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木を生かす 木を育てる

地元の山に目を向けた家づくりもう一度自然の循環を取り戻そう!!

 

千葉市緑区/㈱松村工務店 中村 真也

●地元の山を生き返えらせるために木の家を建てようという動きが徐々に広まっているが、さらに一歩進んで、地元の木を使って家づくりを行うのが理想である。

木が使われなくなり、今、各地の多くの山は手入れもされず、放ったらかしにされ、荒れ、病んだ状態になっている。
そのような状況を見て、もう一度地元の材に目を向け、使い、生きた健康な森林を取り戻そうという動きが各地で行われている。
今回紹介する住宅は、千葉市緑区に、地元千葉の山のスギ、ヒノキを使ってつくられたものである。
この家の施主であり、設計士でもあるのが中村真也さん。
中村さんは、千葉で木を使い数々の住宅をつくってきたが、今回、自宅を新築することになった。

中村さんは、家の周りにある材料で家をつくる。
ごくあたりまえで、合理的なやり方なのに、いつのまにか忘れてしまったやり方である。
地元の木を使い、その地の風向きや光、地熱などの自然環境を充分に取り入れ、利用した家づくりである。
家もその土地の自然の中に組みこまれれば、住む人に対しても自然なはず。

高気密・高断熱で自然と対峙すれば、一時は住みごこちがいいかもしれないが無理も出てくる。
今ではこのような高気密・高断熱の家づくりが一般的になっている。
中村さんの家づくりのスタートは、住宅メーカーに勤め、木を使った住宅づくりとは異質な洋風住宅であった。
中村さんが学生時代、学校では木造のことなどあまり学ぶ機会もなく、その様な流れがごく自然な形であった。
勤めていた頃のことを振り返ると、契約マシーンになっていたと言う。
各地を飛び回り、建てた後じっくりと面倒を見ていくこともなかなかできなかった。
そんな状況に疑問を感じていた。
友達や知人の家を、仕事とは別に木造で手がけたりしているうちに、やりがいを感じてきたという。
数回転職を重ね、現在の松村工務店で働くこととなった。
地元密着型の工務店で、建てたあともずっと施主と付き合い、見守って行けるし、思う存分、木造住宅を手がけることもできる。

中村さんは、家づくりと同時に、〝ちばの山を愛する家造りネット〟という活動も行っている。
これは、県内の山林所有者・製材所・工務店などが手を取り合い、もう一度地元千葉の山に目を向け、再生させようというものである。
千葉の山のPR、地元の木を使った製品づくり等をおこない、地元の木を使うことで、もう一度、木の利用の循環を作りだし、山を生き返らせようとしている。
今回の家づくりもこの活動の一環ともなっている。
●実用性と遊び心を兼ね備えた家木造2階建てで、木をふんだんに使い、外断熱、ソーラーシステムを採用している。
2世帯住宅となっており、1階に中村さんの両親が、2階に中村さん夫婦とお子さんが住む。
建築に当たり、土地選定は、真南を向き風の通るところ、造成時切土のみであるところ(地耐力が5kN/M2以上であること)、道路・隣地間で高低さがないこと(外こう工事費削減・地熱を放出させない)などを考えて選定した。
また、その土地がもつ地熱を利用するなど、自然環境をふんだんに取り組むことを基本とした。
外壁はガルスパンだが、一部にスギ板に墨と柿渋と胡麻油を塗ったものを使用し、アクセントとなっている。
また、外から見ると、バルコニーの手摺に杉丸太を使用しており、外観を見るだけで、木をふんだんに使った家への期待を高くしてくれる。
玄関ポーチにはおがくず再利用の平板を使用。
玄関たたきタイルや石入れは中村さんの家族自らが参加して作った。

1階にはキッチン、広間、畳部屋、寝室、風呂、トイレを配置している。
広間、寝室とも、床に地元千葉の山のスギムクフローリングを使用している。
壁はラーチ合板をつむぎ織りアクセント貼りにしてあり、格子模様が美しい。
床、壁とも年月が経つごとにいい色合いに変化していくのが楽しみで、住む人と一緒に年を取れる家である。
畳室の襖は背高襖を使用することで、襖を開けた時には広間とのワンルームになる。
広間は屋根裏のロフトまで吹き抜けになっており、空気が流れ、陽の光が家の奥まで入ってくる。
2世帯住宅だが、吹き抜けによってお互いの気配も感じることができる

南面にスギでできたサンデッキも設けられ、外と内をつなぐ空間となる。
トイレ、風呂などの水回りを中心に、将来、介護が必要になった時のためのバリアフリー対策と安全性がほどこされている。
トイレは、介護必要時の充分なスペースを確保し、床にはコルク床を使用。
建具は引違い戸になっており、取り外すことも出来る。
洗面化粧台は、立っても、車椅子でも使えるように高さを調節できる作りである。
風呂場の戸は3枚引き戸となっている。
階段はヒノキのムク板で作られ、手摺にはとんかちの柄に使用される牛殺しという木材を使用し、自然の造形を生かしている。
2階には、キッチン、広間、寝室、子供室、広めに取られたクローゼット、トイレ、風呂などを配置。
2階の壁は一部タナクリーム塗りにし、モザイクタイルを埋めて、カラフルな印象を与えてくれる。
寝室と子供室の間仕切りは移動可能の収納ボックスになっていて、仕切りを外して1つの部屋にすることもできる。
広間には大きなテーブルを置き、家族が集まり、皆がリラックスしながら自由に過ごせるスペースとなる。
子供室と広間はすのこ渡り廊下でつながっており、雨天時など洗濯物を干すことも出来る。
吹き抜けの周囲は引き戸を設け、ガラスをはめ視線を曖昧にし、手摺はロープを用いてアレンジしている。
吹き抜けに目を移すと、籠がぶらさがっている。
これは猫のエレベータで、ロフト、二階を行き来する。
この他にも遊び心が至る所にちりばめられており、見ているだけでも、楽しそうな家である。
広間にはスギ1枚天板でできたオープン洗面がどっしりと設えてある。
朝顔を洗うときなど、広い空間で洗うだけで、1日を良い気分で過ごせることだろう。
1階のサンデッキと同様に2階にも広めに取られたバルコニーがある。
庇は日射調整のため深いつくりとなっている。

屋根裏はロフトになっていて、ここぞとばかりに中村さんの遊び心が発揮されているブランコ、ハンモックが吊るされ、子供の時に誰もがあこがれた隠れ家を実践している数々の選択肢がある中で、地元の木を使い、家を建てる姿は、大きなメッセージを発してくれるものだが、中村さんの設計した家はそれに遊び心がプラスされ、実用性がうまくミックスしたものだった。
今後も、地元材を利用した、住宅づくりを順次手がけていくという。
このような家が増えていくことで、木が切られ、使われて山に手が入り、山が生き返ることができる。
今は小さな流れでも、いつの日か大きな流れとなることを期待したい。

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