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「健康住宅」とは何か 室内空気汚染を考える

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難問の数々

(1) 測定技術のむずかしさ
実験班は内装材料から揮発する科学物資を、実物大の部屋を使って測定することにした。そこで集合住宅の中の同形の三室を借り、 第一の部屋は化学物質が出そうな内装剤を使い、第二の部屋は化学物質が出ないであろう内装剤を使って仕上げた。第三の部屋はその中間に当たると思われる材料をつかった。

そしてこれらの 部屋の状態を、秋、冬、春、夏を通して測定する計画を立てたのである。現在はまだ経過の中間だから、明確なことはいえないが、三室のデータを見ると、数値は当初に予想していたような上下の関係を示していない。測定しているのはベテランの技術者だから、数値は正確だと考えて良い。そうだとすれば、この結果をどのように解釈したらよいか。私のような素人は、科学実験に対して甚だずさんなイメージがある。

試験管にいれた液に試薬を加えると、液の色がさっと変わって、濃度がすぐに読み取れると言ったような先入観を持っている。だが微量の化学物質の検出は、そんな簡単なものではないらしい。そのうえ同 じ室内といっても、測定機を置く位置によって空気の状態が違うし、家具などが傍あれば、その影響を受ける。人が室内に入れば測定値は狂う。

そのうえ空気はくせ者で、参考書の図にか いてあるようには動いてくれない。私は以前に木材乾燥をやった経験があるので、その点については理解できる。板を積んだ 間に入れる浅の大きさが変わっただけで、また板を並べる間隔を少し変えるだけで、空気の流れは変わってきて、こちらの思うように動いてくれない。三室の測定値がこちらの予想と食い違う理由はまだわからないが、ともかく測定が厄介らしいことは理解できた。

(2)供試材の選択のむずかしさ

これもまだ中間の段階だから明確なことはいえないが、ごく微量の測定の場合、本来なら含まれていないはずの化学物質が検出されることもあるらしい。これもまた私のような素人では理解しにくいことである。

(3)試験方法による違い

ホルムアルデヒドの測定についていえば、日本ではこれまで長い 間デシケーター法で測られて来た。しかし、最近はチャンバー法が国際的な測り方だと言う。しかしそのデーターはまだ多くないらしいから、両者の換算についても明確でないところがあるとのことである。

(4)換気と通風

室内の汚染物質を取り除くには、換気をすれば良いはずだが、 それには部屋の中の空気をよく攪拌する必要がある。そうでない換気扇を取りつけた付近の空気だけが排出されるから、いかに排気量が多くても部屋全体の清浄化にはならない。住宅の中で換気が最も強く要求されるのは、一番長い時間使われる居間と寝室だが、普通は空気の積拌についてあまり注意されていない。 換気の話が出るといつも思い出すのはホテルのことである。

各個室にはエアコンの送風装置が取り付けられているが、あの送風の中に新鮮な空気がどれだけ含まれているのか、部屋の中の空気をただ循環させているだけなのかを気にする人は、あま りいないようである。私たちは換気に対しては意外に鈍感な面がある。そのためしばしば酸欠の悲劇を起こすことになる。

従来の日本の家は自然換気されることが多いので、有害物質が出ても野外に放出された。しかし窓や扉がすきまなく閉まる高気密住宅では事情が大きく違う。マンションは気密性が高いので、シックハウスの弊害は特に多いとみるべきであろう。

(5)簡易な測定法に対する評価

最近ホルムアルデヒドの汚染度を手軽に測定できる機械が開発されて、市販品になっている。携帯可能で部屋の中に置くだけで濃度を読み取ることができる。たしかに便利だが、これまでに述べたように実験を見ていると、この測定器による制度は正確だろうと疑ってしまう。およその見当をつけるには便利だが、正確さを必要とする場合は、面倒でもやはり前記のようなオーソドックスな方法によるべきであろう。私が少しだけ気になるのは、この測定器が汚染度を測る武器になって、簡単にシックハウスのレッテルを貼るようなことがないだろうかということである。目の前でメーカーによって数字を出されると、絶対的なものだと信用してしまい勝ちだが、それでよいだろうか。 判定はくれぐれも慎重であって欲しいと思う。

(6)空気汚染と病気との関係

空気汚染の度合いが正確に測定できたとしても、それが病気の原因になっているということを証明するのは、さらに一層むずかしい。体験的にはこれが病気の原因になっていることは間違いないと思っても、その因果関係を科学的に証明せよと言われると、はたと壁にぶつかってしまう。

医学の立場からいうと、 化学物質過敏症という体質があって、一度化学物質に対する 過敏症を獲得してしまうと、その後はごく微量の場合でも、 反応をおこすようになり、しかもその対象は拡大していく傾向にあるという。人によって体質の条件がまちまちであるうえにその度合いがひどくなっていくとすれば、ますます犯人の追求 はむずかしい。以上のほかにも家の中には、建材ばかりでなく、 衣類の防虫剤、掃除用の薬剤、食器の漂白剤など、さまざまなものに化学物質が含まれている。屋外の大気汚染もあるし、 食材にも有害物質が含まれている。そうしたことを考慮に入れると、原因はどこにあるか、ますます分からなくなってしまう。