v1.1

平井信二先生の樹木、木材研究

オリーブ属の樹木(その2)
7. Olea dioica ROXBURGH
Olea dioica ROXBURGH(異名Olea sinica CHUN)はインド東北部および西ガーツ山地、ネパール、バングラデシュ、ビルマ、支那南部、インドシナに分布し、英名をIndian olive、インドでattajam、timbernyok、koli、parrajamb、karambaなど、ネパールでkala kiamoni、中国で異株木屑欖、蝋樹、白茶木、水掃把という。
 高さ5~12mの低木~高木で、樹皮は灰色を呈し、小枝に細軟毛があるかまたは後に無毛となる。葉は楕円状皮針形などで長さ5~10cm、幅1.5~3.7cm、鋭頭または鈍頭、まれに円頭、基部は楔形、全縁または不規則な疎鋸歯があり縁はやや反巻する。
 側脉は4~9対。革質で無毛または細軟毛がある。葉柄の長さは0.5~1cmで、細軟毛があるかまたは後に無毛となる。
 花は雑性異株で、腋生の集散花序が複成した円錐花序、ときに総状または散形花序様につく。花序はふつう無毛であるがときに細軟毛がある。雄性花序は長さ2~10cmで、花梗の長さ1~3mmで繊細、両性花序は短く長さ1~2.5cm、まれに5cmまでで、花梗 の長さは0.5~1.5mmである。花は白色または黄白色を呈し、がくは長さ0.2~0.8mmで4裂片をもつ。花冠の筒部の長さは1~2mm、4個の裂片の長さは0.5~1mmである。雄ずいは2個で、ほとんど花糸の部分がなく、花冠筒部の中位に着生する。雌花では花冠を 欠いているか、または脱落性である。雌ずいは1個で、子房は卵状円錐形を呈し無毛、柱頭は頭状である。石果は楕円形または卵形で長さ0.9~1.4cm、短突頭をなし、熟して紫黒色または黒色を呈する。
 材は淡紅褐色を呈し、年輪は顕著でない。肌目はやや粗である。材の気乾比重に0.77の記載があり、やや重硬である。建築雑用材、器具材などに用いられる。
 変種にOlea dioica ROXBURGH var.wightiana DE CANDOLLE(異名Olea wightiana WALLICH ex G.DON)があり、インド東部、支那南部に生じ、中国名を球果木犀欖、魏氏木犀欖という。母種にくらべ果実が大きくて球形に近く、長さ1~1.1cmである。  
8.Olea ferruginea ROYLE
 Olea ferruginea ROYLE(異名Olea cuspidata WALLICH ex G.DON)はインドのカシミールおよび東部、パキスタン、アフガニスタン、支那雲南省に分布し、英名をIndian olive、インド現地名をzaitum、kaho、kau、wi、中国名を銹鱗木犀欖、尖葉木犀欖という。
 高さ3~10mの低木~高木で、樹皮は灰色を呈し、若令時は平滑であるが、年を経て長く狭いストリップになって剥げる。小枝は灰色または褐色で4稜形に近く、無毛であるが微小な鱗片を密布する。葉は狭皮針形~長楕円形で長さ3~10cm、幅1~2cm、長 い鋭尖頭、基部は楔形となる。全縁で縁はやや反巻し、側脉は多数あるが明瞭でない。縁に近いところで連結して一直線になる。両面はほぼ無毛で、下面に銹色の鱗片を密布する。葉柄は長さ0.3~0.5cmで無毛、銹色の鱗片を被る。
 長さ1~4cmの円錐花序を腋生し、花序軸には銹色の鱗片を布き、花梗の長さは0~1mmである。花は両性で白色。がくは長さ約1mmで短い裂歯がある。花冠は長さ2.5~3.5mmで、筒部はがくとほぼ同長、裂片4個は長さ1.5~2mmである。雄ずい2個は花冠内に あり、花糸はきわめて短く、葯は長さ約1.5mmである。雌ずいは1個で、子房は球形に近く無毛、花柱は短く、柱頭は頭状を呈する。石果は広楕円形または球形に近く、長さ0.7~0.9cm、熟して暗褐色を呈する。
 散孔材。辺材は白色に近く、心材部分は大きくて淡褐色から暗緑褐色まで、黒色に近いものまで変化が多く、濃淡の美しい紋様が出るものがある。肌目は精で緻密。材の水浸液は蛍光を発する。道管は小さく集団となってその周辺に不規則な柔組織を伴 い紋様状の分布をする。
 材の気乾比重に1.17(1.04~1.31)の記載があり、きわめて重硬である。切削加工などは困難であるが、旋削は可能で、また心材の耐朽性は大きい。装飾用建築小部材、櫛・道具の柄などの器具、農機具、旋削・彫刻・寄木による工芸品、ステッキ などに用いられ、燃材としても良好である。果実は食べられ、また油がとれるが収量は少い。  
9.Olea gamblei C.B.CLARKE
 Olea gamblei C.B.CLARKEはインドのヒマラヤ東部地域、ネパール、チベットに産し、ネパールでjamu、中国で喜馬木犀欖という。
 高さ5mほどの小高木で、小枝に疎らに円形の皮目があり無毛である。葉は楕円形~皮針形で長さ10~14cm、幅1.2~3cm、長い鋭尖頭、基部は楔形、全縁、側脉は9~12対ある。革質で、両面無毛、葉柄は長さ0.6~0.7cmである。
 雌雄異株または雑性異株で、長さ約7.5cmの円錐花序を腋生し、花序は無毛または細軟毛を被る。花梗の長さは0~3mmである。がくは長さ0.8mmで切形に近く縁毛をもつ。花冠を欠いていることが特徴で、雄ずいは2個で花糸の部分はほとんどない。雌ず いは1個で子房は無毛、花柱は短く柱頭は浅く2裂する。石果は楕円形で長さ1.8~2.5cmである。  
10.Olea glandulifera WALLICH ex G.DON
 Olea glandulifera WALLICH ex G.DONはインド西北部および南部、パキスタン、スリランカ、ネパール、支那雲南省などに分布し、英名にIndian Oliveがあり、インドでgair guilili、galid、kunthay、中国で腺葉木犀欖、テン欖樹という。
 高さ6~20mの高木で、樹幹は短く、樹皮は灰白色を呈し脆い鱗片状になって剥げる。小枝は扁平で灰白色または褐色、円形または楕円形の皮目を散生し粗ソウで無毛である。
 葉は楕円形などで長さ8.5~10cm、幅3.5~6.5cm、長い鋭尖頭、基部は楔形~広楔形、全縁で縁はやや反巻する。側脉はは10~15対ある。紙質で、下面に白色の微小な鱗片があり、脉液は小さい凹陥になって腺体をもっている。葉柄の長さは1.5~3cmで無 毛である。
 長さ8~10cmの円錐花序を頂生または腋生し、花序は無毛、花梗の長さは0~3mmである。花は白色で両性、がくは長さ約1mmで4裂する。花冠は4深裂し裂片の長さは1~2mmである。雄ずい2個の花糸は短い。雌ずいは1個で、子房は卵球形、細軟毛があるか または無毛、柱頭はやや大きい頭状で2裂する。石果は長卵形でやや歪つになり長さ1.2~1.5cm、先瑞が尖がり、熟して黄褐色となり粗ソウである。
 材は紅灰色で、気乾比重に0.90(0.80~0.98)の記載があり重硬である。切削加工による仕上げ面は光沢があり、耐朽性が高く虫害も少ない。建築部材、器具、農機具、旋削物などに用いられる。  
11.ウミベオリーブの概要
 ウミベオリーブOlea brachiata MERRILL ex G.W.GROFF(異名Tetrapilus brachiatus LOUREIRO、Olea maritima WALLICH ex G.DON)はタイ、支那南部(広東省、海南島)、インドシナ、マレーの沿海地域に分布する。英名をsea olive、中国名を浜木犀欖、広東木犀欖、広東山梅花、広東斉トン果、白茶木、マレー名をkelek、sekelekという。
 高さ1~9mの常緑低木または小高木で、枝の分岐が多い。樹皮は灰白色で縦の浅い割れ目が入る。小枝は灰褐色などで通常細軟毛を被むる。
 葉は対生する単葉で、長楕円形~楕円形、長さ3~12cm、幅1.2~4cm、通常中部以上で最も広い。鋭尖頭または短い尾状鋭尖頭、基部は楔形、縁の中部以上に不規則な鋸歯をもつかときに全縁、側脉は5~7対あって不明瞭である。やや革質で、上面は 深緑色、下面は淡緑色で若いときは淡紅紫色を帯び、細軟毛がある。葉柄の長さは0.3~0.5cmで、通常細軟毛があるが、ときに無毛である。
 花は腋生する円錐花序、ときに総状または散状につき、花序の長さは0.5~3cm、常に細軟毛を被る。通常雑性異株で、花は白色を呈する。花梗の長さ1~1.5mmで細軟毛があるかまたは無毛に近い。がくの長さ約1mmで細軟毛を被むる。花冠筒部の長さは1 ~1.5mm、裂片4個は広卵形などで長さ0.5~1mmである。雄ずいは2個で、花糸の部分がほとんどなく、葯は楕円形で長さ約0.8mmである。雌ずいは1個、子房は卵球形で無毛、柱頭は微かに2裂する。石果はほぼ球形で径0.5~0.7cm、熟して藍紫色または紫 黒色を呈する。  
12.ウミベオリーブの材の組織、性質と利用
 おもに成俊卿等『中国木材誌』によって材の組織、性質、利用を記載する。散孔材。辺・心材の区別は不明瞭で褐色を呈する。生長輪は不明瞭またはには明瞭である。木理は交走し、肌目はきわめて精、緻密である。
 道管はきわめて小径からやや小さいもので、その大きさに変化がある。単独および放射方向に2~3、ときに6個までが接続し、これらの分布は不均等で、また斜列や樹枝状などの輸廓に集団する。この集団の接線方向の幅は1~3管孔である。単独道管の 断面形は卵円形または円形、道管の接線方向の径は0.045~0.085mmで、ときに0.093mmまたはそれ以上である。せん孔板は傾斜し単せん孔をもつ。道管相互間の有縁壁孔は交互配列をし、その長径は0.006~0.008mmである。道管の内壁には明瞭ならせん肥厚 が見られる。チロースがある。
 道管状仮道管が道管の周辺に限られて少量存在し、内壁のらせん肥厚は明瞭である。材の基礎組織を形成するのは、不明瞭な有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、その長さは1.4(1.0~2.0)mm、径は0.015~0.02mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織が不規則に発達し、ときにやや帯状柔組織の様相を示す。ターミナル柔組織は明瞭で放射方向に1~3、通常2細胞層である。まれに単独で散在する柔細胞またはそれが多少集合したものが見られる。細胞内に樹脂様物質を含 む。
 放射組織は1~3細胞幅で、単列のものは1~7細胞高、多列のものは3~30細胞高またはそれ以上である。その構成は異性で、単列部、ときに多列部の周縁の一部は直立細胞または方形細胞、多列部の大部分は平伏細胞からなる。
 材の気乾比重に0.83~1.31の記載があり、ふつうきわめて重硬である。収縮は大きく、強度は高く、縦圧縮強さ611kg/cm2の報告がある。
 乾燥は困難で、割れが出やすい。一般の切削加工はやや困難であるが、旋削は良好、接着・塗装性も良い。釘の保持力は大きい。心材は耐朽性があり虫害にも強い。
 家具の一部、櫛や道具の柄などの器具、農機具、車輪、旋削・彫刻による工芸品・玩具、ステッキその他に用いられる。耐摩耗性が大きいのでフローリング、敷板類に好適と考えられる。  
13.Olea rosea CRAIB
 Olea rosea CRAIB(異名Olea densiflora LI)はタイ、支那雲南省、インドシナに分布し、中国名を紅花木犀欖という。
 高さ2~15mの低木または高木で、小枝は黄褐色または褐色を呈し、細軟毛を密布する。葉は卵状楕円形などで長さ7~17.5cm、幅2~6.5cm、鋭尖頭ないし尾状鋭尖頭、基部は楔形~広楔形、全縁であるがときに不規則な疎鋸歯が出ることがあり、縁は やや反巻する。側脉は6~10対ある。革質で両面暗緑色、上面中肋に沿い微かに軟毛、下面中肋と側脉に沿い細軟毛を密布し、他の部分には軟毛を散生するが、ときにはほとんど無毛となる。葉柄の長さは0.5~1.5cmで、細軟毛を密布、または後に無毛と なる。
 頂生または腋生の円錐花序をつけ、軸に黄色の細軟毛を密布する。雑性異株で、雄花序の長さは2.5~14cm、花梗の長さは0.5~2mm、雄花は黄白色ときに淡紅紫色を呈する。がくの長さは0.5~1mmで、4裂片があり細軟毛を布く。花冠の長さは1.5~2.5mm で、4裂片は短くて長さ0.5~1mm、2個の雄ずいは花糸がきわめて短く、葯の長さは1mmである。両性花の花序の長さは通常1.2~3cm、まれに10cmまであり、花梗の長さは0~2mmである。がくは雄花と同様であるが、花冠は大きく長さ3~4mm、雄ずい2個と雌 ずい1個をもち、子房は長楕円形、無毛、花柱は短く、柱頭は2裂する。石果は長楕円形で長さ1.2~1.7cm、ときに不明瞭な縦条があり、熟して紅紫色を呈する。
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