はしら」の次は「はり」であるが、梁がその意味に使われるようになるまでには変遷がある。
 原義は川魚を獲るための「やな」であり、このため字の中に「さんずい」が付いている。「跳梁跋扈」と言う四文字熟語は、怪魚が人間の仕掛けた梁を跳び越え、扈(竹で編んだ籠型の小さなやな)をすり抜けて、自由に水中を泳ぎ跳ねているさまで、さしずめ現代ならばどんな厳重なファイアウォールもものともせず、コンピューターネットワーク上を我がもの顔に暗躍しているハッカーの行動がぴったりである。  川の中の瀬や岩に丸太を渡して向こう岸に渡るのが梁「はし」である。高い川岸から見ると、「やな」と区別がつかないのでこの字を共用したと思われる。高水になれば流失するが、水が引けば手頃な木を切って復旧すると言う事故損失の小さいシステムである。  「はり」は、「はし」と同様に丸太を横にして使うことから、この字が使われるようになった。狭義では棟木と直角の方向の水平構造材が「はり」であるが、広義には棟木に平行なものを含んで「はり」としている。勾配を付けて使われるものは「登り梁」と言う。寄せ棟や方形の屋根には棟木と登り梁の二つの役割をする材があるが、これは「隅木(すみぎ)」と平凡な名前になっている。
 狭義の梁と直角な、つまり棟木に平行な横架材が桁である。家の面積を大きくするときに梁方向に伸ばすと軒を低くするか、棟を高くすることになってしまうので、桁を継ぎ足して伸ばす。このため、「桁行(けたゆき)」と言うのはその方向を指すだけでなく、家の大小を表す言葉にもなった。  橋桁は、橋脚から橋脚に渡す横架材である。川幅が広くなれば桁行が大きくなる点は建物と共通である。構造的には「はり」の位置にあり、「橋梁」と言いたくなる。 しかし、「橋梁」は、「橋も梁も含むすべてのはし」と言う意味として定着している。(次節参照)  ところで「桁違い」と言うのは、建築用語ではない。算盤の珠を刺している串を「けた」と言う。一桁違うと十倍の違いがあることからの慣用句である。建築での使われ方からすると、この串は、梁か間柱であって、五の珠と一の珠の間にあるのが「桁」のような気がする。