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平井信二先生の樹木、木材研究

シンドラノキ属の樹木(その2)
4.Sindora tonkinensis A.CHEVALIER ex K. et S.S.LARSEN
 Sindora tonkinensis A.CHEVALIER ex K. et S.S.LARSEN は、インドシナ産で、支那南部で植栽されて東京油楠という。
 高さ15mまでの高木で、枝葉は無毛である。葉は偶数羽状複葉、小葉は4~5対、卵形~楕円状皮針形で長さ6~12cm、幅3.5~6cm、左右不整で鋭頭、基部は円形~広い楔形となる。円錐花序は長さ15~30cmで軸に黄色毛を密布する。花のがく裂片は同じく 黄色毛を密布し刺はない。豆果は広楕円形で長さ7~10cm、外面平滑で刺はない。種子2~5個を含んでいる。
 材質数値に気乾比重0.70、縦圧縮強さ455kg/c㎡、曲げ強さ788kg/c㎡の報告がある。  
5.Sindora glabra MERRILL ex DE WIT
 Sindora glabra MERRILL ex DE WITはインドシナ、海南島産で、中国名は油楠である。高さ8~20m、直径30~60cmの高木。葉は偶数羽状複葉で、小葉は2~4対、楕円形などで長さ5~10cm、幅2.5~5cm、鋭頭までは急鋭頭、基部は鈍形~円形で左右がやや不揃い、革質、無毛である。円錐 花序は長さ15~20cmで軸に黄色毛を密生する。花のがく裂片は黄褐色の絨毛を密生し軟らかい刺がある。成熟する雄ずいは9個、退化雄ずいは1個ある。豆果は円形~広卵形で長さ4~8cm、剛直な刺を散生し樹脂を分泌する。種子1個を含む。
 辺心材の区別は明らかで、心材は褐色などを呈する。木理はやや交走し肌目は精である。次の材質数値が報告されている。気乾比重0.68、含水率1%当りの平均収縮率は接線方向0.27%、放射方向0.17%、体積0.46%、縦圧縮強さ560kg/c㎡、曲げ強さ1 ,118kg/c㎡、曲げヤング係数11.6×10(4)kg/c㎡、衝撃曲げ吸収エネルギー0.82kg・m/c㎡。
 材は比較的加工しやすく、適当な耐朽性があり海虫にも強いので建築、家具、車輌、船舶、器具など広い用途がある。材面が美しいものはソリットおよび化粧合板として建築装飾材、高級家具、楽器、彫刻などに用いられる。樹幹から樹脂が得られ灯用 となる。  
6.Sindora siamensis TEIJSMANN ex MIQUEL の概要
 Sindora siamensis TEIJSMANN ex MIQUEL はタイ、インドシナ、マレーに分布し、Sindora cochinchinensis BAILLON はその異名とされる。タイで makha tae,makha ling,makha nam,makha yum, ベトナムでgu,go,go-mat,ラオスで mayte,tete,hoho,カンボジアで krakas,マレーシアで sepetir mempelas という。
 通常小高木であるが、また高さ15m以上、ときに35mまで、直径40cm以上にもなる。樹幹は円柱状で通直、枝下高は12mという記録がる。
 葉は偶数羽状複葉で、小葉は3~4対、楕円状卵形などで長さ4~15cm、幅3~8.5cm、円頭、基部は広い楔形、上面の脉理上に細かい絨毛、下面に全体に絨毛を布き、網脉は両面ともにかすかにしか認められない。革質。
 花序は密な長さ10~18cmの円錐花序で、軸に濃黄色の細綿毛がある。がく裂片の先端に少数の刺をつける。豆果は不整な卵形で長さ10cmまで、太い刺を多く生ずる。その先端は腺体になり粘った匂いがある樹脂を出す。種子は1~3個である。  
Sindora siamensis TEIJSMANN ex MIQUEL の材の組織、性質と利用
 散孔材。辺・心材の別は明らかで、心材は鮮黄褐色、紅褐色を呈し、暗褐色、黒褐色の縞が出るものがあり、やや光沢があって美しい。木理はやや交走してリボンもく(杢)を現わすものがある。
 材の顕微鏡写.真によって、その組織の概要をあげる。道管は単独および2~3個がおもに放射方向に接続し分布数は3~7/m㎡である。単独のものの横断面形は円形から広楕円形、径は0.08~0.16㎜で、せん孔板は水平に近く単せん孔をもつ。材の基礎 組織をなす真正木繊維の径は0.01~0.025㎜、壁厚は0.003~0.005㎜である。
 軸方向柔細胞のうち、周囲柔組織は0~3細胞層で僅かに翼状となる傾向を示すものがあり接線方向に4細胞までのびる。ターミナル柔細胞は放射方向に3~12細胞層で、垂直樹脂道を内包する。散在柔細胞は放射組織に沿って放射方向に間隔をおいて並ぶ 傾向があり、ほとんど多室結晶細胞である。柔細胞の径は0.02~0.04㎜、壁厚は0.001~0.002㎜である。
 垂直樹脂道はターミナル柔組織の中に包まれてあり、同心円状の接線方向に少し間隔をおいて並ぶ。その間隔は同属の他種より狭い。分布数は0~6/m㎡、径は0.03~0.05㎜である。
 放射組織は1~3細胞幅で単列のものは少ない。3~40細胞高。構成は判然としない異性で、単列部の大部分と多列部とくに周辺の1部は方形細胞または高さが大きく長さの短い大型の平状細胞、他は高さが小さく長さの長い小型の平状細胞からなるが、こ れら細胞種の区別は判然としない。
 材の気乾比重に0.70~1.10の範囲の記載があり、0.80~0.90程度が多いと思われる。材質数値の1例をあげると、気乾比重0.88のもので、縦圧縮強さ704kg/c㎡、曲げ強さ1,259kg/c㎡を示す。
 切削加工は一般にやや困難とされるが、仕上げ面は通常良好である。板は釘や木ねじの打ちこみでやや割れやすいという。心材の耐朽性は高い。
 材面に縞の紋様があるなどの美しいものは高級家具、建築内部装飾材、工芸品などに賞用される。そのほか一般に建築構造材および造作材、家具、器具、車輌・船舶、土木材、包装材などと燃材に用いられる。種子の仮種皮はビンロウジ檳瑯子、bete l,ビンロウジュAreca catechu LINNAEUS の種子)の代用になる。     平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る