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21世紀の住まいに銘木を生かす

銘木業界に、今何が求められているか ~セミナーアンケートが教えるもの~

 

●木の家づくりの関係者の衰退
21世紀は木材と木の家の時代になるでしょうし、その流れはすでに生まれ、徐々に大きくなろうとしています。
戦後の歪められた住宅政策によって、木の家づくりが押し退けられ、大工・工務店と林業・木材業が著しく衰退させられました。
1960年代に比べれば、大工数は半分以下ですし、林業を放棄した林家も数知れず、木材業者数も30~40%減少しています。
これほどまでに木の家づくりに関係する業者・企業が激減したにもかかわらず、木材の総需要量は70年代前から年間約1億立方mを維持しているのです。
しかも新設住宅は近年まで増え続けていたのです。
ですから、日本の林業・木材や大工の減少は、木材利用量や住宅着工の増減とは必ずしも関連していないことになります。
むしろ、意図的に木の家づくりを押し潰し、国産材を使えなかったり、使いにくいようにして、中小零細業者と地場産業を倒産・転廃業と衰退へと追い込んできたのです。
 このことは、本誌第16号の特集「山を育て木の家をつくる」のその(2)「日本らしさを取り戻し、木の家づくりを広げよう」の中で触れているように、木の家づくりの減少を中心とする関連業種の衰退は、政治・行政とハウスメーカーなどの大企業の意図的な政策と意識的なミスリードによるものですが、同時に、すべての関連業種自身の認識不足と努力不足にも責任があると言わなければなりません。
外材化がすすむ中でこそ国産材をアピールし、需要を広げる努力が必要だった林業家も木材・銘木業界も、コスト競争でハウスメーカーに目を向けてしまい、木の家づくりを担う態勢をつくれませんでした。
建築関係者も洋風化を受け入れすぎて、木の家づくりを事実上放棄しています。
建築家は我先にと洋風住宅を讃美し、木造を学ぼうとせず、工務店の多くもハウスメーカーに身をすり寄せるかミニハウスメーカー化を志向しました。
政策的に洋風化がすすめられ、木の家づくりの担い手の多くが積極的な取り組みをしなかったのですから、木の家づくりがすたれたのは当然の成り行きだったとも言えるのです。
●改革への決断と勇気
ここで歴史を批判して責任を問うているのではありません。
それぞれに責任があるからこそ、これからどうするかが問われているのです。
誰もが努力らしい努力をしなかったから木の家づくりがすたれたということは、裏を返せば、みんなが立ち上がり、木をアピールし、木の家を示して行くならば、新しい広がりをつくれることを意味しているということになります。
国産材を中心とする木材の新しい需要の拡大と木の家づくりの盛り上がりをつくることは決して不可能なことではありません。
現実には、80~90%の人々が木の家を求めているのですから、この要求にいかに応えるかだけが問われていると言えるでしょう。
木の家を求めながら、それを求めきれないのは難しい理由があるからではありません「木の家は高いのでは?」「誰がつくってくれるの?」「木材は手に入れられるの?」という不安と疑問が大部分です。
この不安と疑問を解消することは、何の苦労もいらないのです。
建築関係者と木材関係者が手を結び、適価の家をつくり、PRすればいいだけのことです。
視点を、木の家を求めている人たちに向けるかどうかで、それができるかできないかが決まります。
銘木についても同じことです。
今まで誰を対象に銘木を供給しようとしてきたかを考え、視点を変えて新しい対象に供給する方策を打てばいいはずです。
特定の対象に、安定した相当量を供給することだけを考えるのではなく、銘木のファンを広げることこそが大切になっているはずです。
そのためには、現在の銘木の流れを改革して、もう少し開放することと、価格を納得のいくものにして公表するという決断と勇気が求められているのです。
現状に手をこまねいて悲嘆するよりも、勇気ある決断が必ず活路を拓くことになるでしょうし、道はそこにあるはずです。
●値段を公表せよ
昨年5月、本誌主催の「銘木見学セミナー」を大阪銘木協同組合で行いました。
建築家、工務店を中心に70数名に参加してもらいましたが、総じて好評でした。
7割の参加者がアンケートを残してくれましたが、このような企画への賛同が大部分で、もっと継続してほしいという声と、こんなにたくさんの銘木を見られてよかったという人がほとんどでした。

いかに銘木について、木の家づくりに関わる人たちが知識を持っていなかったか、いかに具体的なPRをしていなかったかがわかります。
しかし、多くの注文・要望もありました。
その一部を紹介します。
○銘木の素材特性や価格が全く解らないので、少しでも関係者に情報開示のきっかけになれば と思います。
○木の種類と値(金額)が書いてあったらよかった。
○すばらしい銘木に圧倒された。
端材等の即売があると聞いて、これを主目的にきたが無く て残念。
○大変参考になったが、あまり知識のない者の為に、セミナーの中だけでもおおよそのコスト が解るようにしてほしかった。
専門分野の人の常識は、他分野の人の常識ではないので。
○普段はほとんど縁のない世界を見ることができ、木材に対する世界が少し広がった。
もっと値段をはっきり言ってもらいたかった。
銘木を使うか使わないかは、その価値をはっきり知ることがまず最初である。
〈以下は「銘木を使うに当たっての希望はありますか」の問いに対して〉○安く購入できればと思う。
○価格の明示。
高級すし店みたいです。
○1枚、1本単位で入手できるルートがほしい。
○参加してみても、やっぱりさっぱり相場がわからない。
ある程度、わかりやすくならないも のか。
○個人的に施主と見学する場合の手続き、あるいは実際に購入する場合の手続き等を知りたい。
○材料個々の素性(伐採日、産地等)が明記してあれば、建主への説得力が及び、施工後の愛 着心が増すのではないか。
○日曜大工でもできそうな、テープルなどを作るに当たっても、個人で安く購入可能であれば と思う。
○価格をわかりやすく。
森林保護に対してどのようなことを行っているのか。
○もっと気やすく買えればよい。
○各銘木の値段を公表すべきだと思います。
○木のオブジェの素材としての使用を考えています。
運搬その他に関して知りたいと思ってい ます。
(どのようにして持ち帰り、アトリエに置くかということ)○明瞭な価格。
以上は、アンケートの一部ですが、この中から読みとれることは、銘木への関心は低くはないし、使えるものなら使いたいという気持ちがかなり強いことです。
ところが"銘木"と名がつくと何よりも先に出てくるのは「高い」という感覚です。
時価の高級寿司のように、価格の不明なものは、恐ろしくて手が出せないという見方をしている人が圧倒的に多いことがわかります。

価格の公表は、木材と銘木を普及する上での最大の課題となっています。
その価格も実際の数倍の値をつけたものや、上代価格という、相当額の取り扱いマージンを上乗せしたものではなく、実売価格の明示を基本にする必要があります。
最近の傾向から見れば、一部の建築家や工務店には、材料で高額な利益を稼ぐところもありますが、多くの真面目な建築家や工務店は、原価もしくは実費の上乗せしかしていないのですから、そのことを知った価格づけが求められていると思われます。
業界の常識は、業界外の非常識とまで言われるように、従来の銘木業界の固定概念を打ち破らなければならない時に来ているのです。
また、一口に銘木と言うものの、何を指して銘木と言うのか、どんな種類があるのかも案外知られていないのです。
「銘木の利用を」と呼びかけるだけでは漠然としすぎていることも知って、銘木のPRの仕方を工夫する必要がありますが、それ以上に見学や一般販売の工夫をした市場のある程度の開放が求められていることも考えなければならないでしょう。
先に書いたように、木材・銘木の不振の原因や背景はいろいろあるにしても、それに敗けない取り組みが弱すぎたことが、より厳しい不振を招いているのですから、21世紀に入って仕切り直しの決意で道を切り拓くことが求められていると言えるでしょう。
(酒井)

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