1192.マツ


常緑の高木または低木。
分布は北海道から屋久島にまで。
世界でも約100種あるが、日本では6種が自生する。
人工造林としても、スギ、ヒノキ、カラマツに次いで多い。葉が二葉の黒松(クロマツ)、赤松(アカマツ)、琉球松(リュウキュウ(アカ)マツ)、五葉の五葉松(ゴヨウマツ)、這松(ハイマツ)、朝鮮五葉(チョウセンゴヨウ)、ヤクタネゴヨウがある。
一般にはこれらすべてをマツと称しているが、多くはクロマツ、アカマツの事を指すこともある。
木材、林業、造園、盆栽などの業界人はきっちり分けている。
オマツ、メマツとも呼ぶ事もあるが、雌雄の区別ではなく、葉はやや太めで葉先が痛いほど尖っている男性的なものを雄松(オマツ)、葉が細く葉先がそれほど痛くない、やわらかいので雌松(メマツ)と呼ばれたのが定着した。
日本の松は長寿と言われているが、実際は800年ぐらいらしい、しかし世界最高長寿の木は米国のブリスコンパインで松である。
クロマツは、海岸の防風林として広く造林されたことや、荒地にも根付く先駆的な樹種のため、一般に海辺に近い処で見られ、アカマツは、内陸部に多い。
両者の間の雑種もあり、アイグロマツと呼ばれている。
これらの松の性質は、一般的には比較的よく似ていて、特別でないかぎり、同じものと思ってさしつかえない。
日本を代表する木としては、先のスギや桜があるが、松を代表としても恥ずかしくないものだ。
昔から絵や歌、文学などに一番多く利用されてきている。
松の語源は非常に多く、またはっきりしない。
日本国語大辞典にはなんと20以上の説をあげている。
調べてみると大きく二つに分類される。
「待つ」に代表される動詞の言葉につながるものと葉の色や形に関するものとである。
つい最近のプレカットによる在来建築の家では、見ることが出来なくなったが、古来より、最近の家までの天井の上には、曲がった松の丸太が梁に使われていた。
曲がっている丸太は重さを分散するのに都合がよく、また粘りもあるので、利用されてきた。
最近古い民家を改良して喫茶店やレストランなどに改装するのがはやってして、とても雰囲気がいい。
こういう空間では黒光りした曲がった力強い松丸太を見ることができる。
植木屋にとっては松は特別なものであるようだ。
特にアカマツにかなう木はないと言う。
気品、優美さ、やさしさは庭木の王者の風格といっていいらしい。
特に幹のよさはすばらしく、座敷前に植えて幹だけを眺められるようにすることもあるという。
しかしアカマツは大気汚染に弱いため、都市部ではクロマツを使わざるを得ないが、アカマツがダメならクロマツがあるとは言いたくないと聞いたことがある。
松竹梅の3点セットはよく考えられたものと思う。
植物学的には松が裸子植物(らししょくぶつ)の代表で、竹が単子葉植物(たんしようしょくぶつ)の代表、梅が双子葉植物(そうしようしょくぶつ)の代表で、植物界の三界を表している。
そして驚くことには、正月のしめ縄飾りに使う、ウラジロは隠花植物の代表になるので、、正月の4点セットで、植物界全体の代表が揃うという事になる。
先人の賢さにはいつも敬服するばかりである。
私の祖父が大阪に店を出し、父が実質経営者で仕事を始めたのが杭丸太の仕事であった。
田舎からの世間知らずだったため、何回か人に騙されたりして苦労したようだが、それなりに発展し、私たちの会社の基礎を作った。
戦後の経済復興と高度成長のおかげでビルの基礎に、地下鉄工事、トンネル、埋め立てなどの工事に松や杭丸太矢が相当量使われた。
矢板は地下鉄やトンネルの土留め用に利用された。
松杭は当時のビルの基礎に利用されて、そのまま地中に残っているものも多い。
私たちの会社の仕事の中で、時々ビル解体時に引き抜いた松杭を引き取る事がある。
五十年間、地中でビルを支えてきた松杭だが、水をかけて、洗ってやると、みずみずしい松丸太に生まれ変わる。
新品の松丸太としてまた利用できるのである。
地中、特に水の中に入っている時は非常に耐久性がある木だ。
他の木についてもいえることだが、酸素の供給がない場所では腐朽菌は活動できないのである。
今の時代では数少ないエコロジーな産業資材だが、今はコンクリートの杭にとって変わられた。
住宅用としては松は木材が真っ直ぐでなく、また変色したりするので、特殊な銘木的利用以外は構造用に利用されてきた。
赤松皮付丸太は、茶室、数寄屋造りの床柱などに好んで用いられます。
それ以外の用途としては松共通として、車両材,船舶材,梱包材家具、器具、マッチの-軸木、つけ木、経木、木毛(もくもう)、薪、パルプ材、盆栽などが知られています。
かつて、パルプ用材として、は本来はエゾマツやトドマツなのだが、大量にあったマツ類をパルプ用材として推奨した結果、本州のマツの多い地域で重要な原料になった。
赤松は松茸の取れる木としても有名。
焼物の薪としても用いられる。
黒松は根株を不完全燃焼させて作ったススを松煙といい、墨、墨汁、黒色の印刷インク、靴墨などの原料として用いる。
樹皮の甘皮は「赤龍皮」として血止薬に、根に出来るキノコ(マツホド)「茯苓」は漢方で利尿剤や水腫、淋疾の治療に用いられる。
アカマツより重硬な良材でより樹脂分が多く、均質に含まれている。
面材として使用する場合、長い年月、空ぶきして磨くと重厚な光沢のあるものに仕上がる。
水戸松、道了松、沼津松、三河松、山陰松などが有名ですが 五葉松はアカマツなどに比重交すると木材は均一で、年輪は明らかではない。
肌目は精で、木理は通直である。
狂いは少なく、切削加工しやすい。
保存性は低いが、製品に狂いが少ないので、木型用材としてすぐれている。
現在では蓄積が少なくなり、ロシアから輸入されるベニマツ(チョウセンゴヨウマツ)が代用されている。

肥え松、肥松(こえまつ)はもともとは樹種ではなく、アカマツ、クロマツの老木の根に近い部分からとれる脂の多い材の事である。
材木屋の中でも、肥松という木があると思っている人もいる。
肥え松はあかまつよりもクロマツの方がよいものが取れると言われている。
これで作った器などは、太陽にかざすと真っ赤に透ける。
これで作った器やお盆は特有のベタつきがあり、若い人の中では嫌がることもあるが、自然の不思議なとこころで、2-3カ月使うとべたつきがなくなり、拭き込めば、拭き込むほど色艶が出てくる。
10年も使い込めば、漆器のようになってくる。
普通の漆器などはそんなに使うと艶が無くなったり、剥げたりするのに、肥え松の器はそんな新倍はいらなくて、長持ちする。
同様に昔から家の床の間の地板、棚板、床框に利用されてきた。
樹脂分の多い杢板は、黒松の大径木から得られるが、最近は脂松の得られる大径杢板が希少になってきたため、ほとんどの場合本物ではないのが残念だ。
ツキ板を張った合板や米松、ラオス松などがその役目になっている。
日本のアンデルセンといわれる浜田広介(ひろすけ)は童話作家として50余年、児童文学ひとすじに1000編余りの作品を残した。
処女作「黄金の稲束」をはじめ「むくどりのゆめ」「泣いた赤おに」「りゅうの目のなみだ」などが有名だが、「砂山の松」というのがある。
人間といすかの物語である。
神は人間といすかを作り、「最後のひとつは残しておけ」と言って地上にやる。
いすかの嘴は松笠の実を食べるのに好都合で、松林に住み着いた。
人間は生活に困って、松林の切ってゆく、おろおろと飛び回るイスカを見て、一本の松だけは残す。
いすかはひとつの松の実を食べ残して死ぬ。
10年数年の歳月が過ぎ、実は松となり、海を渡るツバメがその木で翼を休める場所になるのである。
広介は当時の発展する世界と比較して、古来からの習慣にある、全部収穫せずに、ひとつは残す先祖から受け告げられてきた知恵がなくなることに、危機を感じたのではないか。
森林を切る場合でもこのように、全部切り倒すのではなく、いくつかの母樹(ぼじゅ)を残すやり方もある。
バーなどで注文するミックスナッツの中には、松の実が入っている事がある。
マツカサ(まつぼっくり)は種鱗(うろこ)に覆われているが、熟すると割れ、外側に反り返えってくる。
そのうろこの下に一対の種子(実)が入っている。
種子は翼があるものとないものがある。
アカマツ、クロマツは長い翼がある。
そして種子は小さい。
遠くに飛ぶためだろう。
ハイマツ、チョウセンゴヨウなどは翼がなく、種子は大きい。
これは動物に運んでもらうためだろう。
ゴヨウマツは中間で、小さな翼をつけている。
アカマツ、クロマツは食するには小さすぎ、ヤニ臭さがある。
ハイマツ、チョウセンゴヨウは大きさも適当にあるが、地域的に限られる。
それで市販されている実は、ほとんど中国からのものである。
松の実はマツカサの中にある種子の胚乳で、その70%が脂質(ししつ)のため、滋養強壮効果がある。
中国では「長生果(ちょうせいか)」と言われている。
脂質の約60%が不飽和脂肪酸なので「血液さらさら効果」もあり、新陳代謝を高めるビダミンB2も豊富。
栄養価が高くも、癖のない味だからだろうか、和洋の菓子や料理に使われている。
オーブンで140度で12分ほど焼くと、香ばしくなって、より美味しくなる。
岩手県、群馬県、島根県、岡山県、山口県、福井県、愛媛県、沖縄県はそれぞれ松を県木としている。
写真
気比の松原 拡大 日本三太松原のひとつ 写真 
この木に関する俳句まつ童話 「砂山の松」