.

木のこころTOPに戻る

自然が生んだ木にしかない素晴らしさ
生命があるということは、 木について言えば、光合成を 行い、成長している状態は当 然でしょうが、それがすべて ではないことがわかります。
切られるということは、根 を切り、枝葉を落とし、光合 成をしたり、水分を汲み上げ ることを出来なくなることで すから、人間や他の生物を見 れば〝死〟であり、腐朽して 土に還って行くことを意味し ます。
ところが、木は、切られて、 割られたり、削られたりした 状態でも、温度と湿度の吸排 出をして、呼吸しています。
そしてさらに、体内組織を再 編成するかのように体質の転 換をはかり、長寿を準備しま す。
1~5年で切られて使わ れる他の植物も、手を加える ことによって長生きしますが、 それほど長寿を保つことはで きません。
それでも竹や葭は 長い方ですが、木が長寿であ るのは、やはり100年以上 もの間、大自然のエネルギー を体内に蓄積したからという よりほかにはないようです。
このように素晴しい生命力と 多くの特性を持つ木材を住ま いに生かさずに、何に使って いるのかを問い直してほしい のです。
木材の持つ特性については 本誌創刊号の特集「木は自然 の健康素材」で、優れた特性 テン・ベストにまとめていま す。
また、建築材料、特に内 装材としての木材の特性につ いては本誌第10号の特集「 内装にこそ木材を」の「内装に生きる木材の特性と役割」 の中で触れていますので参照 願えればと思います。
建築材料としての木材の働 きは、強度などでは最高では ないにしても、あらゆる面で 優等生的数値を持つマルチ優 素材です。
しかし、現代人 が好むところの数値的比較を 見ても、これほど各分野で優 れているだけでなく、組成が 持つ光や音の吸収と反射、電 磁波の吸収、手触り感等の特 性は、木材という植物性素材 こそが持っているものです。
それ以上に、木材が住まい の中で果たす役割は、生きて いるからもたらされるもので す。
その典型とも言えるもの が温度の調節、湿度の調節で あり、それと同時に行われる プラスイオンの吸収、マイナ スイオンの排出と芳香物質の 放散です。
そして木目が生む 〝ゆらぎ〟です。
〝ゆらぎ〟 は、物理的数値で表すことが できますが、それも木材が生 きていればこそより作用し、 脳神経に快刺激を与えてくれ るのです。
これらの総和と 木肌の持つ色合いが譲り出す のが和みであり、情緒です。
コンクリート、鉄、アルミ、 塩ビなどでは決して得られな い数々の効用こそが木材の特 性ですし、それは、100年以上 の自然が育てた植物性素材で、 生きて呼吸しているからです。

住まいに木を生かすうねりを
戦後における住宅の産業化、 ハウスメーカーの育成、資材 の規格化・工業化、化石燃料 資材化という政治的誘導があ りました。
木材の輸入化があ りました。
洋風住宅の讃美が あり、行政も建築家もこぞっ てRC住宅へ走りました。
すべてが林業と木材業界を 衰退させ、大工・工務店を圧 迫し、木材の利用と木造住宅 づくりを排斥する対米追随の 政策的リードだったのです。
その結果、木材と木造住宅 を知らない建築家が大量に育 てられ、木造主体の工務店も 激減し、大工も減少の一途を たどることになったのです。
鉄やコンクリートが建築の 主体であるかのような錯覚と 神話がつくられ、安価で施工 の容易な化石燃料資材や、施 工技術を問われことの少ない 規格工業製品が主流を占める ようになりました。
しかし、木造住宅の方が人 間や生物にとってはるかに快 適で、健康的だということは、 多くの人びとの共通認識とな っていますし、木造住宅を求 める人も急増しています。
自然・環境との共生問題等 は、ここでは触れるものでは ありませんが、生理的、肉体 的に及ぼす影響についての静 岡大学でのマウス実験につい て、本誌第4号「木の語り部 が語る 木のこころ」③で影 山弥太郎さんが紹介していま す。
詳細は省きますが、マウス を木と鉄とコンクリートの箱 の中で飼育し、その生態を観 察したものです。
同じ条件下 ありながら、生まれた子マウ スの23日後の生存率はそれ ぞれ85.1%、41.0%、6.9% という驚くほどの差で、木箱 の生体への影響の良さが示さ れていますし、その他、いく つも観察例が報告され、その いずれにおいても木箱の優位 性が実証されています。
コンクリート等の問題は、 別途改めて検討しますが、こ の実験例を見ても、自然の産 物である人間や動物にとって、 自然の植物性の素材・木材で つつまれた暮しが、生理的、 精神的、情緒的、肉体的にも 良いことは否定しようのない ものです。
数千年の長い木の文化を遮 断しようとしたかのような戦 後の数10年ですが、民族の 伝統を消し去ろうとすること は愚かな試みでしかありませ ん。
自然が生んだ、生きている 木につつまれた暮らしこそが、 情緒と健康を育て、日本らし さを育てることにつながるの です。
21世紀を前に、家づくり にしろ内装にしろ、いのちあ る木材を住まいに生かすうね りを一段と大きくしたいもの です。
木材業は山から川下への中枢を担う
ここまで林業の問題を中心 に考えてきました。
それは、 木の家づくりをこれからの日 本の家づくりの本流に押し広 げるためには、林業の問題を 離れて木材を考えることがで きないからです。
戦後の木材業のその多くが 、家づくりの担い手の役割を 放棄し、メーカーへの部材提 供業化したことと、外材の輸 入増加につれて国産材から離 れてしまいました。
しかも、 山から出される原木の多くは 、原木市場へ出荷されるよう になりました。
そのため、林業家は木を出 して売るだけ、製材・木材業 者は市場で買って製材加工し 、次の流通に回すだけ、とい う具合に相互関係が希薄にな ってしまいました。
各業種が自分の領分の仕事 をし、次の過程へ売るだけと いう流れを作ってしまったこ とで、家づくりや最終製品ま での流れにつながりがなくな り、それが流通の複雑さや価 格の不透明さを呼ぶ原因にな っています。
日本らしい木の家づくりを 広げるために欠くことのでき ないことが、最終ユーザーに までスッキリとパイプの通っ た家づくりの仕組みを作るこ とです。
そのためには、まず 、木を生み育てる山元からの パイプづくりが必要になりま す。
出発点は山元にあるのです から、この山元が不安定であ ったり、生きていけないよう では、国産材をたくさん使っ た家づくりなど及びもつかな くなります。
ですから、消費者も家づく りに携わる人も、木材業者も 、まず山に目を向け、一緒に 山づくり・森林づくりを考え てほしいと願っています。
とりわけ、家づくりへの参 加意識と具体的行動で最も立 ち遅れている木材業界は、川 上から川下までの中間の大部 分の領分を有しているのです から、自分の領分、自分たち の利益だけから出発するので はなく、山から始まる流れの 中枢になり、家づくりと結び つく努力を急いですすめなけ ればならない時です。
価格の問題、品質の問題、 入手方法の問題などの不審の 解明はここから始まることを 改めて考えてほしいものです。
.