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平井信二先生の樹木、木材研究

キバナヨウラク属の樹木
1.キバナヨウラク属の概要
 キバナヨウラク属(グメリナ属)GmelinaクマツヅラVerbenaceaeに属する。インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ビルマ、タイ、中国地域南部、インドシナ、マレーシア地域、インドネシア地域、フィリピン、パプア・ニューギニア 地域、フィジー、オーストラリア東部・北部に30~35種が分布する。このうちキダチヨウラクGmelina arborea LINNAEUSは若令時の生長がきわめて速いので、早生樹として東南アジア各地をはじめ、インド、熱帯アフリカ、ブラジルなどに広く植栽されている。英名は総括していう場合はgmelinaが用いられるが、おもに産地によってわけて、代表的な樹種のyemanewhite beachの名称をそれぞれ使うことが多い。中国名の属名は石梓である。
 常緑または半落葉の低木ないし中高木が多く、ときに若令時に蔓性を示すものがある。高さは30m、まれに40m、直径はlm、まれに2.5mまでに達する。樹幹は通常円柱状で、ほぼ板根 はないが、ときに基部に膨出凸起した縦条を現わすものがある。樹皮は灰色から淡褐色、褐色を呈し、ほぼ平滑または鱗片化する。小枝には細軟毛があるかまたは無毛で、ときに刺をもつものがある。葉は対生する単葉で、全縁のものが多いが、また鋸歯 または裂片をもつものがある。基都に大きい腺体をもつものが多い。ふつう長い葉柄を具え、托葉はない。
 花は頂生または腋生の集散小花序またはそれらが複成した円錐花序につき、花序に苞、また各花に小苞をつけるものがある。両性花で左右相称である。がくは筒状またはやや鐘形で4~5歯があるかまたはほぼ全縁、大きい腺体をものものが多い。花冠は4 ~5個の花弁が合着した形のもので、やや大きく、筒部は下方で細く、上方に向って1側で膨れ、その先は2唇状に分裂し、さらに上唇は2裂、下唇は3裂、ときに2裂する。外面は有毛である。黄色、橙色または紫色その他を呈する。雄ずいは4個のうち2本が 長く、他の2本がやや短い二強雄ずいで、花糸は糸状で扁平、しばしば腺体を疎生する。葯は2室で、側着し、縦のスリットで開口する。雌ずいは1個で子房は4室、各室に胚珠1個があって、中軸胎座の中央またはそれより上につく。花柱は糸状、柱頭は不 同長の2個の裂片となる。果実は石果で、中果皮は肉質、内果皮は硬い石質の核となる。通常4室で、種子が1~4個できる。子葉はいくらか肉質である。幼生は地上発芽をする。  
2.キバナヨウラク属の材の組織
 散孔材、ときにやや環孔材的傾向を示すものがある。辺・心材の境界は不明瞭なものが多く、辺材は白色で、ときに緑色、黄色を帯びる。心材は淡褐色、黄褐色などで、ときに淡紅色を帯びる。生長輪は認められないか、または一般に不明瞭である。木 理は通直または交走し、肌目は中位からやや粗ないし粗のものが多い。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~5個ほどが接続し、ときに小道管を伴なってそれ以上となる。分布数は小道管を除けば3~8/mm2くらいであるが、小道管を含める3~23/mm2に及ぶ。単独道管の断面形は円形ないし楕円形で、道管の径はO.04~0.32mm 、そのうち0.12~0.25mmのものが多い。せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、径は0.008~0.011mmである。道管・軸方向柔組織間、道管・放射組織間は単壁孔対または半縁壁孔対で大きく、網状や 柵状に並ぶ。一般に道管内にチロースが豊富でその壁は薄い。
 材の基礎組織を形成するのは、一般に微小な壁孔縁の有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、5個までの少数の隔壁をもつ。長さは0.6~1.8mm、径は0.01~0.025mm、壁厚は0.002~0.005mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は薄く0~2細胞層であるが、一部翼状柔組織に、まれに連合翼状柔組織になるものがある。ターミナル柔組織がある程度現れるものがあり、放射方向に2~4細砲層であるが、あまり明瞭でない。また単独で基礎組織中に散 在する柔細胞も見られるが、一般に不明瞭、不規則である。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~4、まれに6細胞幅までで、一般に単列のものは少い。2~35細胞高である。その構成は大部分が通常の平伏細砲からなるほとんど同性であるが、軸方向端末の単列部は、しばしば軸方向の高さが高く放射方向の長さが短い大型の平伏細胞が 構成し、さらに方形細胞に移行する形のものも見られる。細胞内に針状の結晶を含むものが多い。まれに軸方向柔組織、放射組織、ときに繊維状仮道管の中にシリカを含むものがある。  
3.キバナヨウラク属の材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重は0.25~0.72の範囲にあるが、0.45~0.50程度のものが多い。この属で材が利用される代表的なものはキダチヨウラク(イエマネGmelina arborea LINNAEUSニューギニア・ホワイトビーチGmelina moluccana BACKER ex K.HEYNEであるので、材質数値はこの2種の項にあげる。
 乾燥は比重の割には遅いが、これは道管の中にチロースを含むことが多いためと考えられる。ただし割れ、狂いなどの品質低下を来すことが少く、乾燥後の寸法は一般に安定していることが著しい。製材、鉋削などの切削加工はふつう容易であるが、軽 軟なものの旋削は良好でない。ロータリー単板切削も容易で、ふつう原木の前処理なしに行うことができるが、ややけば立ちを生ずる傾向がある。接着は酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、カゼイン接着剤では問題が少いが、ユリア樹脂接着剤、フェノ ール樹脂接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤などではあまり良くなく、とくに耐久接着性が劣るとの結果が得られている。釘打ちはかなり容易で、釘保持力は中位かやや低い。パルプ化は容易であるが、繊維が短いので、紙の品質改善には他種の長い繊維 を少量混用することがよいとされている。ハードボード適性は良好との報告がある。心材の耐朽性は屋内使用ではやや高い。キクイムシ、白蟻と海虫に対する抵抗性についてはいろいろな評価がある。心材への防腐剤の注入は道管中のチロースのため困難 なものが多い。
 市場材としてまとまって供給されるものがあり、比較的軽量の材としての広い用途をもっている。すなわち建築を含む軽構造材、パネル・軽フローリング・枠材・モールディングその他を含む建築内装材・造作材、おもに実用家具、各種の器具、車両・ 船舶の部材、ボート・カヌー、箱・容器と包装材、楽器、マッチ軸木と箱、彫刻を含む工芸品、模型、玩具その他で、合板、パーティクルボード、ファイバーボードの形でも用いられる。とくにパルプを目的として大規模に植栽利用されていることが多い 。燃材としても用いられるが、あまり適当でない。
 木材以外では、樹皮、葉、果実、根などが民間薬に用いられるものがあり、葉は家畜の飼料となり、蜜源植物としてよいものもある。花が美しいものが観賞用に、またときに庭園樹、行道樹に植栽され、コーヒー・ココアの庇陰樹に用いられるものもあ る。  
4.キバナヨウラク
 キバナヨウラク黄花瓔珞、キバナヨウラクカズラ、トゲヨウラクGmelina philippinensis CHAMISSO(異名Gmelina hystrix KURZ)はビルマのテナセリウム、タイ、マレー半島、フィリピンに生じ、また植栽される。英名はpurple bulang、bristly bush beech、マレーでbulang、bulangan、pekan という。
 半ば蔓性の常緑小高木で、高さは5~6mとなる。小枝はほぼ有毛で、若い枝の葉腋に刺をもつ。葉は楕円形、長楕円形などで長さ5~9cm、幅3~4.5cm、鋭頭または鈍頭、基部は鈍形から楔形を示す。やや革質で、側脉は4~6対あり、下面はほぼ無毛、お もに中肋の近くに数個の小さい緑色の腺体がある。葉柄の長さは1.5~2.5cmである。
 花は頂生の総状花序につき、その長さは10~15cmで下垂する。各花に大きい包がつき、広卵形で長さ・幅とも約3cm、鋭尖頭、外面は緑色、内面は帯紫色で脉紋が目立つ。がくは盃形で、頂端は全縁または4~5個の浅い牙歯があり、外面に大きい腺体を つける。花冠は黄色を呈し、奇妙な仮面状で大きく長さは6cmある。筒部の下方は細く、それが上部に向ってふくれて拡がり、先は4裂して上の裂片が他よりも大きい。雄ずいは4個の2強雄ずいで花冠の喉部につく。子房は4室で、各室に1個ずつの胚珠を含 む。果実は漿質の石果で、倒卵形を呈し長さは約2cm、頂端はやや平らになる。黄色を呈し、核内に種子1個を含む。
 樹は観賞用に植栽される。果実をつぶして石灰を混ぜて煉り合わせ、咳の薬としてのどにはる。  
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