v1.1

平井信二先生の樹木、木材研究

フウ属の樹木(その2)
6.フウの概要
 フウ(タイワンフウ)Liquidambar formosana HANCE(異名Liquidambar acerifolia MAXIMOWICZ、Liquidambar maximowiczii MIQUEL、Liquidambar taiwaniana HANCE、Liquidambar tonkinensis A.CHEVALIER)は支那、チベット、台湾、インドシナに分布する。また植栽もされ、わが国へは享保年間(1727年)に渡米したとされる。英名はChinese sweet gum、Formosan sweet gum、beautiful sweet gum、fragrant maple、中国名を楓香樹、楓樹、邊柴、紅楓、百日柴、大葉楓、白膠香、路路通、台湾で楓仔樹、ベトナムでthau、sau、phu luuなどという。
 高さ40m、直径1mまでになる落葉高木で、樹皮は若令木では灰褐色で平滑であるが、年を経ると暗褐色になり割れ目が入って粗くなり、小塊状の片になって剥落する。小枝には軟毛がある。葉は枝端付近に互生して叢生し、掌状に3中裂する。その輪郭は おおよそ菱形で長さ・幅ともに7~15cmある。裂片は卵状三角形で、尾状鋭尖頭、基部はやや心形を呈する。薄い革質で、縁に腺状の細鋸歯をもち、3~5個の掌状脉がある。初め細軟毛があるが、後に下面脉腋を除きほとんど無毛となる。葉柄の長さは 8~10cmで、細軟毛があり、葉脉の基部とともに紅色を帯びる。托葉は繊細で早落する。葉は晩秋に紅褐色に紅葉する。
 春開花し、雄花は雄ずいのみが多数集まって小鱗片と混生して、つまった短い穂状花序をなし、これが数個総状に複生して短い円錐花序となる。雄ずいの花糸は不同長で、葯は花糸よりやや短い。雌花は24~43個が球形の頭状花序になって単出、花序柄 の長さは3~6cmである。一つの花に雌ずい1個があり、子房は花盤と合着し半下位で、また各花が合着して一つの花序となっている。花柱は2個あり長さ6~10mm、有毛で、先端の柱頭部は巻曲する。花盤には針状の小鱗片が4~5個つき、その長さは4~8mm 、また短い退化雄ずい4~5個がつく。秋に果実となるが、さく(朔)果が多数合着した頭状果序になり、球形で径2.5~4cm、木質である。各さく果は熟して2弁に裂開、また各片が2浅裂する。種子は多数であるが、稔性があるのは最下部の1~2個のみで狭 い翼をもつ。果序には宿存して硬化し刺状となった花柱と花盤の鱗片がある。
 次の変種がある。ヒカリバフウLiquidambar formosana HANCE var.montiola REHDER et WILSON:支那中部・南部に産し、中国名を山楓香樹、光葉楓樹という。小高木で、小枝と葉の下面は無毛で常に灰白色を帯びる。基部は切形ないし僅かに心形を示す。果序に宿存する花盤の鱗片はやや短い。
7.フウの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別は一般に不明瞭で黄白色から灰褐色、紅褐色などを呈し、大材で多少その区別が明らかになり心材部分は濃色を示す。生長輪はやや明瞭ないし不明瞭である。木理は通常交走し、肌目は精で均質、光沢はあまりない。特別な味や 匂いはない。材のアルコール浸出液はフラボン反応を示す。辺材は青変菌に犯されやすく、汚灰褐色の色調を増す。
 道管は多くは単独であるが、また2~3個が放射方向などに接続するものがある。道管要素の軸方向上下のせん孔板すなわち接続面が著しく傾斜して長いので、この部分が横断面では接線方向に2個が接続した形で現れる。道管の分布数は102~130/mm2で ある。単独道管の断面形は楕円形、卵形または円形であるが、その輪郭は角ばっている。道管の径は0.03~0.10mmである。階段せん孔をもち、バーの数は12~30である。接続道管の間の有縁壁孔は横長の長楕円形、卵形などで、その長径は0.03mmまでのも のがあり、階段状、対列状またはその組み合わせで配列する。道管・放射組織間の壁孔は刻痕状、少数のものは大きい円形を示す。おもに道管要素両端の尾状部にらせん肥厚が見られる。チロースを含むものがある。
 材の基礎組織を形成するのは、明瞭な有縁壁孔を多くもつ繊維状仮道管で、長さは1.1~2.5mm、径は0.015~0.025mm、壁厚は0.004~0.005mmである。
 軸方向柔組織は少なく、おもに単独で散在する柔細胞で、道管周辺にも存在する。また少数個の細胞が接線方向に連なる単接線柔組織に移行する形のものもある。柔細胞の径は0.015~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmほどである。細胞内に樹脂様物質を含 み、結晶は見られない。
 放射組織は1~3、まれに4細胞幅で、単列のものは少い。3~60細胞高であるが、多くは10~30細胞高である。その構成は異性で、単列部と多列部の一部は直立細胞または方形細胞の層、他は平伏細胞の層からなっている。細胞内には樹脂様物質を含み、 また辺縁の直立・方形細胞中に菱形の結晶を含む。
 しばしば傷害垂直間道が出現する。その場合は接線方向に比較的密接して同心円状に並列し、これを帯状柔組織が包含している。  
8.フウの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.59~0.77の記載がある。気乾比重0.59~0.61のもので次の材質数値が報告されている。含水率1%当りの平均収縮率は接線方向0.35~0.36%、放射方向0.16~0.18%、体積0.54~0.57%、縦圧縮強さ441kg/cm2、曲げ強さ976~99 2kg/cm2、曲げヤング係数10.4~11.l×10(4)kg/cm2、衝撃曲げ吸収エネルギー0.54~1.04kg・m/cm2、ブリネル硬さは横断面5.2~6.1kg/mm2、放射断面4.4kg/mm2、接線断面4.3~4.5kg/mm2。
 乾燥は遅くはないが、狂いや割れなどの欠点が出やすいので注意を要する。製材、切削、接着などの加工は比較的容易である。材の耐久性についてはややあるという評価と低いという評価とがあるが、防腐処理は容易である。
 材の利用は建築構造材・造作材、家具、キャビネット、紡績木管・臼を含む器具材、車両、船舶、茶箱・食品箱を含む箱・包装材、桶樽、玩具その他で、これらの中には合板で用いられるものもある。防腐処理をすれば枕木、坑木、杭・柵などの土木材 に使われる。薪炭材には良好である。
 傷がついた樹幹に滲出する樹脂を乾燥したものが楓香脂、楓脂香で、淡黄色、透明で香気がある。これをオリーブ油に溶かして疥癬などの塗布薬とする。また結核性の病気に内用する。その成分は桂皮酸、ボルネオールなどである。また香料に用いられ ることがある。中国で成熟した集合果を乾燥したものを路路通(楓果)といい、鎮痛・利尿・通経などに内用、疥癬・湿疹・痔漏などに外用する。そのほか果実、根、葉、樹皮も種々の薬用にする。
 小径材はシイタケほだ木に用い、葉はテグス蚕の飼料、豚の餌とする。樹は紅葉が美しく、庭園樹、防火樹、とくに街路樹として植栽される。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る