複層林化へのチャレンジ


 共有山組合は昭和62年以降、共有山林の全面的複層林化に向かって森林整備を開始した。
 すなわち、組合林全面積、2、413haのうち1、842haの森林について複層林化計画を有している。
 平成10年度までの複層林化の実績(下木植栽完了)は、349haに達している。
 一連の団地で2、000ha近い複層林化計画は全国的にも例を見ない規模である。
 
 以下に本共有林における複層林化の考え方を述べる。
 まず複層林への切替えの時期であるが、基本を40年生から50年生の間においている。したがって準備施業として、20年生前後までに、森林の状況すなわち通直な林木の多少に着目し、通直木の多い林分についてはha当たり1、400本程度を選んで枝打ちを行う、通直木の少ない林分についてはha当たり1、100本程度につき枝打ちを行う。この内の一部については、さらに枝打ち高を上げて50年生で枝打ちを実施するものが300本程とし、最終的には60年生で100本について枝下12mまで枝打ちを行う。なお間伐は並行して行う。形質不良木については、積極的に間伐することにより、地力が不良木に吸収されるのを防ぎ、優良木に吸収させることにより間伐(強度)林分の蓄積増を無間伐林分より高めることが可能であるとしている。なお間伐実施により下草も生え林地保全効果があるとしている。人工林の6割がヒノキ林であり、これに重点をおいた複層林施業体系となっている。典型的な体系について述べれば、つぎのようになる。
 
 すなわち上木および下木ともヒノキとし、伐期は100年とし、収入間伐を林齢30年から10年ごとに実施する。本数伐採率は30年で40%(残存本数1、140本以下同様)、40年で下木植裁予備伐として30%(800本)、50年で更新伐40%(500本)を行い、下木植裁ha当たり2、000本を行う。その後は10年ごとに上木について受光伐を行うが、これは60年で40%(290本)、70年で30%(200本)、残った200本について100年までの間に100本程度収穫を行いさらに残った100本については100年あるいはそれ以上まで残す。100年時点で下木は50年生になっているが、50年以上残すものは400本程度とし、この時点で2、000本の苗木植裁を行うこととしている。この施業体系は、長期二段林を経て常時二段林あるいは多段林へ移行するタイプといえよう。
 
 施業体系としては、このほかヒノキの130年伐期型、上木スギ、下木ヒノキの110年伐期型などがある。
 上木50年生まで相当強度の間伐実施となるため、下木植裁後は4回程度の下刈を必要とするが、林内下刈のため経費については、実験例では通常の3分の1程度ですむということである。
 しかし収支を考えた場合、70〜80年あるいは100年以上の枝打ち高級材になってはじめて収入が得られるものであり、現在の育林体系でかつ現在の市場価格で売却し、通常の生活給を支払う時は、その収益でできることといえば小さい苗木を植えるところまでで、枝打ち間伐など将来に備える経費については捻出できず、10年以上経過して若干の収入があっても、事業としては経営できるものとはならないとし、さらに「柱材・板材中心の短伐期経営体系を非皆伐複層林化と長伐期高付加価値材育成体系への切替えをするための間の財政面からの支援を、国・地方公共団体住民一体となっての支えの中でなければ、公共財・環境財としての森林への転換はできないだろう。
 一方この長伐期大径材搬出の基盤、すなわち路網と近代的機械の開発面での国をあげての努力が急がれるべきである。そのことにより、森林が公共財・環境財としての使命を果たし得る緑の山となると同時に保続経営の成り立つ森林への転換」という構造改革こそ国家的課題であると訴えている。
 今治地方の複層林化計画は実現に向けての努力がはじまったところである。しかも技術的にも難しいとされる長期(常時)二段林施業であるのみならず、長伐期による高蓄積化を行いながら10年間隔という短期的上木および下木の収穫を行うという高循環施業である。
 さらに風雪害などの気象災害に対する取組みとして、つぎのような提言をしている。すなわち@台風災害の起こりやすい風道、雪害の多発地などにはスギ、ヒノキとくに超長伐期林についてはできるだけ避けケヤキ、トチなどの有用広葉樹の植裁や、針葉樹でも除伐、間伐、枝打ちなどを早期に実施し災害に強い森づくりを考えるとともに少なくとも過去50年以上の災害地図を作るべきである。A針葉樹の植裁については浅根性の樹種と深根性の樹種の混合や広葉樹を含めた混交林を考えるなどである。
 なお平成3年9月の19号台風被害については組合の80haの複層林については2haの被害地が生じ、300m2 の標準地調査結果は上木13本のうち倒木11本、下木53本のうち、無被害24本(45%)、倒伏ただし回復可能17本(32%)、回復不可能など12本(23%)であった。また間伐枝打ち済み林分660ha(ha当たり立木本数1、000〜1、300本)の被災面積は4ha程度であったとのことで、無施業林地との比較はできないが、軽微な被害と受け止められている。
 以上のように、木材利用も含めた複層林造成について高い意欲を持って推進がはかられているところである。




 戻 る