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平井信二先生の樹木、木材研究

ブビンガ属の樹木(その1)
1.ブビンガ属
 ブビンガGuibourtiaはマメ科Leguminosaeジャケツイバラ亜科Subfam.Caesalpinioideae、またはマメ科の3亜科を独立の科とする場合のジャケツイバラCaesalpiniaceaeに属する。以前はきわめてよく似たコパイババルサムノキCopaiferaの中に含 められていたので、現在でもCopaiferaの中で扱われていることがある。ブビンガ属には15種ほどあるが、アフリカに10種ほど、熱帯アメリカに4種が分布している。
 おもに常緑の高木で刺は無い。葉はカニの爪のように対生した1対の小葉のみからなる複葉で、コパイパバルサムノキ属が小葉3個以上、ふつう6個から40個もある偶数または奇数羽状複葉をもつのと異なっている。この属の小葉は著しく左右不同で中肋 は上縁に片寄り、全縁である。小葉は無柄であるが、短い総葉柄をもつ。托葉は小さく早落性である。
 花は全体として頂生または腋生する円錐花序をなすが、その分枝に穂状につく。大きさは小さく、がく片がふつう4個あり、花弁を欠き、雄ずいがふつう10個あって離生する。雌ずいは1個である。果実は扁平な円形から楕円形の豆果で、左右不同、裂開 または不裂開である。種子は1ときに2個があり、仮種皮のあるものとないものとがある。
 材はブビンガGuibourtia tessmannii J.LEONARDを代表とする心材が紅色系統のものと、オバンコールGuibourtia ehie J.LEONARDを代表とする心材が褐色系統のものとにわけられる。その組織、性質と利用については次項以下に記載する。
 樹幹に滲出する樹脂からバルサム様のコーパルが得られるものがあり、また化石樹脂の原植物と考えられるものがある。それらについては各樹種の項で記す。そのほか種子を食用にするもの、葉、樹皮、根などを薬用とするものがある。  
2.ブビンガ類の名称と材の組織、性質、利用
 ブビンガ(bubinga)はアフリカ産で心材が紅色系統を示すGuibourtia tessmannii J.LEONARDの主な名称であるが、材では同じくアフリカ産で心材が紅色系統の他の2種Guibourtia pellegriniana J.LEONARD、Guibourtia demeusii J.LEONARDを区別せずに総称してbubingaとして扱うことが多い。ここでは名称および材について3種を一括して記し、原植物の形態などについては各項で記載する。
 カメルーンではbubingaのほかにessingang、赤道ギニアでoveng、ガボンでkevazinga、コンゴでwakaといい、アメリカ市場ではakumeの名がある。
 材は散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は幅3~8cmあり灰白色、淡黄色または灰褐色を呈する。心材は濃桃色から紅褐色で紫褐色の縞が入る。木理はほぼ通直または浅く交走し、ときに美しいもく(杢)が出る。肌目はやや精ないしやや粗である。
 道管は単独または2~4個がおもに放射方向に接続し、分布数は3~5/mm2、道管の径は0.04~0.26mmである。せん孔板は水平に近く単せん孔をもつ。接続道管相互間の有縁壁孔の径は約0.008mmで、ベスチャード壁孔である。材の基礎組織を形成するのは小 さい有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、その長さは1.6~1.9mm、径は0.015~0.025mm、壁厚は0.002~0.005mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織がおおよそ翼状ないし短い連合翼状柔組織に発達する。これらは放射方向の管孔の上下で1~3細胞層あり、翼状のものの接線方向に8細胞まで連なる。また放射方向に2~4細胞層のターミナル柔組織がやや不規則な生長輪間 隔で出現する。多室結晶細胞がある。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~5細胞幅であるが、多くは3~4細胞幅で、30細胞高まである。その構成は平伏細胞からなる同性である。シリカは認められない。細胞内に樹脂様物質を含む。
 材の気較比重に0.78~0.96の範囲の記載がある。収縮は中位程度で、強度とくに横引張強さが大きい。製材は比重の割合には困難でない。乾燥は困難で長時間を要し、割れや狂いが出やすい。心材の耐朽性は高い。
 家具、キャビネット、建築内装の壁面材に賞用され、ローズウッドの代用材としてスライスドベニヤで用いられることが多い。そのほか食卓器具の柄、ブラッシ背板など装飾用の器具材、彫刻、旋削物、寄木、また枕木などにも用いられる。わが国に輸 入されて、カリンに替わるものとして座卓、床柱、落し掛けなどに用いられるが、とくに長尺で直径が2cm以上の大径材があるので、最近は大太鼓の胴に使われているのが見られる。
 なおブビンガでも、カメルーンではGuibourtia tessmannii J.LEONARDが多く、ガボンではGuibourtia pellegriniana J.LEONARDが多く出材される。  
3.ブビンガ
 ブビンガの名は材では類似した3種を一括していうことが多いが、ここではGuibourtia tessmannii J.LEONARDに限定してその形態などを記す。ナイジェリア、カメルーン、ガボン、コンゴ、ザイールの熱帯西アフリカのやや乾燥した土地の森林に生ずる。カメルーンではbubingaのほかにessingangという。
 高さ30~50m、直径0.8~1.6m、大きいものは直径2~3mになる大高木である。樹幹は円柱状で枝下高は15~20mまたはそれ以上に達し、板根が出る。葉は対生する1対の小葉からなり、総葉柄の長さは1~3cm、小葉は長卵形で鎌状となり長さ8~14cm、鋭尖 頭、基部は甚しく左右不同の楔形である。全縁で、中助は上辺に片寄っている。小葉柄は全く無い。
 花は小さく、多数が長い穂状につき、それが複成して頂生または腋生の円錐花序となる。豆果はやや斜めに横臥した楕円形などで、長辺は3~4cm、革質で短い果柄をもつ。種子を1、ときに2個を含む。材の気乾比重に0.80~0.93の記載がある。  
4.ケバジンゴ
 ケバジンゴGuibourtia pellegriniana J.LEONARDはナイジェリア、カメルーン、ガボン、コンゴ、ザイール、カビンダの熱帯西アフリカに分布する。ナイジェリアでirun nduk、ガボーンでkevazingoという。ガボン産の材でブビンガとして扱われるものの主体である。カメルーン産のブビンガGuibourtia tessmannii J.LEONARDよりよいもく(杢)の材が多いという。
 大高木で、小葉2枚が対生する複葉をもつ。小葉は左右不同の長卵形などで、長さ約10cmほど、鋭尖頭、基部は著しく歪んだ楔形~円形で、全縁、中肋は上辺に甚しく片寄り、上側の幅は下側の幅の1/2以下である。きわめて短い小葉柄をもつ。
 豆果は横臥した楕円形などで、下辺に小さい突出部がある。革質で表面は鮫肌状をなす。
 材の気乾比重に0.94の記載がある。種子から油が得られる。  
5.コンゴコーパルノキ
 コンゴコーパルノキGuibourtia demeusii J.LEONARD(異名Copaifera demeusii HARMS)は熱帯西アフリカのカメルーン、ガボン、ザイールに生じ、英名をCongo copal treeという。
 高木で、樹幹基部に不規則な板根が出る。葉は対生する2個の小葉からなる複葉で、小葉は長卵形などを呈して鎌状となり、長さ約13cm、幅約6cm、鋭尖頭、基部は左右不同の楔形を示す。全縁で、若い葉に透明点が多くみられる。小葉柄はない。
 円錐花序を頂生または腋生し、白色の小い花をつける。豆果は横臥したいびつな楕円形などで、長径は3cmほど、頂部に目立たない微凸部があり、表面は平滑である。中に種子1個を含んでいる。
 材の気乾比重に0.78の記載があり、心材はGuibourtia tessmannii J.LEONARDと同様の紅色系統で、材質も同様で、これといっしょにしてbubingaとして利用される。
 コンゴ(ザイール)の沼沢地帯で掘り出される化石樹脂Congo copalはこの種を起源としているもので、Cameroon copalも同様であり、またAngola copalも同様であろうと考えられている。Congo copalは淡黄色から黄金色を呈し、比重は1.05、酸価100、けん化価125、屈折率1,540である。コンゴコーパル酸、コンゴコーパロール酸、コンゴレーンなどが検出されている。おもにワニスなどの塗料に用いられるが、その際にはロジン・エステルガムそ の他の天然樹脂と共融させるなどの処理がされる。  
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