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平井信二先生の樹木、木材研究

シンドラノキ属の樹木(その1)
1.シンドラノキ属の概要
 シンドラノキ属(セプチール属) SindoraマメLeguminosae ジャケツイバラ亜科 Subfam.Caesalpinioideae に属する。マメ科の3亜科を独立させる場合 にはジャケツイバラ Caesalipiniaceae となる。20種ほどがインドシナ、海南島、タイ半島部、マレーシア地域の西部。
 ・中部、フィリピンと熱帯アフリカに分布している。アフリカ産は Sindora kleineana PIERRE ex PELLGR.(現地名ebana,ngon)1種のみである。マレーシア地域の東部すなわち小スンダ列島およびニューギニアには見られない。
 現地名はベトナムで go,gu, カンボジアで krakar, 中国で油楠、タイで makhatae,kling,khaman, マレーで sepetir,petir,meketil,saputi, サラワクで sampar hantu, インドネシアで sindur,sinampar,sansanit,anggi、フィリピンでsupa,kayu galu という。市場材はふつう sepetir として扱われ、わが国に輸入されてセプチール(セプター)と呼ばれる。
 きわめて短い期間、ふつう数週間だけ落葉する高木で、高さは通常25~30m、直径は1mまでになるが、大きいものは高さ45mまでのものがある。樹幹は円柱状で通常は通直、板根はほとんど現れないものから、基部で急に拡がった厚い板根をもつものまで ある。樹皮は暗灰紫色などで薄くほぼ平滑であるが、環になって幹をとりまく横の細い隆條があり、しばしば地衣類の付着で緑色・褐色・黄色などの斑紋をあらわす。
 葉は互生する偶数羽状複葉で、小葉は2~8対、ふつう3~4対で少ない。小葉は短柄で対生し大きく、楕円形など、わずかに左右不同、全縁、通常革質で、しばしば両面に網脉が現れ、中肋の先端が腺体になっていることがある。
 円錐花序は単生または群生し、軸にしばしば絨毛がある。がくは短い筒部と長い4裂片からなり、淡褐色の絨毛を布き刺状突起があるかまたはない。4片のうち最上の1裂片は他のものより幅が広い。花弁は1枚のみでふつう最上部のがく裂片の内側に包ま れている。雄ずいはふつう10個で、うち9個が下部が合着して粗毛のある鞘をつくる。雄ずいは1個、子房は扁平、少なくとも縫合線に沿って長い粗毛がある。花柱は糸状で反捲し柱頭は小さい。
 果実は扁平な豆果で、ややいびつな円形~長楕円形の特異な形を呈し、外面に中空の刺を散生するものが多い。熟すると2個の片になって裂開する。種子は、1~2個のものが多く、扁平で硬い石質、種子と同じくらい大きさの仮種皮があり、紅色または 黄色でその頂部で黒色を呈する。  
2.シンドラノキの材の組織
 散孔材。辺材・心材の境界はふつう明瞭で、辺材は黄白色~淡緑褐色で赤味を帯びるものもあり、その幅は6~30cmでかなり広いものがある。心材は新鮮時は淡紅褐色、紅褐色などであるが、空気にさらされて次第に暗色となり、金褐色、紅褐色、暗紅 褐色などとなる。またしばしば濃色の縞が現れる。生長輪を区切るとされるターミナル柔組織の存在が明瞭で肉眼でも認められる。木理は通直なものから浅く交走するものがあり、肌目はやや精、ときにやや粗である。一般に特別な光沢はなく、リップル マークは認められない。脆心材はほとんど見られない。
 材の顕微鏡的な構成要素は道管、真正木繊維または繊維状仮道管、軸方向柔組織、垂直樹脂道と放射組織とである。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~4個、ときに5個までが接続、まれに塊状に集まり、ほぼ均等に散在し、分布数1~11/m㎡である。単独道管の横断面形は円形~広楕円形である。道管の径は0.02~0.24㎜の範囲であるが、0.10~0.18㎜くらいが多い 。せん孔板は水平またはこれに近く単せん孔をもつ。接続する道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、べスチャード壁孔で径は0.004~0.008㎜、ときに0.01㎜である。道管内にチロースが見られることが少なく、通常暗色のゴム様物質の沈積が見られる。
 材の基礎組織を形成するのはほぼ真正木繊維であるが、不明瞭な有縁壁孔をもつ繊維状仮道管であることもある。ふつう隔離は見られない。長さは0.6~1.6mm、径は0.01~0.025㎜、壁厚は0.003~0.006㎜である。
 軸方向柔組織のうち、(1)周囲柔組織は0~3細胞層で、短い翼状に接線方向にのびるものがある。
 (2)ターミナル柔組織は生長輪界を示すもので、放射方向での間隔すなわち生長輪幅は不規則である。放射方向に3~12細胞層あって、中に垂直樹脂道を 含んでいる。
 (3)単独の散在柔細胞がとくに放射組織に沿って、放射方向である程度の間隔をおいて現れる。これらはほとんどが5~40室の多室結晶細胞である。この出現は、きわめて特異で、兼次忠蔵氏はこれを「輻射柔細胞」と呼んでいる。その他の 基礎組織中に散在する柔組織はきわめて少ない。柔細胞の径は0.02~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜である。
 垂直樹脂道があることはこの属の特徴であるが、フタバガキ科 Dipterocarpaceae のものとくらべて一般に小さく、必ずターミナル柔組織中に含まれていて、接線方向の同心円状に配列する。これらは接続することはほとんどなく、分布数0~8/m㎡、径は0.01~0.15㎜で道管よりずっと小さい。
 放射組織は1~4細胞幅であるが、2~3細胞幅のことが多い。2~45細胞高。構成はやや判然としない異性であることが多い。単列部と多列部の1部は方形細胞または高さが大きく長さの短い大型の平伏細胞、ときに直立細胞からなり、他は高さが小さく長 さの長い小型の平伏細胞からなるが、細胞種の区別は不明瞭で移行的である。放射細胞内にシリカは見られない。  
3.シンドラノキ属の材の性質と利用
 材の気乾比重は種類により、また生育条件により異なるが、0.45~1.10の範囲の値が報告されていて、0.60~0.75程度が多い。収縮は比重に対応してみると中位かやや小さい方で、生材から気乾までの収縮率は接線方向2.9~3.4%、放射方向1.5~2.0% の記載がある。強度的数値は樹種が明らかなものについてはそれぞれの項であげるが、おおよそ比重に対した値を示している。
 材の鋸断は樹脂分がやや刃を鈍化させる傾向があるが一般に困難でない。乾燥はやや遅いが狂いや割れなどの損傷が出ることは少ない。材中に含まれる樹脂は乾燥中に乾くので障害とならない、鉋削などの切削加工も一般に良好で、ロータリーおよびス ライスによる単板切削も特別の困難はない。接着剤、塗装性、曲げもとくに問題はない。耐朽性は濃色で比重が大きい心材を除きとくに良好とはいえない。濃色で重硬な心材の薬剤注入処理は困難である。辺材と淡色のものはときに変色やピンホールがみ られる。
 材は市場で一般に sepetir としてかなりよく知られている。その利用は判然とではないが2つのタイプにわけて考えられる。1つは褐色~紅褐色系統の地色に暗褐色、黒褐色など濃色の縞が現れるもので、高級な家具・キャビネット、建築・車輌・船舶の装飾的な内部造作や工芸品に 用いられるもので、またロータリーおよびスライス切削によった化粧単板の形でも利用される。もう1つは特別な美しい色彩紋様がなく一般材となるものである。すなわち建築、家具、器具、包装用などで、重硬で耐朽性あるものは構造材および橋梁・杭 ・柵・港湾用などの土木材である。わが国に輸入されるものは中級家具材などに使われている。
 多くの種類の樹幹から通常液状の油脂が量は少ないが採取され、工業的にはペイント・ワニス・透明紙の製造、他の油への混合用、地方的には灯用、ボートのコーキング材料、ときに薫香料の製造、皮膚病やリュウマチの民間薬に用いられる。また果実 が薬用になっているものもある。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る