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資源・環境保全と木材利用の関係

東京大学大学院農学生命科学研究科 有馬孝禮 

「都市の森林」の原点は地域の街造り

 地球環境保全や循環型社会の形成といわれるが、 循環の基本は「資源(環境)を守ること」と「資 源を自ら作り出すこと」にあるはずである。
とこ ろが「資源を守ること」という言葉が、「資源を 自ら作り出し、それを利用する」という生物資源 におけるもっとも基本的なことを疎外しつつある。
 化石資源に支えられ、資源を消費して発達した 都会に資源を自ら作り出すことを期待するのは無 理なのかもしれないが、何気なく使っている生態 系という言葉は生物の命の上に生物が存在してい るという系である。
今、生き生きとした資源の中 で人間の努力で生産し、持続、更新していける場 所は森林などの命を有した生物資源が身近に存在 する地域、田舎しかないように思われる。
 そのように考えると「木材の需要拡大」の掛け 声に期待される地域資源の活力は、単に販売ルー トを都市に頼ることではないようである。
すなわ ち、地域 活性化の視点は地元資源を生かした街造りであり、 元気で知恵と技術を有した都会の退職者をも迎え 容れることができるような、ふところの大きい仕 組み作りであるように思われる。
生き生きした街 で生産されたものでない限り、疲れた都市にとっ ても魅力はない。
建築物や街はある大きさをもち、動けないもの である。
したがってそこに永続的なあるいは再生 可能な資源がそこにあるならば、本来地域的なも のである。
最近、木材利用や自由度の増した公共 建築物や街造りに地元資源であるスギやカラマツ を利用して地域の活性化をしようという試みは多 くみられるようになってきた。
 そこでは木造の公共建築物の建設は単なるモニ ュメント的な箱ものではなく、それが利益を分け 合う信頼関係へとつながることが近年の流れから 徐々に理解されるようになってきた。
それは単な る一事業の成果や地域経済効果のみでなく、地域 での新しい技術の振興と以後の展開といった、地 域に波及し得る視点がもっとも重要になってきた。
 このようにみたときスギを代表とするとき国産 人工林の木材は「持続的な生産ができる」資源と して重要であり、その活力ある森林、山林は先祖 からこれからの世代へ受け継ぎ得る最大の資産で もある。
すなわち「資源・環境保全をめざした施 策や街造りの原点は地元の木材資源を活かすこと」 であり、それに寄せる期待は大きい。
しかしそこ で何より重要なことは、このように蒔かれた種あ るいは芽が出た後に、自ら水と栄養を与え育てよ うという努力と運用が地域活性化の原点であるこ とを忘れてはなるまい。
 すなわち、地域活性化こそ「都市の森林」の原 点であり、化石資源、鉱物資源から木質資源、生 物資源への移行は人類存亡に関わる永続的な課題 であるからである。
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