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平井信二先生の樹木、木材研究

ペカン属の樹木(その2)
5.ペカン
 ペカン(ペカングルミ、アメリカグルミ)Carya illinoensis K.KOCH(異名Carya pecan ENGLER et GRAEBNER、Carya olivaeformis NUTTALL、Hicoria pecan BRITTON、Juglans pecan MARSHALL)はペカンSect.Pecania、すなわちペカンpecan hickoryの主要なものである。アメリカ中部・中南部に自生するが、またアメリカ国内および世界各国で果樹として植栽されている。わが国には明治末期に導入されたが、本格的な栽培がされるには至っていない。英名はpecan、pecan hickory、pecan nut、sweet pecanなど、独名はPekan、Pekannuss、仏名はpecanierという。
 高さ30~50m、直径90~180cmになる落葉大高木で、樹皮は灰褐色を呈し、縦の割れ目ができる。若枝には細軟毛がある。葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は7~17個、長楕円状皮針形など、長さ5~18cm、鋭尖頭、基部は楔形から鈍形を示す。下 面に初め細軟毛と腺点があるが後に無毛となる。
 果実は3~10個が穂状になってつき、楕円形からやや円筒形、長さ3~8cm、先端が尖がり基部に狭い翼がある。4片に裂開して核(ナット)が落下する。核は円筒形に近く平滑で淡褐色を呈し壁は薄い。仁は甘い。
 栽培品種に"Stuart"、"Schly"、"Pubst"、"Alleg"、"Money-maker"その他がある。同属の他種との雑種に次のものがある。
 Brown's hickoryCarya×brownii SARGENTはCarya cordiformis K.KOCHとの雑種。Nussbaumer hickoryCarya×nussbaumerii SARGENTはCarya laciniosa LOUDONとの雑種。 Schneck hickoryCarya×schneckii SARGENTはCarya tomentosa NUTTALLとの雑種。bitter pecanCarya×lecontei LITTLECarya aquatica NUTTALLとの雑種で仁は苦い。
 ペカンの材は半環孔材で、辺・心材の区別はほぼ明瞭、心材は淡紅褐色を呈する。年輪は明らかである。木理はおおよそ通直で、肌目は粗い。
 材の気乾比重はヒッコリー類true hickoryよりも小さく、0.72~0.74の記載がある。強度的数値では縦圧縮強さ550kg/cm2、曲げ強さ957kg/cm2、曲げヤング係数12.1×10(4)・kg/cm2、せん断強さ146kg/cm2の報告がある。これらはヒッコリー類より劣り、また脆いとされる。その 為利用は器具、農機具、車両などのほかは燃材とされることが多い。
 仁の分析結果の例では、脂肪72%、蛋白質11%、炭水化物13%、灰分1%、水分3%となっている。菓子や料理用のナットの主要なものの一つで、世界中で広く用いられる。また圧搾して得られるペカン油の組成は、オレイン酸71~78%、リノール酸1 6~25%、飽和酸4~5%である。樹は庭園樹、街路樹としても植栽される。  
6.ウォーター・ヒッコリー
 ウォーター・ヒッコリーCarya aquatica NUTTALL(異名Hicoria aquatica BRITTON、Juglans aquatica MICHAUX)はペカンSect.Pecania、すなわちペカン類pecan hickoryに属する。英名はwater hickory、bitter pecan、swawp hickory、独名はWasser-Hickoryという。アメリカ中部・南部・東南部の低湿地に生ずる。
 樹は落葉小~中高木で、高さ20m、直径60~90cm、まれに高さ30mとなる。樹皮は淡褐色で、長い裂片になって離れる。冬芽は褐色を呈する。小葉は7~15個であるが、9または11個のものが多い。皮針形などで長さ8~12cm、長い鋭尖頭、基部は頂小葉 で狭い楔形、他は楔形~鈍形を示す。初め細綿毛があるが、後に無毛となる。
 果実は穂状に1~4個がつき、卵形または倒卵形で長さ2.5~3.5cm、扁平で4条の狭い翼がある。熟して基部まで裂開する。核(ナット)は扁平な倒卵形などで著しい皺がある。鈍い紅褐色を呈する。仁は苦い。
 材は半環孔材で、心材は紅褐色を呈する。生長輪は明瞭である。材質数値に気乾比重0.74、縦圧縮強さ620kg/cm2、曲げ強さ1,246kg/cm2、曲げヤング係数14.1×10(4)・kg/cm2の記載がある。やや脆いという。器具材、建築雑用材、柵柱などと燃材に 用いられる。  
7.ナツメグ・ヒッコリー
 ナツメグ・ヒッコリーCarya myristicaeformis NUTTALL(異名Hicoria myristicaeformis BRITTON)はペカンSect.Pecania、すなわちぺカン類pecan hickoryに属する。アメリカ東南部、メキシコに分布し、英名はnutmeg hickory、bitter water nutという。
 高さ25~30m、ときに40m、直径60~90cmになる落葉高木である。樹皮は暗褐色で、小さい鱗片状になって剥がれる。小枝は黄色または褐色の鱗片で被われ、2年目には暗紅褐色となる。葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は5~11個、卵状皮針形などで長 さ8~12cm、鋭尖頭、下面は初め黄色の細軟毛があるが後に無毛となる。
 果実は通常単生し、倒卵形または楕円形で長さ3~4cm、基部に4条の翼がある。偽果皮はほとんど基部まで裂開する。核(ナット)は卵形で紅褐色、不規則な帯状と点状の紋様がある。仁はふつう甘い。
 材はほぼ環孔材である。心材は淡褐色を呈する。材の気乾比重に0.67~0.80の記載があり、強度数値では縦圧縮強さ484kg/cm2、曲げ強さ1,162kg/cm2、曲げヤング係数11.6×10(4)・kg/cm2があげられている。
 材は器具材その他に用いられ、また燃材とされる。樹は姿が優美で葉叢に光沢があるので庭園樹などに植栽される。       平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る