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住まいに生かす銘木の趣き

日本らしさを育てる銘木を生かす

 

●建築界にこそ銘木を 視点と発想を変える第2は、建築家を中心にした木の家を実際に設計し、つくる人たちや一般生活者を対象にしたPRと製品づくりを行うことです。
 近年、一般生活者の木と木の家への関心と期待は急速に高まっています。
これは80年代後半からの自然志向、90年代に一気に高まった健康志向をひとつの背景にしています。
 もうひとつの背景は、自然志向、健康志向とも絡んでいますが、表面的な華やかさよりも内面的な質を重んずるようになり、本物志向がすすんできたからです。
そして、本物志向が向う先というのは、結局は、本来の日本的なもの、遥か祖先からの日本民族の叡智と経験が生きる日本らしさに行き着くことになります。
 ここに人びとが木と木の家を求める背景があり、この傾向が時流となりつつあります。
やがてこれが本流となる必然性を持っていると言えるでしょう。
 このような生活者の意識の変化が、同じように建築家の中から生まれ、広がり、生活者の意識と合流するようになってきています。
それがさらに、大工・工務店を励まし、勇気づける力になり始めているのが最近の流れです。
 ここには、当然ながら、建築材料としての木材への強い関心と期待があります。
山林への見学、生産現場への見学、木の家づくりについての様々な勉強会が多様な形で広がってきています。
古い民家の再生などもこの流れの一環として捉えると十分理解できることです。
 
このような動きが増えてきているのは、木と木の家について学び、知りたいという要求と同時に、現在の木材・銘木の流通からは、求める材料が入手できないからだと指摘されています。
価格面での不満もありますし、規格サイズでしか対応してもらえないという不満もあるからです。
 建築家や一般の生活者が、このような動きをはじめているのに対し、木材・銘木業界は、これに応えた対策をとりきれずにいます。
この関係から求められるのは、形状も規格ものとは限りません。
サイズも厚みも様々で、1枚の地板の場合も、家1軒分の板角類の場合もあります。
 そういう需要に対して、適価で提供できる仕組みづくりが求められているのであり、ここにこそ、無限の需要の広がりの可能性が秘められていると考えるべきでしょう。
●銘木とはどんなものか ここまで、銘木を中心にした業界の問題を書きましたが、では、銘木の実際はどうかについて触れておきます。
銘木として扱われるものは、大きく分けると原木からはじまって、半製品というような製材品、それに、加工されて製品化されたものというのが、ひとつの大きな枠組みです。
これらは、基本としては銘木市場で売られることになりますが、大径木を主にした原木から順次工程を経て行くもので、それぞれの段階でまた市場で取り扱われます。
 これらをすべて扱う総合的な市場もあれば、原木市場や製品市場もあります。
 この原木から製材して製品化という流れとは別に、天然木や人工林木の太くない丸太を直接加工して製品として市場で取り扱われる磨丸太や絞丸太というものもあります。
 ですから、銘木というのは、どの段階のものであれ、基本的には銘木市場で取り引きされたものが多く、業者によって販売されるという形が取られています。
 市場で買うことのできるのが、買方として契約している業者と協同組合の場合の組合員という枠があります。
建築家や工務店、一般の生活者が直接市場で購入できず、取引業者や協同組合員からしか購入できないことになっています。
この仕組みは、問題になりつつあるのですが、歴史的経緯がありますので一概には批判すべきでないのかもしれません。
 しかし従来の流通の見直しは、いよいよ必要になっていると言えるようでしょう。
 これとは別に、山元から直接購入する場合もあります。

〈原木〉 銘木の種類の概略を記すと、まず最初に出てくるのが原木です、言うまでもなく大径木で形が良く、木目に妙味のあるものが主対象ですが、そんな立派な木は随分少なくなりましたから、対象とする原木も様々になっています。
代表的な樹種は、本誌第15号まで続けた〝この木 どんな木〟にあるようなもので、その中でも針葉樹ではスギ、ヒノキ、マツ、サワラ、ヒバ、広葉樹ではケヤキ、ナラ、タモ、カバ(サクラ)、センなどが主なものです。
この内ナラ、タモ、カバ、センなどは広葉樹銘木市を経由するものがほとんどです。
 これらの原木は、天然林からの出材は極端に減少しており、今後一段と厳しいでしょうが、江戸時代以降のスギを中心とした植林木は、産地を中心にかなり残っていますし、樹齢100年前後の植林木もあります。
社寺林や民有林にも残されていますから、ないと言ってもまだかなり出てくると思われます。
 植林が難しく、研究の遅れた広葉樹の二次林は皆無に近い状態ですから、ケヤキなどはかなり厳しいものと言えます。
 しかし、マツや広葉樹については、国産材と比べて大差のない外国材は、減ったとは言え、まだかなり入荷していますから、無いようで、まだあると言えるでしょう。
〈製材品〉 製材品は針葉樹では、スギ、ヒノキの場合は、再加工材としてのツキ板用材とムク天井板用の盤・角材が主で、建具用材も多少市場に出ることもあります。
マツと広葉樹のケヤキは、床の間の地板や棚板、式台、カウンタ-用を主に板材として取引きされています。
広葉樹ではほかにトチなども板材として扱われています。
マツやケヤキは太角材で大黒柱用等で扱われるのもあります。
〈加工製品〉 製品で見ると、まずあげられるのが造作材です。
造作材は、大径木の一部と中径木から加工されるものが主で、鴨居(敷居)、長押、柱、廻り縁、竿縁、落し掛け、幕板、腰板などが、製品市場でも多く扱われます。
これらはスギが主ですがマツやヒノキ、ケヤキなども含まれます。
 加工製品には、これとは別に框、床柱をはじめとする床の間用材として、マツなどの針葉樹や、ケヤキ、カエデなどの広葉樹と唐木類(シタン、コクタン、カリン他)があります。
この中には彫り柱なども含まれます。
 加工製品で大きな比重を占めるものに天井板があります。
天井板はムク天井板と貼天井板に大別されます。
主にスギで、ヒノキ、広葉樹も少量ながら含まれています。
ムク天井板は中杢、杢、柾や尺角などの格天があります。
貼天井板に使用されているツキ板は、高級銘木を木取りしたものから作られるものが多く、板目の中杢、変化の美しい屋久杉や春白杉などからの様々な杢が主になります。
これらの天井板は、基本としては、和室の畳数で長さと巾、枚数が定められることになります。
 床の間用を主対象にした、ケヤキ等のツキ板を貼った化粧合板も加工製品の中に含まれます。
〈天然丸太〉 以上とは別に、直接7~20㎝の丸太を加工した天然丸太もしくは磨丸太類と呼ばれるものがあります。
磨丸太や、人造絞丸太(人絞)、天然絞丸太(天絞)、桁丸太、タルキ、海布、錆丸太、赤松皮付丸太、面皮柱、ムロなどの変木がそれに当たります。
 
このほかにもありますが、一般的に銘木市場で取り扱われているのは以上のようなものです。
●和のこころを育てる 銘木の活用 本誌第4号での銘木の分類と少し違った分け方ですが、用途別に見てもこれだけ多種多様です。
一般の建築用木材で扱われるのは、柱・土台・梁などの構造材、板類、小割材などで、用途としては銘木と同様なものも含まれています。
これにムクフロ-リング、階段、壁面用の化粧合板が建材ル-ト以外からも出ています。
 これが全体として建築用材とされる木材ということになりますが、種類としては銘木が扱うものがいかに多いかがわかります。
銘木の需要を考えると、一般材としては扱わない種類が多いのに需要が減少したのはどうしてかという問題があります。
これは住宅着工数の問題とは根本的に違うことを考えなければなりません。
 減少した理由は、銘木がそこにこだわった和室と床の間の減少と建材等の代替材の進出によるものです。
 特に用途を限定したかのような印象を与えていたことが致命的弱点で、これからの銘木は、もっと幅広い箇所で生かされるべきだろうと思います。
 原木の質の低下による一般的な銘木や、造作材、天然丸太類などは、価格的に見て木材一般に比べてそれほど高いものではないながら、そこにはキラリと光る銘木の味があるのですから、洋風、和風、洋室、和室を問わずに使えるものが多々あります。
 銘木業界が、このことをもっと広くアピ-ルし、提供システムをつくることがまず求められることです。
 建築関係者は、銘木の種類や用途を知り、それをそれぞれの建築の中で適材適所に活用することで生活空間に趣きを演出することで、生活者に喜ばれることになるはずです。
 流通形態が、一般の木材とはやや異なるル-トを持っていただけに、なかなか馴染まれず、建築関係の目に触れることが少なかった銘木ですが、早くオ-プンな姿で、建築材料のひとつとして見られ、扱われるようになる対策が求められています。
 「木のこころ」が、木材一般と同時に、銘木を取り上げるのは、木の家づくりを推進しながら、その中での銘木の使用が、一段と日本らしさをつくり出すことになるからです。
 このことは、銘木が高価なものだからではなく、何100年を生きた木の価値が光るからであり、〝侘び・寂び〟とか優雅と一口で言われる和のこころを表現するものだからです。
 和のこころは、本誌第3号の「住まいの文化と日本のこころを探る」の中で書いているように①不均斉、②簡素、③幽玄、④自然(じねん)、⑤静寂を包含しているのですが、和のこころは、趣きであると同時に、心を育てるものでもあります。
 和のこころを表現する銘木を生活空間に用いることは、和のこころ、日本らしさを人々の中に育てることになるのです。
 その意味で、銘木の幅広い活用を期待するものですし、木の家づくりとともに床の間の復活を期待してやみません。
              
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