今治地方の森林整備の背景・歴史


 蒼社川流域に属する愛媛県今治地方は長年にわたり、降れば洪水、降らなければ旱ばつという頻繁な災害に見舞われてきた地域であった。
 この地方の山地がもっとも山崩れの起こりやすい花崗岩風化土に覆われた急峻な山地であること、また蒼社川が急勾配の河川であり大雨で流れ出す土砂が河床を上昇させ流路の不安定な天井川にしたことが原因となった。

 当地域の森林管理は、藩直轄の御留山、野山と称する藩管理下で農民が薪炭材、牛馬の飼料、耕地肥料を採取する山林原野、そして民有林があった。明治政府の発足とともに、“野山”の帰属問題が起き、農民側は従来慣例から所有権を主張するも、管理収益権は認めても所有権は県側にあるとの見解がとられていたが、地域の運動の結果、明治23年にいたり、流域14町村(明治22年市制町村制施行前は63カ村)の共有林として2、500haの所有権が認められ、明治24年に組合が設立された。その後の町村合併の結果、現在は“今治市・玉川町及び朝倉村共有山組合”(以下組合という)という名称で森林の経営が行われている。

 一方、この時期は洪水の相次いだ時代であり、明治30年の森林法の制定、その後、山林植樹費用補助規定などが定められ、組合による植林も明治36年から開始された。組合林の現況は 、総面積2、470ha、直営林1、382ha、部分林(分収造林)1、088ha、植栽率総合71%、直営林78%、部分林62%である。本組合林の特徴は人工林化率および高齢級林分を有する直営林と地域参加の部分林及び学校林からなっていることである。


 組合は昭和62年以降、共有山林の全面的複層林化に向かって森林整備を開始した。開始12年後の平成10年度末時点での下木植栽による複層林化面積は349haに達している。
 
 なお平成3年9月の19号台風は我が国の森林に激甚な被害をもたらしたが、この時点での組合林の80haの複層林については幸い2haの被害地の発生に止まった。
 
 今治地方の複層林造成について実行者は高い意欲を持って取り組んでおり、地域の理解、協力のレベルも高いと見られている。
 しかし今後の複層林化の持続的実施については資金的あるいは技術的な課題も多いと考えられるところであり、水源の涵養、カーボンシンク機能、良質材の持続的供給等に貢献する複層林の推進について、地域および国民各層はより高い関心を持っていただきたいと考えている。
          




明治26年10月の災害









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