この漢字は、「たな」「さん」「かけはし」と三つの意味に使え荒れている。温泉で脱いだ浴衣を放り込む「桟(たな)」と、「桟敷席」との共通点から、板のような木を繰り返しくみ上げて造ったもののことであることが判る。その瀟洒なものが 障子の桟であって、和室の美しい佇まいを強調し、欧米の芸術家にインパクトを与えた。しかし、掃除の後で桟に残る埃の多寡は、新妻への姑の厳しいチェックの典型として 落語やドラマに登場し、新築住宅の仕様の決定権を握ったかつての新妻は、いまや障子の代わりにアルミサッシを選ぶようになってしまった。  「かけはし」は、異質のエリアを繋ぐ「懸け橋」と同音であり誤解され易い。急峻な岩山などを伝い登るために岩肌に沿って設けられた巾の狭い足場のような橋が桟(かけはし)である。谷底から見上げた桟(かけはし)は、か細い桟(さん)にしか見えない。長野県の「木曽の桟」は、対岸に渡るように設けられた例外であり、「粗末な橋」と言う程度の意味であろう。なお、橋の節の梯も「かけはし」と訓むが、これは「懸け橋」に近いように思う。
 桟橋は、岩壁に棚状に設けた桟のような舟着き場が陸と海の「はざま」であるのでこのような熟語になったと思われる。しかし、「かけはし」とともに、 足下が滑らないように桟(さん)が打ってあることが語源かもしれない。