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木材流通とは

第10章 国産材時代を切り拓くために

森林組合は山元に製材所を誘致する条件整備を行うべきだ

まず、国産材供給サイドについては、林道問題、育林・伐採に要する作業方法の合理化問題など、いろいろな所で論議され、未解決な分野も多く残されていますけれども、問題点の指摘はすでに言いつくされている感があります。例えば、国産材のコスト低減のために林道延長を伸ばすことが不可欠であることは、改めて私が述べるまでもないでしょう。しかし、林道を伸ばしてゆくには具体的にどのようにしなければならないのか。森林組合に補助金を出すのならば、林道工事のためのブルドーザ購入への補助を出すとともに、森林組合の作業員がブルドーザの講習を受けて自分たちで林道・作業道の敷設をする方法を講じるようにするとか、そうした具体的方策が検討・実施されてゆく必要があると思います。また、これから国産材が主流になるに伴って、臨海木材団地の製材所が撤退し、山林地帯の製材所が出現してこなくてはならないわけですが、そのためにどのような具体的方策がとられるべきか、十分に考えられねばならないと思います。

 昭和三五年当時から素材は山から出材されてくるのではなく、海から入ってくることとなったので、多くの山の製材所が臨海地域に出てきたのは当然でした。国も、運輸省、農林水産省が金を掛けて港湾地帯を埋立て、全国に臨海木材団地が誕生し、三〇年代の製材時代から四〇年代の流通の時代に移り変わっていこうとしている時に早く造った地区は地価も安くそれなりに貢献したが、遅れて臨海木材団地を作ったところは取り残された。しかし、大勢としては繁栄してきました。そしていま、海から木材が入ってきていたのが、木材は元の山から出材されることになってきたのですから、海の方の製材所を廃棄して、山の方に製材所を作ることは、これまた当然の結果であるわけです。木材産業再編整備事業などを実施して、国内の製材工場数を減らそうとしている時期に、一方で国が新林業構造改善対策の中で山元に製材所を新設するのに補助金を出すというのはおかしいではないかという意見がありますが、過去において山林地帯の製材所を閉鎖して臨海地帯へ製材所を作ってきたのですから、今度は臨海地帯の製材所を閉鎖して山元へ行くというのは、これからの国産材供給増大を念頭に入れた場合に、理にかなった動きなのです。

 しかし、この問題に関しては、森林組合が自分自身で製材工場を新設するというのではなく、木材・製材的感覚のある経営者による製材所を自分たちの山元に誘致して、新しく製材所を作ってもらうよう軌道を修正する必要があると私は思います。自分が自らやるということと誘致するということは、大いに違うわけですから。

 過疎対策として、例えば松下やソニーといったような大きな会社に地元にきてもらう場合を考えれば分かるように、誘致のためには、土地を安く提供しますよとか、税金を特別に控除しますよとか言って、誘致合戦を各市町村でするわけです。ですから、山林地帯に製材所を誘致するに当たっては、山林家及び山林家の団体である森林組合の方で、「原木がこれだけ確保できまっせ」とか、「あんたら製材のしやすいように仕訳けもちゃんとして材を提供しますよ」とか、「何時でも好きな素材が買える様な素材の付売土場も作ります」とか、条件を作る必要があります。そういうことができてはじめて製材所を誘致できるというように考えるべきです。役所側としては、森林組合が製材所を建てるのに補助を出すのではなくて、森林組合に製材工場を誘致する条件整備をさせることに補助を出すように切り替えるべきでしょう。構造材のプレカット工場も同様なことがいえます。現在の状況のまま、販売先、販売方法、流通構造を考えないで構造材のプレカット工場を推進して行けば、赤字工場のみを各所に造って行くことになります。

 製材所の損益分岐点は、その製材所が一ヵ月間に受入れて挽ける素材の量によって先ず規定されてきます。そして現状では、一ヵ月間に二、〇〇〇~三、〇〇〇?も挽ける製材所は少なく、個々の製材所はそれぞれ小規模になっています。内地材製材なら従業員五名、一ヵ月の素材使用量一五〇〇?が良い所でしょう。そこで、一つの村だけでは必要な一定量をコンスタントに出材できないというのならば、隣りの村も一緒に合わせる、それでもまだ足りないというのならば隣りの郡の町村までも包含して、地域の中で製材所が成り立つ条件が探られなければならない。行政区画によるタテ割の発想だけで、あるいは一つの森林組合の運営という枠にしばられた発想だけで、製材所を作るとすれば落し穴にはまって身動きができなくなります。自分たちが儲からなくなったから、自分たちが困っているから製材所を作る、というのではなくて、製材所が儲かるためにはどれだけの原木なり、どれだけの販売先がなければならないかを原点にして考えないと間違いなのではないか、と思います。