| 市居氏がこの自宅兼アトリエのシ
ーダ・バーンを設計する際に最も重
視したのが、この東洋思想、日本古
来の理念を採り入れた自然の家であ
った。
「和風というスタイルを継承する
のが和風の家ではない。簡潔で直截
的で機能的、しかも経済的。その理
念を自然な形で採り入れたものが日
本家屋であり、イコール健康住宅で
もある」。その言葉の通り、シーダ
・バーンには畳の部屋いわゆる和室
は無い。
古来の民家は全て板間であったこ
とも理由のひとつではあるが、当時
の人々が、身近な素材である木で自
分の生活スタイルに合った家屋を追
求した結果が民家なのであり、そう
云った意味を考えれば、現代の生活
様式に和の理念を採り入れた家が日
本家屋となるはずだ、との想いから
だ。 |
| 形式の継承ではなく、理念の継承。そこが最大の特徴でもある。
その中で拘ったのが素材感を大切いすること。
主要材には地場の国産杉材を活用し、薫製乾燥によって性能を安定化。
茶室にヒントを得て、柱材、貫材、床材は柿渋で塗装。極めて素朴な容
貌を演出する。構造材、内装材、下地材を差別化せず、全て素材のまま
の心地よさを求め、構造材が内装材であり、下地材でもある潔さが満ち
ている。床材には50mmの杉ムク板を採用しているが、それはそのまま下
階の天井材であり、極めてシンプルな構造となっている。壁には鉋屑な
どをセメントで固めたモクセン板を採用し、土壁の調湿作用、保温作用
などの実現と、ランダムな木質繊維模様で寛ぎを醸し出す。 |  |
新しくてどこか懐かしい居場所
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ここまで素朴で自然素材を活かす
家にしたのには様々な想いからであ
る。このシーダ・バーンの南隣には
市居氏の実家が在る。阪神大震災に
も耐えたその実家がやはり伝統的な
貫構造であったこともあるが、建築
家としての活動の場を拡げるため、
20年以上も京都市内のマンションに
家族で暮らしてきてそこから感じた
様々な想いから創られたのがシーダ
・バーンである。
気密性の高いコンクリートの枠の
中に住み、四季の無い生活の中で、
幼い頃に過ごした実家での暮らして
いた頃への回帰の念が強まり、自然
を感じられる家、住んでいて心が豊
かになる家に様々な試みを込めて着
手した。
各階に設けられた窓は、2本の太
い貫によって天窓、中窓、地窓に分
けられ、広い開口部と耐震性を両立。
窓にはカーテンも網戸も無い。
一階の窓は紙障子と雨戸のみでガ
ラスはなく、外気とは障子だけで区
切られている。二階以上は磨硝子を
採用し、やはりカーテンなどはない。
大きく開け放たれた窓からは常に風
が通り抜け、虫なども自由に入り込
んでくる。だから蚊取線香は欠かせ
ない。 |
| ちょと不便だが、愉しい家 |
| 「虫が入ってくる」と当初は驚い
ていた子供たちも今ではすっかり慣
れ親しみ、虫の声や風の音を感じて
和むことを覚えた。その中からは虫
さえも排除する暮らしで健康に暮ら
せるのかとの素朴な疑問も湧いてく
る。四季の自然を肌で感じ、虫の声
を聴いて豊かな情緒を育てられる家
こそが健康住宅ではないだろうか。
豊かな気持ちとは、そうした和みあ
から生まれるものであり、その字の
ごとく「和」の理念でもある。
部屋を突き通る通し柱には、割れ
が入ったものもあるが、背割りをし
て割れを防ぐよりも、最も弱い部分
が繊維方向に割れるほうが自然だと、
かえって気持ちいいと語る。
「様々な生活様式の変遷を経て、
不便さや利便性を考えて、網戸、ア
ルミサッシ、エアコン、高気密・高
断熱などが登場し、普及してきた。
その流れを否定はしないし、それを | 求める人にはそれもひとつの選択だ
とは思う。しかし自然と断絶してま
での快適より、夏には少しの暑さ、
冬には少しの寒さを感じる家のほう
が健康的だし、それを心地よいと思
える人も増えてきている」。
今後は、自分と同じように、多少
不便でも心地よく、自然で健康的な
家を求める生活者の方々に、同じ理
念の家を提供してゆきたいと語る。
共感できる工務店、加工場や素材メ
ーカーも募集中。それらのネットワ
ークを通じて、坪60万円台での提供
を目標としている。
取材の日も、目前に迫った冬季に
向けて、一階土間の大きな火鉢の手
入れを行っていた。気密性の高い家
では火鉢は無理ですからと笑う。木
組みの家シーダ・バーンで過ごす初
めての冬。あたたかい冬になりそう
だ。
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