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平井信二先生の樹木、木材研究

ユリノキ属の樹木(その2)
4.ユリノキの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は白色を呈し、生長が速い若齢木ではその幅が広い。心材は淡褐色、淡黄褐色ないし帯緑褐色で、ときに緑、青、紅、紫、黒などの縞が現れるものがある。生長輪はターミナル柔組織の同心円状の細線で認めるこ とができる。木理はふつう通直で、もく(杢)となるものはほとんどない。肌目は精、均質で、やや繻子様の光沢がある。原木の欠点は一般に少いが、凍製(蛇下がり)が出ることが報告されている。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~4個が接続、ときに団塊状に7個までが接続し、分布数は40~65/mm2である。単独道管の断面形は円形から楕円形でやや角ばっており、径は0.03~0.12mm2である。せん孔板は傾斜し、階段せん孔で、バーは3~6個 、ときに16個まであり、また縦の分割バーが出るものがある。接続道管の間の有縁壁孔は長方形に近く、横に対列状に配列し、これらの列の間には針葉樹の仮道管のものと同様のサニオ・バーが見られる。また一部の壁孔の孔口が横にのび互に結合するも のもある。チロースは見られない。
 材の基礎組織を形成するのは繊維状仮道管で、その有縁壁孔の孔口はスリット状である。長さは1.5(0.9~2.0)mm、径は0.015~0.03mm、壁厚は0.002~0.003mmである。
 軸方向柔組織では、放射方向に2~4細胞層をなすターミナル柔組織が明瞭で、周囲柔組織および単独散在の柔細胞はほとんど見られない。柔細胞の径は0.01~0.025mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は大部分が2細胞幅で、まれに部分的に3細胞幅のものがある。高さは3~40細胞高である。その構成は異性で、軸方向両端の1層と、ときに単列部となる2~3層目が直立細胞、他は平伏細胞の層である。細胞内に含有物は少い。  
5.ユリノキの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.40~0.56の範囲の記載があり、広葉樹材の中では中位ないしやや軽軟な方に入る。材質数値の例に次のものがある。生材から全乾までの全収縮率は接線方向8.2%、放射方向4.6%、体積12.7%、縦圧縮強さ388/cm2、横圧縮比例限度35kg /cm2、横引張強さ38kg/cm2、曲げ強さ707kg/cm2、曲げヤング係数10.5×10(4)・kg/cm2、せん断強さ83kg/cm2、ヤンカ硬さは縦断面245kgである。衝撃に対する評価は一般に高いと思われるが、また反対に脆いという記載も見られる。
 鋸断、切削加工は容易で、仕上げ面もふつう良好である。乾燥は容易で品質低下が少く、乾燥後の寸法は安定している。釘打ちでは割れを生じない。接着は良好で、着色、研磨、塗装にも問題はほとんどない。心材の耐朽性は低い。
 材は広く各方面に用いられる。すなわち建築内装・造作材、軽構造材、家具、各種器具、車両・船舶の内装材、ボート、ピアノの外囲材などの楽器、航空機、テレビ・ラジオのキャビネット、箱・包装材、乾燥物品の樽・容器、玩具、彫刻その他があげ られ、これらは素材、通常の合板、ランバーコアー合板の形で用いられる。またパーティクルボード、ファイバーボード、パルプ、木毛、木粉の用途もある。かつてアメリカ現住民はカヌーに多く用いた。またアメリカで航空機用材を目的にフェノール樹 脂を含浸あるいは圧縮して比重と強度を高め、また寸法の安定化を期待した硬化積層材の1群、compreg、impreg、staypakの研究試作が行われた。
 アメリカでは過去に大量に伐採され、国内の需要に対してのみならず、ヨーロッパに輸出されたが、現在は森林の蓄積が著しく少くなっている。
 木材以外の利用では、現住民は根および樹皮を強壮、解熱、健胃、利尿などの薬用にし、またリューマチ、関節炎などに外用し、家畜の駆虫にも用いた。近年になつて根皮に抗癌作用があるcostinolide、tulipinolideなどの有効成分の研究が始まり、 また心材に抗菌作用があるアルカロイドの存在が知られている。花は他のモクレン科の樹木と異なって蜜の分泌がきわめて多く、これをもとにした蜂蜜の品質は優良である。 
6.シナユリノキの概要
シナユリノキLiriodendron chinense SARGENT(異名Liriodendron tulipifera LINNAEUS var.chinense HEMSLEY)は支那本部地域、ベトナム北部の各地に散在して生じ、英名をChinese tulip tree、中国名を鵝掌楸、馬褂木、遮陽樹、鵝脚板、風荷樹という。
  高さ40m、直径1m以上までになる落葉高木で、樹皮は灰色を呈し、年とともに粗くなって縦の割れ目ができる。小枝は灰色または灰褐色を呈する。葉はユリノキLiriodendron tulipifera LINNAEUSと同様の特異な形であるが、やや小さく長さ4~16cm、頂端は幅が広く浅い凹形になり、基部近くの両辺が通常1個の裂片になって、その切れこみはユリノキよりも深い。各裂片の先端は急尖頭を示す。基部は通常切形から浅い心形を呈する。下面   は灰白色を帯び、老葉では乳頭状の白粉点を布く。葉柄は長さ4~16cmで、暗紅色を帯びることが多い。
  花は広い鐘形でユリノキより少し小く、がく片は3個で緑色、弯曲して垂れ下がり、花弁は6個で直立し、倒卵形、長さ30~40m、緑色で内面に黄色の縦の条紋がある。雄ずいは多数で、花糸の長さは5~6mm、葯の長さは10~16mmである。雌ずいは多数が   柱状の花床にらせん状に密につき、この雌ずい群は花期には花弁より上に超出する。集合果の長さは、7~9cmで、多数の翼果(堅果)からなり、堅果の先端は、鈍頭または鈍く僅かに尖がる。それぞれ1~2個の種子をもつ。花期は5月、果期は9~10月   である。

7.シナユリノキの材の組織、性質と材その他の利用
散孔材。辺・心材の区別はほぼ明瞭で、辺材は黄白色または僅かに紅褐色を帯び、幅は5~9cmである。心材は灰黄褐色、緑色を帯びた淡黄褐色、ときに紅褐色を呈する。生長輪はターミナル柔組織の存在で認めることができる。木理は通直または交走、 肌目は精で均質、光沢がある。特別な匂いや味はない。
道管は単独および放射方向に2~3、まれに5個まで接続、ときに団塊状に接続し、分布数の平均は59/mm2である。単独道管の断面形は円形、卵形または楕円形でやや角ばり、道管の接線方向の径の最大は0.09mmまたは以上であるが、多くは0.04~0.07 5mmである。せん孔板は傾斜し、階段せん孔、バーは1~10個ある。接続道管の間の有縁孔は横に対列状に配列し、長径は0.009~0.021mm、孔口は狭い。チロースはきわめて少い。材の基礎組織をなす繊維状仮道管の長さは1.6(1.0~2.1)mm、径は多くは0. 015~0.03mmである。
軸方向柔組織では、ターミナル柔組織が明瞭で、放射方向に3~7、多くは5~6細胞層がある。柔細胞の中に樹脂様物質、結晶は見られない。放射組織は1~4細胞幅で、単列はきわめて少い。1~41細胞高または以上であるが10~30細胞高のものが多い 。その構成は異性で、直立細胞または方形細胞の層と平伏細胞の層とからなる。細胞内に樹脂様物質、結晶は見られない。少数の油細胞がある。
材質数値に次の記載がある。気乾比重0.56、含水率1%当りの平均収縮率は接線方向0.34%、放射方向0.19%、体積0.55%、縦圧縮強さ366kg/cm3、曲げ強さ834kg/cm2、曲げヤング係数11.0×10(4)kg/cm2、衝撃曲げ吸収エネルギー0.82kg・m/cm2、ブリネル硬 さは横断面4.2kg/mm2、放射断面3.6kg/mm2、接線断面4.0kg/mm2。
鋸断面にけば立ちを生ずる傾向がある。乾燥は速く、割れの発生は少いが変形が出ることがある。接着は良好、釘の保持力は小さいが打ち込みで割れることは少い。材の耐朽性は低い。
素材または合板の形で建築内装・造作材、家具、器具、車両・船舶の内装材、包装箱、鉛筆の軸その他に用いられ、またソーダパルプの原料ともなる。
樹皮は中国で凹朴皮といい風邪などに用いられ、根は鵝掌楸根として強壮、リューマチなどの薬に使われる。
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