v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

ホワイトラワン属の樹木
5.ホワイトラワンの概要
 ホワイトラワン(シロラワンPentacme contorta MERRILL et ROLFE(異名Pentacme paucinervis BRANDIS、Shorea contorta VIDAL)はパラワン島を除くフィリピン全域に分布する。ミンダナオ、バシランに生ずるミンダナオ・ラワンPentacme mindanensis FOXWORTHYは別種として扱われることが多いが、ここでは同一種とする考えに従ってその異名とする。英名はwhite lauan(Mindanao white lauan)であり、フィリピンの現地名はlauan、anas、apnit、balak、danlig、hapnit、malaanonang、malakayan(ミンダナオ・ラワンに対するもの:bagtikan lauaan、danlig、malakayan blanco)などがある。材の市場名はわが国ではバグチカン(bagtican)Parashorea malaanonan MERRILLとともに白ラワン類とし、アメリカ市場ではlight red Philippine mahogany、イギリス市場ではlight red lauan、white lauanに入れられる。
 高さ50m、直径1m、ときに1.8mまでになる常緑大高木で、樹幹は円柱状で通直、枝下は15~20mに達する。樹皮は灰色から褐色ないし黒色に近いものもあり、縦の割れ目が入る。大径木では板根が大きく張り出す。葉は卵形ないし皮針形で、長さ7.5~29cm 、幅3.5~11cm、鋭突頭、基部は円形を呈し、やや左右不同である。革質で、全縁、側脈は5~9対あり、全体無毛である。葉柄の長さは約2.5cmである。
 頂生または腋生の円錐花序を出し、花序分枝やがく、花弁の外側には星状の細綿毛を密布して灰色を呈する。花の長さは約1.3cmで、短い倒円錐形の花梗につき、がく裂片5個の内面に細軟毛があり、花弁5個は倒卵形で開出する。雄ずいは15個あり、葯 室4個をつけ線状楕円形などで、各々の先端は長い糸状に延長し、葯隔にも長くて少し曲がった針状の付属体をつける。雌ずいは1個で、子房は無毛、その上部はやや長い足体となり軟毛をもつ。花柱は糸状で長く、上部で太くなって鈍頭の柱頭となる。果 実に宿存するがく裂片のうち外側の3個は大きな倒皮針形の翅となり、長さ12cm、幅3cmまであり、鈍頭を呈する。内側の2個は狭線形などで短い。  
6.ホワイトラワンの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別はおおよそ不明瞭で、辺材は灰白色などを呈し幅は5~9cmある。心材は淡灰色から帯紅白色、淡紅色、淡黄褐色などを呈する。生長輪は認められないかまたは不顕著である。木理は一般に交走し放射断面でリボンもく(杢)を現 す。肌目はやや粗ないし粗でやや光沢がある。特別な匂いや味はない。心材部分の水浸出液は紫外線にあたって紫色の蛍光を表す。
 材の顕微鏡的構成要素が材を占有する割合を求めた1例では、道管17.1%、道管状仮道管0.15%、真正木繊維69.7%、軸方向柔組織4.7%、放射組織8.4%で、ほかに垂直細胞間道微量がある。
 道管は単独およびおもに放射方向に2、ときに3個が接続し、ふつう単独のものがやや多い。分布数は1~7/mm2を示す。単独道管の断面形は楕円形などで、径は0.08~0.43mmにわたる。せん孔板は水平に近く、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁 孔は交互配列をし、その径はO.006~0.010mmで、ベスチャード壁孔である。道管、放射組織間の壁孔は円形、楕円形などを呈し単壁孔である。道管の周辺には不規則な形で径が0.03~0.08mmの道管状仮道管が少量存在する。
 材の基礎組織を形成するのは真正木繊維で、長さは1.2~2.1mm、径は0.01~0.04mm、壁厚は0.002~0.005mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織が1~4細胞層あり、やや不整な形の翼状柔組織になっているものもある。この場合接線方向に10細胞まで伸びるものがあり、放射方向に10細胞層までのものがある。また単独で散在する柔細胞がある。垂直細胞間道が現れ る処ではこれらを包含して放射方向に9細胞層までの帯状柔組織となる。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~O.002mmである。細胞中にしゅう酸石灰の菱形の結晶を1~3個含むものがある。
 放射組織は1~6、ときに7細胞幅まであり、高さは2~75細胞高または以上となる。その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの上下両瑞単列部1~3細胞層と、多列部周縁の一部は直立細胞、方形細胞または放射方向が短く軸方向が高い大型 の平伏細胞の層、他は放射方向が長い小型の通常の平伏細胞の層からなっている。細胞内には樹脂様物質を含み、また大きい結晶を含むものが多く見られ、ときに小さい結晶のこともある。シリカは見られない。
 垂直細胞間道は接線方向に並列した同心円状に現れ、帯状柔組織の中に包含される。円形、縦長および横長の楕円形など形は不揃いで、径は0.03~0.16mm、分布数は処により3~4/mm2などを示す。エピセリウムは薄壁で、中に黄白色の樹脂を含んでいる 。7.ホワイトラワンの材の性質と利用  材の気乾比重に0.36~0.68の範囲の記載があるが、0.45~0.60程度のものが多い。生材から含水率12%までの収縮率は、接線方向4.3%、放射方向1.8%の記載があり、気乾比重0.59のもので、次の強度数値が報告されている。縦圧縮強さ311kgf/cm2、横圧縮 強さ51kgf/cm2、曲げ強さ714kgf/cm2、曲げヤング係数11.7×10(4)・kgf/cm2、せん断強さ82kgf/cm2、ヤンカ硬さは横断面387kg、縦断面305kg。
 製材は容易、乾燥は容易で欠点が出ることは少い。人工乾燥スケジュールとして、初期乾球温度54C、初期乾湿球温度差3.6C、終期乾球温度80Cが提案されている。鉋削、型削などの切削加工は容易で仕上げ面も良好である。穿孔、柄孔ぐりではややむし れが出るものがあるという。接着、塗装、研磨にも問題は少い。ロータリー単板切削は容易で良質の合板が作られる。材の耐朽性は低く、屋外、接地条件では容易に腐朽し、キクイムシ、白蟻、海虫の食害に対して抵抗性はない。材の防腐処理は容易であ る。
 かってのフィリピンの最も主要な市場材の一つで、戦前および戦後しばらくの間は大量にわが国に輸出され、わが国では一般用材および合板に広く使用された。概括的に用途をあげると、フローリング・パネルを含む建築内装・造作材、一般家具および キャビネット、日用器具、車両・船舶の部材、箱・包装用材、コンクリート型わく、軽構造物、鉱山用材その他で、素材および合板の形できわめて広く各方面に用いられた。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る