma herbertii ROLFE(西インド諸島産)、Meliosma brasiliensis URBAN(ブラジル産)などの複葉種がある。これらの材は通常やや軽軟または中庸程度で加工容易であるが、耐朽性が低く樹が小さいので市場材として出ることは稀である。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る