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平井信二先生の樹木、木材研究

インドカリン属の樹木(その4)
15.アンダマンカリン
 アンダマンカリンPterocarpus dalbergioides ROXBURGHはアンダマン諸島のみに産し、padauk、Andaman padauk、Andaman rosewood、Andaman redwood、vermilion woodの呼称がある。和名にダルベルギオシタンということがあり、唐木でベニカリン(紅花櫚)およびシンヤマコウキ(新山紅木)というものはこの材ではないかといわれている。
 高さ30m、直径75cmまたはそれ以上になる常緑ときに半落葉の大高木である。板根は大きいが、その上部の樹幹はふつう通直な円柱状で、枝下は12mまたはそれ以上のものがある。葉は7~11個の小葉からなる奇数羽状複葉で、小葉は卵状長楕円形、卵状 皮針形など、鋭尖頭、広楔脚、側脉は5~8対あって目立つ。花は頂生の円錐花序につく。豆果は周縁の輪郭がやや不斉であるが円形に近く径5cmほど、ほとんど無毛、中央部に種子1個または2個を含む。
 環孔材。心材は紫色を帯びた淡紅色、紅褐色、濃紅色などで美しく、ふつう暗色の縞が現われる。木理は広い間隔で交走し肌目はやや粗い。縦断面で波状紋が見られ、材の水浸出液は螢光を発する。材はやや重硬で気乾比重の値に0.67~0.98の範囲の報 告があるが、0.80前後が普通と思われる。材質数値の例をあげると、生材から全乾までの全収縮率は接線方向4.4%、放射方向3.3%、強度的数値は含水率8.3%のもので縦圧縮強さ641kg/cm2、曲げ強さ1,064kg/cm2、曲げヤング係数12.5×10(4)kg/cm2、せん断 強さ111kg/cm2である。製材、切削加工は一般に著しく困難なことはないが、まさ目面では交走木理のためよい仕上げ面が得られないことがある。乾燥は遅いが欠点の出ることは少ない。目止めを適当にすれば塗装や研磨は支障なく行われる。釘打ちはや や困難で木ねじ保持力は良好である。材の耐朽性は高い。
 輸出もされている高級家具材の1つで、建築ではパネル、フローリング、手すり、ドアー、窓枠、カウンタートップなどの内部造作および装飾材、客車の内装、各種の器具、ボート、楽器の部材、寄木細工その他に用いられる。
16.その他の東南アジア産のインドカリン属の樹木
 Pterocarpus pedatus PIERREはインドシナ産でベトナムでdang huang、カンボジアでthnong、ラオスでdoukなどといい、仏名にsantal rouge、bois de roseがある。心材は橙紅色、紅褐色などで材の水浸出液は螢光を発する。材は重硬で気乾比重の値に0.85~1.01の記載がある。強度数値では気乾比重0.96のもので縦圧縮強さ908kg/cm2、曲げ強さ1,752kg/cm2があげられ、これはかなり高い値である。耐朽 性はきわめて高い。材が美しく強いので高級家具、キャビネットその他指物用材として用いられ、おそらくpadauk、カリンとして市場に出ているものにもこの種の材が含まれていると思われる。
 Pterocarpus cambodianus PIERREもインドシナ産で、前種と同じくベトナムでdang huang、カンボジアでthnongと呼ばれる。材の気乾比重に0.94~1.01の記載があり、材の性質および利用も前種とほとんど同様で、また区別せずに扱われているものと思われる。
 Pterocarpus blancoi MERRILLはフィリピン・ルソン島産でBlanco's narraの標準名があるが、現地名ではインドカリンPterocarpus indicus WILLDENOWと区別せずにnarra、asanaなどという。インドカリンにくらべて豆果が大きく葉が細いことでわけられるが、材では区別がつかず、あるいはインドカリンの1つの形であろうとも考えられている。
 Pterocarpus pubescens MERRILLもフィリピン・ルソン島の産で、標準名はhairy-leaf narraといい小枝、葉に毛が多い。きわめて稀である。
17.アフリカカリンの名称、分布と形態
 Pterocarpus soyouxii TAUBERTの和名にアフリカシタンが用いられることがあるが、アフリカカリンと呼ぶことを提唱したい。Pterocarpus santalinoides L'HERITIERはその異名である。ギニア湾周辺のナイジェリアからアンゴラにかけての海に近い熱帯降雨林に分布する。アフリカ産インドカリン属Pterocarpusは十数種あるが、この種が最も普通でまた重要材の1つである。英名でpadauk、African padauk、camwood、barwood、redwood、African sandalwood、独名でAfrikanisches Rotholz、Afrikanisches Korallenholz、仏名でpadouk、padouk corailという。なおpadauk、Afrian padaukには同属の他種も含めることがある。現地名はナイジェリアでosun、カメルーンでmuengeガボン、でm'kel、赤道ギニアでpa1o rojo、コンゴでkisese、ザイールでn'gula、アンゴラでtaculaなどという。
 高さ30m、直径1mにも達する常緑の中~大高木で、枝下はときに短いものもあるが長いものは15~20mに達するという。通常薄くて幅が広い板根があり、かなり高くまで伸び幹面はしばしば縦溝状の凹凸が出る。樹皮は灰褐色で縦の裂け目が入り薄い層に なって剥げる。葉は5~15個の小葉からなる奇数羽状複葉で小葉は長楕円形など、長さ5~8cm、鋭尖頭、基部は円形となる。長さ25cmまでの円錐花序は腋生し黄色の蝶形花をつける。豆果は薄い円板状でほぼ円形を呈し径は5~9cmあり、中央部のやや下よ りがふくらんで種子1個を含む。翼は幅が広く、柄に近い下縁に短い突出部がある。若いときは軟細毛があるが、やがて無毛になる。
18.アフリカカリンの材の組織
 生長輪はきわめて不明瞭で、またほとんど散孔材に近い道管の分布を示す。辺材は幅が広く、ときに20cmまでとなる。心材は紅褐色、濃紅色などでときに暗色の縞がある。木理は比較的通直かやや交走し肌目はふつうやや粗い。縦断面で波状紋が見られ る。材の水浸出液は螢光を発しないという。道管は多くは単独、まれに2~5個が放射方向などに接続する。互いに離れて存在し分布数はきわめて少なく0~3/mm2、円形または楕円形、径0.10~0.40mmであるが、大小のものが不規則に混在する傾向がある。
 道管の両側が放射組織と接触するものが多い。単せん孔でせん孔板は水平またはそれに近い。チロースが見られることがある。真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.003~0.005mmである。階段状に配列する傾向が強い。
 軸方向柔組織では単純な周囲柔組織はきわめて少なく、ほとんどが翼状柔組織となり、さらに連合翼状柔組織~独立型の帯状柔組織へと移行する。翼状柔組織では管孔の上下放射方向に1~4細胞層、接線方向に9細胞まで伸びる。連合翼状柔組織および帯 状柔組織は放射方向に1~7細胞層で4細胞層以上の厚いものが多い。縦断面で1個の隔壁をもつ隔壁柔細胞の形のものが見られる。柔細胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.0015mmである。放射組織は単列、ときに部分的2列で2~10細胞高であるが5~8細 胞高のものが多い。横断面で見ると出現数がきわめて多く、2個の放射組織にはさまれる繊維細胞数が1~3個のように極端なものが見られる。構成は平状細胞からなる同性である。階段状配列をして板目面で明瞭に認められる波状紋のもとをなしている。
19.アフリカカリンの材の性質と利用
 材はやや重硬で気乾比重に0.63~0.91の記載があり、0.70~0.75程度が平均的と考えられる。材質数値の例をあげると、生材から全乾までの全収縮率は接線方向4.1~5.4%、放射方向2.6~3.6%、体積6.4~10.6%、縦圧縮強さ748(674~815)kg/cm2、横圧 縮強さ180kg/cm2、横引張強さ19~25kg/cm2、曲げ比例限度871kg/cm2、曲げ強さ1,375(1,235~1660)kg/cm2、曲げヤング係数11.0~14.4×10(4)kg/cm2、せん断強さ75~85kg/cm2、割裂抵抗10.9~18.7kg/cm、衝撃曲げ吸収エネルギー0.45~0.85kg・m/cm2 、ブリネル硬さは横断面8.3kg/mm2、縦断面4.4kg/mm2、ヤンカ硬さは縦断面699kgである。これらの材質数値はかなり優良である。
 製材はさほど困難でないが、交走木理があるものにはステライト熔着鋸歯を使うことがすすめられている。乾燥は遅いが狂い、割れなどの欠点が出ることは少なく使用中の寸法安定度も高い。鉋削は交走木理を注意すれば一般に困難はなく、仕上がりが 良好で色が美しい光沢ある材面が得られる。釘および木ねじの保持力は良好で接着、塗装にもとくに支障はない。耐朽性、耐蟻性ともに高い。
 材が美しく強度が比較的大きく耐朽性があるので種々の用途に広く用いられるが、キャビネットを含む家具用材として最も高く評価されている。そのほか、建築造作および内装材、すなわちパネル・フローリング・階段・各種装飾材、車両・船舶の造作 および装飾材、ナイフの柄・電気機器の装備などの器具材、農機具、かい・オール、彫刻・寄木細工などの工芸品、玩具、楽器の部材その他がある。これらは、素材のままのほかスライスドベニアの形でも用いられる。現地では枕木、杭にも用いるという 。心材に水に不溶のサンタリンを含むので、かつて紅色染料として用いられたが、日光、アルカリで退色しやすい欠点がある。
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