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平井信二先生の樹木、木材研究

アメリカネムノキ
1.アメリカネムノキの所属と名称
 アメリカネムノキは世界中の熱帯各地で街路樹、庭園樹、コーヒー・カカオなどの庇陰樹として広く植栽され rain tree の名でよく知られている。サマーセット・モームの小説の降り続く雨の世界の樹であり、またこの頃「この木なんの木?気になる木」のテレビコマーシャルでも人目を引くようになった。マメ科(Leguminosae)ネムノキ亜科(Mimosoideae)の高木で、Sama neaアメリカネムノキ属)とEnterolobiumウズマキサマン属)のいずれにも扱われているが、ここでは前者に入れて学名はSamanea saman MERILL としておく。異名にMimosasaman JACQUIN,Enterolobium saman PRAIN ex KING,Pithecellobium saman BENTHAN があげられる。rain tree の名の由来は (1)雨が降り出す前に葉を閉じてその予報をする、 (2)夜この樹の下で寝ると水滴が垂れ落ちて身体が濡れてしまう、の両説があるが双方ともあまり確かでない。和名にはほかにアメリカゴウカン(合歓)、アメフリノキがあり、英名ではほかに cow tamarind,giant thibet tree,Americanacacia,monkey pod(おもに木材名)があり、また各地にそれぞれの呼び名が数多くある。主なものをあげてみよう。メキシコ、キューバ:algarrrobo;中米、西インド諸島、南米北部:saman,carreto,cenicero,ceroro;タイ:cham chu ri,kam klam; マレー:hujan-hujan,pukul lima;インドネシア:kaju terembesi,munggur,sulbin、フィリピン:acacia.
2.アメリカネムノキの形態と分布
 落葉大高木で高さ25~30m、直径60~100cmであるが原産地森林中では高さ35m、直径180cm以上になるものがあるという。しばしば低い処から大枝を分岐し広がった樹冠は整った傘形になることが多くきわめて特徴的な樹容をあらわす。その直径はときに3 0m以上になるものがある。樹皮は暗灰色、灰褐色などで浅い裂け目が入って縦長の裂片になって剥げる。裂け目の間は比較的幅が広く平らである。板根は発達しない。小枝には軟毛を布く。葉は互生し2回偶数羽状複葉で葉柄を含めて長さ20~40cmある。
 羽片は左右にわかれて2~6対あり羽片の長さは7~15cmである。小葉は基部の羽片に3~4対、上部の羽片に6~8対着き楕円形、倒卵状長楕円形などで左右不同、羽片の基部から先の方へいくにつれて大きくなる。長さ3~6cm、幅2~3.5cm、無柄である。鈍頭 、鈍~円脚、全縁、下面に軟毛がある。羽片対着部および小葉対着部の軸上面に杯状の小さい腺体をつける。夜間は小葉対が閉じ合わさる。花は長さ5~8cmの柄の先につく頭状花序をなし、これが葉腋には単生または少数簇生、枝端に頂生する場合は簇生 する。1つの頭状花序は径が5~7.5cmで2~5個の花からなる。がくは筒状鐘形で先端が5裂片になり、花冠も筒状で先端で(4~)5裂片になり淡黄色で長さ約1.3cm、中心にある花だけは形態が少し違って他のものより大きく長さ1.5cmほどである。雄ずいは 50個ほどの多数の細長な糸状のものが下部で合着して単体雄ずいをなし、長さは花冠の3倍ほどあって長く挺出する。下部は白色、上部は淡紅色の美しい玉刷毛のようになり、ネムノキ Albizzia julibrissin DURAZZINI の花を思わせる。雄ずいは1個。果実は長線形の豆果で通直に近く長さ15~25cm、幅約2cmでやや扁平、縁は顕著に肥厚し熟して黒色となり裂開しない。中に10~25個の紅褐色の種子を含む。長円形で長さ8㎜、褐色のパルプに 埋まっている。
 原産地はメキシコ・ユカタン半島から中米を経て南米北部であるが、生長が速く、世界中の熱帯のいたる処で植栽されている。
3.アメリカネムノキの材の組織
散孔材。辺心材の別は明瞭で辺材は黄白色、心材は淡褐色、黄褐色、褐色などでしばしば暗色の縞が現れる。生長輪は不明瞭または明瞭。木理は交走が多くときに通直、肌目はやや粗~粗、縦断面で道管の筋がよく目立ち、またまさ目面でリボン杢の著 しいものがある。フラボン反応は陽性、水浸出液は紫外線で黄色の蛍光を発する。
 材の構成要素割合を測定した例によれば道管6.7%、真正木繊維56.7%、軸方向柔組織24.5%、放射組織12.1%である。横断面で見ると道管は大部分が単独であるが、ときに2~3個が放射方向に接合し、接合したグループも1個としての分布数は1~4/m㎡であ る。管孔は楕円形で径は0.08~0.30㎜、単せん孔、せん孔板は水平また は傾斜する。真正木繊維は材の基礎組織をなし長さ0.7~1.5(平均1.1)㎜、径は0.015~0.03mm、壁厚は0.002~0.004㎜である。
 軸方向柔組織には周囲柔組織とこれが翼状柔組織に発達し、さらに連合翼状柔組織にまでなるものと、散在する柔細胞がある。翼状に伸びない周囲柔組織は管孔の周囲に4~11細胞層、連合翼状柔組織の管孔を含まぬ帯状部分では放射方向に25細胞層まで となる。これら柔組織のおもに周縁に多室結晶細胞が点在し明瞭に認められる。軸方向に5~30個の結晶が鎖状に接続して存在する。散在柔細胞は少ない。柔細胞の径は0.02~0.04㎜、壁厚は0.001~0.002㎜である。放射組織は多くは2~3細胞幅、ときに4 細胞幅で単列はほとんどない。6~15細胞高で平伏細胞のみからなる同性である。内容に着色物質を含むことが少ない。須藤彰司氏は材片の水浸出液を振盪すると泡が出るがすぐ消失することで、泡のすぐ消えないウズマキサマンEnterolobium の材と区別できるとしている。
4.アメリカネムノキの材の性質と利用
   材はやや軽軟から中庸という程度で気乾比重の記載には0.48、0.50~0.65、0.53、0.53~0.61、0.56、0.61がある。強度数値を求めた記載は手許にないが強度は一般に高くない。木理の交走するものがあるので乾燥では捩れに注意が必要であり、切削も ときにスムーズでない。耐朽性はやや高い、低いの両方の評価がある。
 一般に枝下が少なく長尺材が得られないため通常の構造材に用いにくいが、木理の交走と色調の変化あるもの、とくに枝の分岐部分のもく(杢)は化粧ベニアとして高く評価され、わが国にも monkey pod としてハワイその他から輸入されたことがある。家具、キャビネット、建築・車輌の内装、施作・彫刻による細工物、器具、小箱などに用いられ、また現地ではカヌーに使われる。果実のパルプは甘くて食べられ、カリブ海地方では豆果は重要な家畜飼料 である。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る