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木材流通とは

第6章 材価格のメカニズムと対応策

建築業者も、木のことを知りたいと思っている

 そこで、少なくともこれから一〇年間は、価格の問題、PRの問題、設計業者に対する木材知識の問題、供給体制の問題、木造官庁建築問題などをめぐって、さまざまな取り組みがなされねばならないわけですが、実際に国産材を使っての展示を各地で実施するといった努力は、民間だけでも力不足だし、役所だけでは下手だしということがあるので、官民双方が一緒になってやらなければならない、ということになりましょう。

 建設省がほとんどその資金を出している住宅センターというのが、大阪にあります。最近、そこへ寄せられる住宅関係の苦情の中で、木材に関する苦情が大変多いのです。しかも、その苦情は、消費者も建築関係者も木材を知らないことからでてくることが少なくありません。現場の建築主任さんが説明できればすぐに解決される問題が多くある。具体的に言いますと、集成材の柱の切れ端が現場に残っていた。それを建て主の奥さんがみつけて、「あんた、この家の中心になる柱が悪い木を寄せ集めた木じゃないの、こんなもので家建てられたらかなわんわ」と文句を言ったわけです。そうすると、建築現場の主任さんが、「いや、それはー、あのー」と言って頭をかく。建造用集成材の方が無垢の木よりも強度があるという説明ができないわけです。そこで住宅センターに苦情が持ち込まれてくる。住宅センターの方で、「これはこういうもので、一般の無垢の桧よりも強いのです」と説明すると、「ああそうですか、それはよく分かりました。主任さんがそう言ってくれたらこんな所へ持ち込むのではなかったのに」というようなことがよくあります。もっとも、集成材業界は盛んに講演会を開いているので、このような「つぎはぎだらけの弱い柱を使って」と腹を立てた主婦や現場主任は少なくなったようです。地道な積み上げの結果でしょう。

 二年前から大阪で、建築設計業者および役所の建築課の方々、大手建設業者を対象に木材知識講習会を開いていますが、大手業者は一社で九名もの社員を一日中講習に派遣してきた所もあります。建設会社の新入社員が大学、あるいは専門学校の建築科を卒業してきたが、そこでは木材のことは専門的に教えていませんから、木材のことを知りません。社員で木材にくわしい人は停年退職してしまっているので、新入社員に木材のことを話してくれる人がいないのです。そういったことから、建築設計者が木材の使い方を知らないという声を聞いてから久しいものがありますが、木材を使っている建築屋さんは「木材のことを勉強したい、木材のことを会社の若い社員に勉強させなければあかん」というようになってきていることは事実だと思います。

 けれども、杉が米栂にかわり、一五~二〇年ほどの間に、杉が一般大衆の目から消えたことは事実ですから、私たちとしては一から教えなければなりません。杉は新製品なのですから、新製品はやはり一から教え、PRをしなければならないわけです。日本の杉、桧を商売のタネにしようというのならば、その価格を高め需要を拡げていこうとするならば、木材業界は使って貰いたい方々に大いに知ってもらうための努力をしなければならない。先日もある人にこう言われました。「建築屋さんの所へ他の材料業者からはパンフレットをいっぱい持ってきてくれるけれど、材木屋さんはパンフレットをちっとも持って来ないやないか」。事実、木材関係で建築材料としての木材のパンフレットを作っているお店は非常に少ないのが現状です。あっても木材は暖いとか、良い商品ですと言うだけで、我々の知りたい品種による価格の違い、割れ、腐れ、耐久力の問題等は何もふれていないと言っています。そうした建設業者の要望に少しでも答えようと試みたのが次の表です。

 この図表は、昭和五五年一〇月(財)大阪住宅センター主催で木材知識展を実施した時に私の提案で作った表です。建設業界の方から価格を提案してほしいと言う話がありましたが、木材業界からの反発がありましてこう言う形式に落ち着いたものです。今回五九年一〇月現在で●の位置が四年間の間に大分違っておりましたので訂正しました。これも注文住宅を主にやっておられるお店と建て売りを主にやっているお店とでは大きく違っていますので、平均的な大阪での需要というふうにご理解下さい。

 逆に、木材小売業界においてすら、ほんとうに木材を知っている人がだんだん少なくなって、木材そのものも新建材と同じような規格品的な考え方で商って行く人が多くなっていることは反省させられます。ほんとうに木材を知っている木材業のプロにならないと、本格的数寄屋普請の材料は納められません。高級住宅建築の大工さんは、そうしたプロの木材業者のみに発注するようになって、従来のお金の面ばかりで結びついていた人々とは離れて行かざるを得なくなるのではないでしょうか。 木造一戸建て注文住宅から建売り住宅への需要のウエイトが増すなかで、戸建て建築業者の社内体主要木材 日本産針葉樹
主要木材 日本産広葉樹
主要木材 輸入材

勢がついて行き難いので、木びろい(木出し)は木材業者にまかすから設計どおりで「何んぼ」で請けてくれないかという業者が増える傾向にあります。そこまでは行かなくても、建築業者の木びろいがデタラメの所が多くなり(人と時間が少なくなったため)、木びろい能力を木材業者が持たなくてはいけないようになっています。棟上げのできる(建前の墨付けのできる)大工さんが少なくなって、内装専門の大工さんが多くなったために、棟上げまで木材業界の手もとでやってくれという話もあります。こうした中で、木材小売業の二世の皆さんには、親父のおられる間に、寝る時間も惜んで親父の木材知識を吸収してもらいたいと思います。

 いま木材業界は、「材木が売れない。値がむしろ下がっている」とあえいでいますが、こうした事態の反省なくしては、木材を売りつづけることも、値を支え、上げてゆくこともできないでありましょう。木材を使って工程が早く進む、そのため建築コストが下がると言った工夫が、今後一層なされなければなりません。