木の土中貯蔵の可能性を探る


森林が二酸化炭素を吸収してカーボンシンクとなり、地球温暖化の防止に貢献することについて期待が高まっていますが、現状の森林だけでは人間が排出する二酸化炭素の吸収は困難です。
そこで第二、第三の森を増やすことを考える必要があります。
具体的には、都市部の緑化などを進めることが有効ですが、さらに地中にカーボンシンクを作ることも考えられます。
これを可能にするヒントとして、かつて地中に打ち込まれた木杭などの状態を調査することが重要です。
ここでは長年月地中にあって、最近再び姿を現した木について紹介します。


事例1.70数年を経た旧丸ビル跡地の木杭(松杭)

1920に起工された旧丸ビルの基礎は、松杭支持の独立フーチング基礎であり、使用された松杭は米国北オレゴン松丸太(ダグラスファー)でした。(注、ダグラスファーは米松あるいはオレゴンパインなどとも呼ばれていますが、樹木の分類学上は、マツ科に属するものではなく、モミ科のトガサワラ属に分類されます。学名は Pseudotsuga taxifolia です。)
木杭は全部で5443本打ち込まれましたが、長さは2種類で、50フィート(15メートル)のものが1350本、45フィート(13.5メートル)のものが4093本使用されました。なお杭の径はおよそ30cmとのことです。
これらの木杭は、柱1本あたり、20〜30本打たれ、GL-20mの東京礫層にまで達していました。
杭の支持力は1本あたり15〜20t程度とのことです。
大正末期から昭和30年代前半までビル建築などの支持杭として米マツが使用され、旧丸ビルはその初期のものとのことです。

(photo by Fusho Ozawa)


先端から約2メートルの切断面、年輪数25程度、直径約25センチメートル
 


引き抜いているところ





地下の巨大森林について皆で考えてみませんか

旧丸ビルの敷地は丁度1ヘクタールです。
一方、地中に打ち込まれていた木杭の材積はどのくらいになると思いますか。
写真の杭から最小径を24センチ(カット面の径を25センチとし先端部の径を24センチと推定)として計算してみましょう。
15メートルの杭の場合は、24+(15−4)/2 すなわち29.5となりますが、材積は、29.5の2乗×15÷10000すなわち1.305立方メートルとなります。
同様13.5メートルの杭の場合は、最小径を仮に23センチとして計算しますと、杭一本あたりの材積は、23+(13−4)/2
すなわち27.5から、27.5の2乗×13.5÷10000すなわち1.020立方メートルとなります。
したがつて木杭の総材積は、杭の長さ別の本数に一本あたりの材積を掛けた数値の和ということになります。
すなわち、
1.305×1350+1.020×4093=5937 立方メートルという驚くべき数字になります。
一方、林分収穫表から天城地方のスギ人工林1ヘクタール、地位中、林齢50年の幹材積は約500立方メートルとなっていることからして、旧丸ビルの木杭の材積5千9百37立方メートルという数字は大変巨大な森林が地中に存在していたということを意味するわけです。
このことから地中は巨大なエコマテリアルの貯蔵庫としての可能性を持つことがわかるではありませんか。
(なお、旧丸ビル跡地の木杭の材積については、ここで算出したものは、おおよその計算であることをご承知おきください。)


事例2.汐留埋蔵文化財発掘作業現地

現在発掘作業が行われている写真の地区は、元会津藩中屋敷跡で1600年代の建設といわれます。
江戸時代は玉川上水の末端にあたる当地区では給水用の木製樋などが発掘されているほか、木杭については、江戸時代、明治期における鉄道馬車駅時代、大正期以後の貨物駅時代など各期にわたるものが発掘されています。
なおこれらの保存状態は、海抜0メートル地帯ということもあり、かなり良い状態です。今後木の種類、質的変化等各種分析が必要と考えられます。





突き出ている杭は関東大震災以降のものと考えられています。




1600年代あるいはそれ以降の江戸時代の給水施設





給水用の樋



 明治期以降の木杭


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