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巻頭言

日本の文化の歴史と伝統を考える 

時代が少し動き始めたようです。
 90年代から、近代の限界が表面化し、その終焉を準備するかのような現象が相次ぎ、混迷と混沌の渦巻く中で21世紀を迎えました。
どこまで行っても出口が見えないようなもどかしさがありさまざまな矛盾が先送りされ、国民に犠牲を強いながら20世紀の幕が閉じたのですが、その弊害・矛盾・残滓はいたるところに残っています。
 それらを取り除き、乗り超えながら21世紀は進んでいくのですが、その転換の先触れと思われる変化が随所に出るようになりました。
目に見える動きのひとつが小泉内閣の誕生です。
一党内の問題を国民の意識で変えさせたと言っても良い変化でした。
3票ずつの地方票の圧勝をよんだすべては、政治・経済の過去と現状への拒絶、改革への要求という国民の意識の変化が党員の意識の変化を呼び、地方選での雪崩現象を生み、それを背に受けての本選挙での勝利だったと言えるものです。
 船出した小泉丸の前途が順風満帆であるとの想像は難しく、初めの始まりと考えるべきでしょうが、時代の変化は、時として誰もの予想をはるかに超えて一気にすすむことを教えています。
変革への過程は遅々としてすすまないように見えながら、その間にこそ変化の蓄積、変革への準備がすすんでいるのです。
その変革の担い手こそが国民一人ひとりです。
一人ひとりの未来を志向する意識のめざめとその進展、変革への思いが蓄積されて行けば、いずれかの時点で、何かのきっかけで、それがどこかの一点で表出します。
表出した変化が共振共鳴現象を呼び、燎原の火の如く一気に燃え広がります。
 21世紀初頭は、まさにそんな時代です。
政治と行政の腐敗と怠慢、経済の構造的矛盾と腐朽、教育・文化・道徳の頽廃と無見識等々への国民の不安や不満や怒りがあります。
その不満と怒りがめざめとなり、変革へと動き出せば時代が変わります。
21世紀初頭の今、そこへさしかかっているのです。
人々の意識は、確実に20世紀の概念を乗り越えて、大いなる変革への蓄積を強めています。
 現実に90年代以降の意識の変化を、至るところで見ることが出来るのですが、木と住まいについて見れば、9割以上の人が自然・健康・本物を求め、木と木の家を求めるようになっています。
家を求める人の8割以上は、本当は木の家を望んでいます。
 それを形にし、燎原の火の如く広げられないのは、意識の一段の変化へのいざないと、家づくりに関わる人たちの主体的努力とが足りないからと言わざるを得ません。
 意識の変化がまだ本物になりきれていないと言うしかないのですが、それは時代の見方と考え方、未来への志向の基礎を見定め切れないからだと思われます。
現実の様々な矛盾を目の当たりにし、西洋文明への限界を感じ、忌避感を持ちながら、それに代わるべき日本の素晴らしさと和のこころにめざめ切れていないからではないでしょうか。
 本号では、改めて根源に立ち返り、確信と気概をもって木の家づくりを広げるための基礎づくりの一助となればとの想いで編集しました。
 メインテーマは「日本の文化の歴史と伝統を考える」です。
特集Ⅰでは、古代から流れる木の家づくりの歩みと伝統民家の思想を考えました。
特集Ⅱでは、これまで立ち入ることを憚られてもいた、神代から受け継いでいる日本の精神文化と島国の四季が育てた日本人の感性について稿を起こしました。
 また、寄稿や取材記事で、日本の伝統を生かす家づくりや実証経験、住宅建築の課題などを掲載し、法改正に伴う接合金物への対応と課題の連載や新しい木構造への挑戦も田原賢さんと共に誌面を飾っています。
 まだ不況と混迷は続き、先は暗いようには見えながら、大転換への力の蓄積はすすんでいます。
大勢の人が背中で貨車を押しているシーンを思い起こせば、ただ押しているだけで一向に動きそうにない貨車が、一定の力が蓄積されるとコトりと動き、そこから徐々に動きを早めます。
今はそんな動き出すか出さないかの時であろうと思います。
力を合わせ、希望と確信を持って日本らしさの素晴らしさを誇り、和のこころを育てる家づくりをすすめてほしいと願っています。
           酒井哲夫
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