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神谷のインドネシア点描

『大統領になった夢』の巻き

少し前、インドネシア共和国大統領スシロ・バンバン・ユドヨノ氏は西部ジャワのチアケスに有る私邸に篭っておられました。何でも内閣の改造を画策しておられるとかで、私邸に大臣や大物政党人を呼びつけては新しい大臣の人選に励まれていたそうです。

そんな折、小職は偶然大統領私邸の近くを通りかかりました。小職は日本から来られた顧客と近くの高級住宅街を見に行った帰りでした。
お腹がすいたので適当なレストランを探していたのです。忘れもしません。10月14日の金曜日でした。車がすれ違い難い細い道を入ってゆくと報道車が居ました。
白バイも沢山居ました。一体こんな田舎で何の事件が起こったのだ?半信半疑で見渡しますとそこはイスラム教会(所謂モスク)でした。

『誰か来るの?』
『大統領』
『誰?』
『ユドヨノさん』
『ユドヨノさんってインドネシアの大統領?』
『そう、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領』
『何でこんな田舎のモスクにインドネシア共和国第6代大統領が来るの?』
『だってここは大統領の家の近所だもの。金曜日のお祈りに来るんだよ。』
てな運転手君との会話を通しまして初めてこの地区に大統領の私邸が有ることを知ったのです。

もう駄目です。仕事も客もほったらかしで興味だけがムクムク沸いてきます。
『私邸を見に行こう!』、
『駄目だ、警備が厳重だから追い返されるだけだよ。』
『大統領を見れる場所は無いのか?』
『近くに大統領がよく行くレストランがある、行ってみる?』
『よし、決まった、昼飯はそこでしよう!』

客の意向なんぞ無視、勝手に昼ごはんの種類を決めました。『ラーメンを食べましょう!』

それは、『ミー・バソー屋』。ミー・バソーとはMie(麺)Bakso(肉団子)と記す肉団子麺のことです。Baksoのkは無声音ですが、日本人はそのままバクソと発音します。余り耳心地の良き語感ではないのですが味がよければ全てよし。大変庶民的な料理であり、これを好んで食べる大統領に親近感が沸きました。いくら庶民的肉団子と言っても一国の国家元首が食べるぐらいなので何か特別な味付けがしてあるのだろう、と勝手に期待しました。

店に入るとミーバソー屋にしては立派。(比較対象が屋台なので立派と言ってもたかが知れていますが…)
従業員が注文を取りに来ました。
『本当に大統領がここに来るのか?』
『来るというより奥の扉の先が大統領の家なので配達するんだ、ときに注文は何にする?』
『扉の奥が大統領の家?、この店は大統領私邸の前に有るのか?』
『注文は何にする?』
運転手君に命令しました。
『ここまで来て他のものが食べれるか!大統領がいつも注文するものを頼め!』

来ました。
ミー・バソー(牛肉で作った肉団子に2種類の麺、黄色は小麦粉の麺で白色は米ベースのスーウンという細麺、まるで春雨みたい)これにお店自慢の自家製チリソース(インドネシア語でサンバル)をかけて食べるのだそうです。
運転手君からは、『あまりサンバルを掛けないで。辛すぎて食えないよ』と脅されました。が、あっという間に汁まで全て食べてしまいました。お客さんはサンバルを掛け過ぎて汗だくの大苦戦、『美味しい』とは言いながら赤い汁の入った麺を少し残してました。まさにこの時点までは大統領気分、一国のリーダーと言えども人間であることに変わりなし、同じ麺を食べて同じく美味しいと感ずる、『まかり間違えれば俺が大統領になっていても、おかしくはナシ!』

大統領気分はココまででした。その後出てきたのが問題、なんと『カキ氷』なのです。牛乳を掛けた白い中にフルーツの色んな色が浮く綺麗な姿をしておりますが間違いなく『カキ氷』です。小生は自慢じゃないけどインドネシア生活33年間、一度もカキ氷は食べてません。自慢じゃないけどインドネシアでは牛乳も飲んでおりません。理由は腹をこわすから。この不吉な食材が二つも合体、『下痢必至!』、です。

昔、カリマンタンはサマリンダの屋台街、『THG』、でとある屋台のメナド人娘ファリーダちゃんに惚れ、毎夜同好の日本人木材仲間と通い上げ、冷えてない泡ビールに氷を入れて飲み続けました。そしてみんな仲良く急性肝炎に罹り、そしてそしてフリーダちゃんにも振られました。悪夢の再来です。

お客様には、
『正露丸を持っているから大丈夫、運悪ければ45分ぐらいでトイレ行き!』と軽口を叩いておりましたが、自分の事となるとこれは思案もの…。

『何でカキ氷なんぞ注文したんだ!』文句を言われて運転手君は『だって、トアン(旦那というインドネシア語)が大統領と同じものを注文せい!、って言ったじゃないか、大統領もこのカキ氷を食べるそうだ。』と負けずに言い返します。大統領の食べる氷が当たるわけがない、インドネシア共和国第6代大統領殿が食べて当たれば即刻営業停止だ。食べてみるか…。

思案はまとまりました。美味しかったです。さあ、最後の仕事、画竜点睛、飛行場へ客を送ってゆこう。 出発!!!

よりによって高速道路に入ってから兆候が出ました。ベルトがキツイ、緩めてもキツイ、こっそりトイレ出来る場所を目で探すも高速道路上では隠れる場所もなし、運転手君に言いました。
『サービスエリアがあったら入れ!』
『ya pak!』…(英語のYes sir!)

脂汗を流しながら前を凝視するのですがそのような場所は見えてきません。
『どこに有るんだ?』、
『空港まで無いよ、有ったら入るけど…』…さてはさっきの意趣返しか!

我慢の限界が近い、お客様に恐る恐る言いました。
『急いではいるのですが、チョッとした事情が出来し、ホテルに寄って行きます』
運転手に厳命、
『高速を出て速やかにSultan(昔のHilton Hotel)へ入れ!』

立派なホテルのロビーを突っ切ってまっすぐトイレへ、と思ってもHilton時代とは勝手が違う、トイレどこ?…聞くのももどかしくコーヒーショップ奥のトイレに直行、 『ホッ!』

33年間インドネシアに居てもまだこの様な目に会うのです。油断と言えばそれまで、まさかインドネシア共和国第6代大統領殿が食している食べ物で当たるとは…店主は死刑ですね。

大統領の娘の結婚式がこの地区であるそうです。披露宴に地区名物として『ミーバソー』が供されるでしょうか???。


追伸)
小職の33年間にわたるインドネシアで生活で常備薬と言えるのは正露丸とバッファリンだけです。

バッファリンは痛み止めと解熱の両効果を持っております。特に下熱効果は抜群です。マラリアの高熱でうなされる時も絶食してバッファリンを飲み、汗が出るのを待つのです。

正露丸は当然、腹痛・下痢止めです。昔キャンプに入るときは5時間以上もロングボートやスピードボートに揺られました。一番困りますのはお腹がこわれてくることです。ボートにトイレはついておりません。川岸に着けマングローブの根に捉まって頑張った事があります。蚊の集中攻撃を浴びてどうしようもありません。木を握っている手を離して払えば仰向けに泥の中へひっくり返ります。払わなければ顔だけでなくむき出しになったお尻に攻撃が集ります。刺されるままにしておけばマラリアに罹る心配が出てきます。
『立ち(座り)往生、とは、まさにこの事です。』

広い海原でどうしようもなく、船外機に捉まってやった事もあります。同乗の従業員達に見られます。
『Jangan Lihat !  見るな、この野郎共!』

そこで正露丸の登場です。8粒から10粒ぐらい一挙に飲みますと数日間強制便秘を起こせます。2~3日のキャンプ入りでであればこれで十分です。正露丸にこんな効用があることをご存知でしたか?(御存知である必要もないか…)

便秘から戻るにはどうするって?簡単です。水を飲めばよいのです。45分で元に戻ります。

こうやって33年間インドネシアで生きてきました。バッファリンと正露丸に大感謝です。正露丸の箱書きに、木タール由来のクレヲソート使用と書いてありました。そこで恩返しを思い立ちました。インドネシアの炭焼き屋や椰子殻活性炭メーカーから木タールを買い付けるのです。日本では炭焼きがすたれ容易に木タールが入手できるとは思えません。インドネシアでは今でもオンドルやバーべキュー用に、懐かしいオガライトや炭を作って輸出しているのです。(ホームセンターなどで見かけます)
椰子殻活性炭も『冷蔵庫の友、キムコ』だけでなく、種々の化学工業原料となり、盛んに輸出されております。

果たしてこの恩返し、うまく行きますでしょうか?  2012年用の夢です。


モスク前の白バイ チリソース 扉の向こうが大統領私邸  食後のカキ氷 美味しいミーバソー 内閣改造 自家製肉団子製造中 報道車 正露丸 正露丸の主成分は木タール キャンプ入りの友、『正露丸』 大統領私邸 Sukowati

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