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平井信二先生の樹木、木材研究

バチカ属の樹木(その4)
20.Vatica maingayi DYERの概要
 Vatica maingayi DYERSect.Sunapteaに属する。マレー、スマトラ、ボルネオ北部に分布し、マレー、サワラクで、resak lidi、jenuong、サバでresak daun merahという。
 おおよそ中高木であるが、大きいものは高さ45m、直径64cmまでのものがある。樹皮は灰褐色などでほぼ平滑または小さい裂片になってやや粗となる。板根はきわめて小さいかまたは現われない。葉は楕円形などで長さ5.5~12.5cm、幅1~5cm、やや革質 、側脉はは9~15対あり、少数の短い中間側脉があり、無毛である。葉柄の長さは1~2.5cmで先端が膝曲する。
 花序は短く長さ4cmまで、花弁が紅色を呈することが特異である。果実は球形で径は1cmまで、がく裂片の2個が皮針形などの翅に発達し長さ約9cm、裂片の3個は長さ約2.5cmで短い。これらのがく裂片は基部まで離生している。 
21.Vatica maingayi DYERの材の組織、性質と利用
 材の顕微鏡写.真があるのでその概要を記す。道管はほとんど単独、ときに2個が接続したものが散在する。分布数は8~15/mm2、径は0.06~0.18mmで、せん孔板はほぼ水平かまたは僅かに傾斜し単せん孔である。チロースが僅かに認められる。材の基礎組 織をなす繊維状仮道管はその材構成割合が比較的多く、径は0.015~0.03mm、壁厚は0.005~0.009mmである。
 軸方向柔組織のうち、道管をとりまく周囲柔組織はその発達が少なく、大部分は横断面でみて道管の放射方向の片側にかたよっており0~3細胞層であるが、中にはやや翼状になるものがあり、接線方向に3細胞まで連なり、道管孔を外れて放射方向に8細 胞層まである。
 放射組織は単列のものは3~30細胞高、2~7細胞幅の多列のものは15~140細胞高を示す。その構成は異性で、単列のものの大部分および多列のものの上下両端1~5層の単列部と周縁の1部は大型の細胞層(直立細胞、方形細胞または高さの大きい平伏 細胞)からなり、その他は高さの小さい平伏細胞からなる。単列のものでは、小型平伏細胞層が大型細胞層の中に介在している。細胞中には内容物が見られる。
 材は重硬で気乾比重は0.87~0.99を示す。材はマレーシア地域でresakにして扱われるものの1つであり、その利用は他の重硬なバチカ属のものと同様である。 
22.Vatica javanica VAN SLOOTEN
 Vatica javanica VAN SLOOTENSect.Sunapteaに属し、ジャバ、ボルネオ産である。インドネシアでkayu tenjoという。2亜種にわけられる。基本型にVatica javanica VAN SLOOTEN subsp.Javanicaはジャバ産、Vatica javanica VAN SLOOTEN Subsp.scaphifolia ASHTON(異名Vatica scaphifolia KOSTERMANS)は葉の脉間が、ふくれるもので、カリマンタ東部に多い。
 中高木で高さ27mまでになる。葉は長楕円形、倒卵形などで長さ13~24cm、幅6~10cm、側脉は22~25対あって、ほとんど無毛である。花序は長さ1.2cmまで。果実は球形で、これをとりかこむがく裂片の2個は長く3個は短い。これらは基分まで離生す る。
 材の気乾比重に約0.61の記載があり、多分resakとして利用されるものと思われる。  
23.Vatica nitens KING
 Vatica nitens KINGSect.Sunaptea属し、マレー、ボルネオ北部に産する。マレー、ブルネイでresak daun panjangという。英名にlongleaved vatica、和名にナガババチカをあてている著書がある。
 小高木から大高木に至るものがあり、高さ40m、直径70cmまでとなる。樹幹は円柱状で通直、板根は小さい。樹皮に密に環状線が出て著しい。葉は狭い長楕円形で長さ10~25cm、幅3.5~5.5cm、側脉は12~22対、短い中間側脉が出る。ほとんど無毛。
 葉柄の長さは1~2cmで先端で僅かに膝曲する。
 花序の長さは11cmまでで、花序は白色を呈する。果実は球形で大きく径3cmまでとなり、細毛を布く。がく裂片のうち2個は楕円形の翅となって長さ13cmまで、3個は短く長さ3.5cmまで、これらは基分まで離生する。
 心材は紅褐色で、材の気乾比重に0.71~0.98の記載があり、重硬で良質、また耐朽性が高い。材は利用上resakの1つとして扱われる。  
24.Vatica teysmanniana BURCK
 Vatica teysmanniana BURCKSect.Sunapteaに属し、スマトラ、バンカ産である。スマトラでresak ayar、resak paya、バンカでresak badouwという。
 中高木~大高木で高さ45m、直径60cmまでになるものがある。樹幹は円柱状で通直、ときに上部で僅かに曲がる。枝下高は30mまでになるものがある。板根は低い。葉は狭い楕円形から皮針形で長さ9.5~34cm、幅3~14cm、側脉は12~17対、ほとんど 無毛である。葉柄の長さは1.3~2.5cmある。
 花序の長さは15cmまでで、開出して疎らに花をつける。果実は球形で径は0.6cmまで、これをとりかこむがく裂片のうち2個は長い翅となり、3個は短い。これらは基部近くで合着してカップ状になり果実とも合着する。
 材の気乾比重は0.95の記載がある。材はresakとして扱われるが、地方的には良材とされ、家庭建築、橋梁などに用いられる。
25.Vatica havilandii BRANDIS
 Vatica havilandii BRANDISSect.Vaticaに属し、マレー、ボルネオ北部産である。マレー、ブルネイでresak degongという。
 小高木~中高木であるが、ときに高さ30m、直径35cmまでのものがある。しかし普通はずっと小さい。樹幹は円柱状で通常やや波曲し、しばしば溝が入る。板根は小さい。葉は狭い長楕円形~倒卵形で長さ8~17cm、幅2.5~6cm、側脉は15~22対で短 かい中間脉がやや目立つ。初め疎らに粉状毛があるがほとんど無毛となる。葉柄の長さは1~1.2cmある。
 花序の長さは8cmまでで、花弁は白色を呈する。果実は球形で長さ1.2cmまで、同形で長さ2.5cmまでの5個のがく裂片の中に全くかくれているが、これらは合着しない。 
26.Vatica scortechinii BRANDIS
 Vatica scortechinii BRANDISSect.Vaticaに属し、マレー、ボルネオ産である。マレーでresak langgong、サバでresak pengasohという。
 中高木から大高木になり樹高40m、直径55cmまでのものがある。葉は長楕円状皮針形または倒皮針形で長さ13~40cm、幅5~16cm、側脉は10~25対で、短い中間側脉があり、網状の脉理が明瞭である。ほとんど無毛。葉柄の長さは1.3~4cmである。
 花序の長さは9cmまでである。果実は球形に近く径1.5~2cm、がく裂片5個は同形で、その長さは果実より短く1cmほど、基部で反曲し、先へいってまくた曲がる。
 材の気乾比重に0.69~0.83の記載がある。材はresakとして扱われる。 
.Vatica venulosa BLUME
 Vatica venulosa BLUMESect.Vaticaに属し、マレー、スマトラ、ボルネオ、バンカ、ジャバに分布する。マレー、ブルネイでresak letop、サバでresak banka、インドネシアでresak seluang、resak puteh、silokiという。
 小高木~中高木で高さ25m、直径48cmまでになる。樹幹は円柱状で、通直または僅かに曲がりがある。板根は小さい。葉は楕円形~卵状皮針形でやや小さく長さ4~15cm、幅1.5~6.5cm、側脉は7~14対、ほとんど無毛で、葉柄の長さは0.5~0.9cmであ る。
 花序の長さは3~7cm、花弁は紅彩のある黄色を呈するという。果実は球形で径1cmまで、5個のがく裂片はほとんど同形の卵形などで長さ3cmまで、果実はこれらがく裂片と離生であるが全くその中にかくれている。裂生は基部で回旋している。
 次の2亜種にわけられる。Vatica venulosa BURCK subsp.venulosaは基本型で、Vatica bancana SCHEFFER、Vatica kunstleri BRANDISはその異名である。Vatica venulosa BURCK subsp.simalurensis ASHTONは葉が大きく、側脉数が多く、葉柄と花序が長い。スマトラ西部に限られ、Vatica simalurensis VAN SLOOTENはその異名である。
 材の気乾比重は0.66~0.97の範囲の報告があるが、一般にバチカ属のうちでは軽軟な方に入る。心材は耐朽性がある。材はresakとして扱われ、地面・水に接するところの構造材に適当とされている。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る