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ちょっとおかしな木のおはなし

1.木の実験| 2.生きる| 3.幸せの家] 大工さん| 5.巌流島の決闘| 6.樹のリストラ物語| 7.木製飛行機|

ああ日本の大工さん

大工さんは棟梁とも呼ばれています。そして家を建てる職人群の中では最も重きをおかれ尊敬もされています。その持っている技術は、どこの国の大工さんと比較しても圧倒的に高度な技術を有しています。しかしながら昨今大工さんのなり手はいません。「現場仕事の3Kだからなぁ」と短絡的に思われていますが、それでは建築現場に行ってみましょう。若い人はいくらでもいます。髪の毛染めたお兄ちゃんからピアスをつけまくったお兄ちゃんから、「そう、若い人の職場というのは建築現場かコンビニか」と思いたくもなります。ところがこと大工さんに関しては後継者がいません。(しかし2X4工法の大工さんには若い人がいますがこの理由は後を読んでください)。

「んーこれはやはり、大工の修行と言うのは5年も6年も徒弟奉公で鍛えられるから、最近のええかげんな若い奴は続かないのだろうな」と言う人もいますが、もっと徒弟奉公が厳しいにもかかわらず、若い人が入る業界もあります。

例えば「やくざ」の業界では新人の教育は大工さんの比ではありません。礼儀作法から始まって、商売の厳しさ、考え方の基本を若い間は徹底的にたたきこまれます。やくざの世界でまず新人に要求される人柄は「まじめな奴」なのです。そうでないと何年もの徒弟奉公に耐えられません。

それでは大工さんにはなぜ若い人がならないのでしょうか。一つは技術の習得に時間がかかることです。暴走族のお兄ちゃんが所帯をかまえて「さあ明日から俺もまじめに働くぞ」と思った時に5年も6年も給料半分では生活ができません。せめて半年ぐらいであればヨメさんの稼ぎで何とかはなるのでしょうが…と言うことで大工さんにはならずに他の建築の職を得ることになります。しかしもしここで大工の親方がいつもベンツに乗っていたら、時々は親方が銀座のバーへ連れて行ってくれたり、親方の豪華な家を見たら…・・「5年たったら、俺だって」と思う気持ちで我慢できます。つまりもう一つの理由は将来金持ちになれるかと言うことです。

これら2つの理由が大工職を志すかどうかのポイントになります。

「それじゃ今の大工さんはなぜ大工を志したのだ」と言うことになりますが、今の大工さんが弟子に志願したころは、大工の親方は高給取りだったのです、ですから田舎から弟子を呼んで、部屋に住まわせ、飯を食わせて小遣いを渡しても、親方は充分儲かって採算にあったのです。

はっきり言って家を建てることは他の職業と比較してもはるかに大きな創る喜びがあります、又、住宅の職人の中で最も高い技術者として一目おかれるのは最高の生きがいでもあります。

そんな大工という仕事に若い人が成りたいと思わせるためには、現在の在来工法を改良して半年で習得できるようにする(大工仕事を分業して、一部工程のみのエキスパートになることでも可)しかありません。まあ早い話しがアメリカの建築システムを真似るのが一番手っ取り早い方法ですが、日本の役所としてはハードを受け入れるのは抵抗がありませんがソフトを受け入れるのは非常に抵抗のあるところです。

故に最後に残された方法は、現在の大工さんが死に絶えるのを待って大工になれば、「最後の技術者」として非常な高給は間違いないばかりか、ノミ1本で家が建つなんて言うあの技術力なんぞはどう考えても人間国宝、悪くても勲五等はまちがいないところかと思います