v2.8

平井信二先生の樹木、木材研究

アメリカネムノキ属、ウズマ
アメリカネムノキ属、ウズマキサマン属とその近縁属の樹木
1.アメリカネムノキ属、ウズマキサマンSamaneaウズマキサマンEnterlobiumは、前者の豆果がほとんど通直なのに対し、後者のそれはコイル状に巻くということの他にあまり判然とした違いが挙げられているのを見ない。この程度の違いならば1属と してEnterolobiumで扱うのが適当ではないかと考えられるが、ここでは一応別属で扱っておく。両属をあわせての形態の要点をあげる。
 マメ科(Leguminosae)ネムノキ亜科(Mimosoideae)の落葉高木で、葉は互生する2回偶数羽状複葉、小葉は対生する。花は長柄の先につく頭状花序をなしそれが房状に簇生する。がくおよび花冠はともに筒状で先端は5裂片となる。雄ずいは多数あって 下部は筒状に合着し単体雄ずいをなし雌ずいは1個。豆果は細長く厚く、直線状または弯曲からコイル状、革質ないし肉質で縁が肥厚、種子がつく部分の間でくびれることがなく裂開しない。種子は多数で隔壁でそれぞれが離れている。
 アメリカネムノキ属は熱帯アメリカとアフリカに数種、ウズマキサマン属は中米、南米に8種ほどが分布している。
2.アメリカネムノキ属の樹木
 この属ではアメリカネムノキrain tree)がきわめてよく知られているがなお次のものがある。
 Samanea pedicellaris KILLIP:異名にPithecellobium pedicellare BENTHAMがある。南米北部から中部にかけて分布し、ガイアナ名:tamalin、red manariballi:スリナム名:tamalin、bosh tamarinde:仏領ギアナ名:bois lamorue、bois cerf、cedre d'argent;ブラジル名:gambui、cambui;ペルー名:vilcoなどの名称がある。
 中~大高木で直径150cmまでに達し、枝下はときに30mを超える。樹皮は黄褐色で樹脂を滲出する。葉の羽片は6~8対、軸上に腺体があり、小葉は15~25対あって長楕円形である。花は暗紅色。豆果は黒褐色で長さは10cm以下、縁が肥厚して木質となり12 ~18個の種子を含む。
 心材は褐色で多少とも濃色の縞があり通常黄金色光沢を示す。木理は交走、肌目は粗い。材の気乾比重に0.51、0.70~0.90の記載がある。通常加工容易であるがまさ目面では平滑な仕上げがやや難しい。多分かなりの耐朽性があるとみられている。材は 地方的の用途が主であるが、内部構造材および造作材、家具、車両などがあげられる。
 なおアフリカ産にはナイジェリア南部、カメルーン、ザイールに分布するSamanaea leptophylla BRENAN et BRUMMITTがある。
3.ウズマキサマン属の樹木
(1)Enterolobium cyclocarpum GRISEBACH 
 和名:ウズマキサマン、ゾウノミミ:英名:elephant's ear、ear pod、木材取引名にJuana Costa mahogany、Mexican walnut、Central American walnut、South American walnut;中米諸国名:guanacaste、conacaste、genizero、junizero、caro、pich;ベネズエラ名:caro;仏領ギアナ名:acacia franc;ブラジル、アルゼンチン名:timbo、tamboril、faveiroなど多数。
 分布はメキシコ、中米、西インド諸島、南米北部および中部である。高さ30mまたはそれ以上に達し全株無毛。葉の羽片は4~9対、小葉は20~30対で長楕円形、左右不同である。短尖頭、下面帯白。花は頭状花序が複生して円錐花序様になり白色。豆果 はコイル状に?れてそのコイルの径は8~11cm、光沢ある暗褐色と呈する。種子は16個以上あり長さ1.2cmほどで暗褐色を示す。
 材の組織では道管は単独および2~3個が放射方向に接合、管孔の接線方向の径は約0.2mm、単せん孔。基礎組織は真正木繊維。軸方向柔組織では周囲柔組織。短い翼状柔組織がよく発達し管孔を囲む細胞層は厚く、ときに短い連合翼柔組織になることがあ る。須藤彰司氏はターミナル状のものを認めている。多室結晶細胞があり、小さい結晶が軸方向に長く鎖状に連なる。放射組織は1~3細胞幅、同性、紅褐色の物質を含む。材の水浸出液は紫外線で蛍光を発する。須藤氏は水浸出液の振蘯による泡立ちがす ぐ消えないことで、きわめてよく似ているアメリカネムノキSamanea saman MERRILLの材と区別ができると報告している。
 心材は褐色で種々のシェード、ときに紅彩があり光沢に富む。木理は通直ないし交走、肌目は粗である。気乾比重は幅があり0.47,0.35~0.60の記載がある。通常加工は容易であるが、加工の際のダストは不快な刺激臭をもちアレルギーのもとになると いう。狂いが少なく仕上げは良好で、かなりの耐朽性があり、とくに水中で強い。
 材は建築内装材、とくにもく板を利用、家具、キャビネット、細工物などに用いられ、耐水性があるので水槽、カヌーにも使用される。果実は一般に家畜の飼料となり幼莢・種子はときに煮食される。樹皮・果実はタンニンに富み、また木製品の洗滌に 用いられる。樹は庭園樹、庇陰樹としてよい。
(2)Enterolobium contortisiliquum MORONG
 異名にEnterolobium timbouva MARTIUSがあり、アルゼンチン名:pacara、timbo、timbo cedro、orejas de Negro;ブラジル名:timbouba、tamboril、faveiro;パラガイ名:timbouba;仏領ギアナ名:acacia francなどがある。分布は南米北部、中部でアルゼンチン北部で普通にみられる。
 高さ23~30m、直径80cm以上、ときに180cmになり枝下は9~12mある。葉の羽片は2~5対、小葉は10~20対で鎌状長楕円形を呈する。花は白色~淡黄色。豆果は耳形や腎臓形に弯曲し、革質で黒色を示す。
 心材は褐色、材は軽軟またはやや軽軟で気乾比重に0.35~0.60、0.36、0.37の記載があり、加工しやすいがかなりの耐朽性があってとくに水中でよくもつ。家具、キャビネット、細工物、カヌーなどに用いられる。豆果は家畜の飼料となり、樹皮・果実 は石けん代用に使われる。樹冠が大きく樹容が立派なので街路樹、公園樹に植栽される。
(3)Enterolobium schomburgkii BENTHAM 
 南米北部産で仏領ギアナ名:acacia franc;ブラジル名:faveira de rosca、fava orrelha de macacoなどがある。直径85~95cmに達する。材の気乾比重に0.76、0.79、0.80、0.98の記載がある。
4.Pseudosamanea guachapele HARMS
 中米、南米西北部産で、ガテマラ名:cadeno;コロンビア名:tabaca、guamarillo;ベネズエラ名:samanigua;エクアドル名:guachapeleである。中~大高木で樹皮は粗く、髄に細かい隔壁がある。葉は大きな2回偶数羽状複葉で羽片は5~6対、小葉は やや少数で斜長楕円形を示す。花は黄白色。豆果は扁平。
 材はアメリカネムノキ属Samaneaおよびウズマキサマン属Enterolobiumのものに似るが、それらより肌目はいくらか精で良質である。しかし産出量はずっと少ない。心材は鮮褐色で金色光沢をもつ。木理は通直または交走、肌目は中庸からやや粗い。気 乾比重の値に0.60がある。加工容易であるが鋸断でけば立つことがある。仕上げは良好でかなりの耐朽性がある。家具に好適とされ船舶、細工物などにも用いられる。樹は公園樹、庇陰樹として植栽される。
5.Marmaroxylon racemosum KILLIP
 この属はこの1種のみ。異名にPithecellobium racemosum DUCKEがあり、英名:Surinam snake wood、zebra wood;仏領ギアナ名;bois serpent、bois zebra;スリナム名;bastamarinde;ブラジル名:angelim rajadoなどで、南米東北部産ある。
 高さ25~30m、直径45~60cmとなり、葉は2回偶数羽状複葉、花は鮭肉色、豆果は長さ約7.5cmである。
 散孔材で、黄褐色・淡褐色の地に紅褐色・紫褐色・黒色などの條が現われいわゆるzebra woodの1つであるが、zebra woodの本命はアフリカ産のMicroberlinia brassavillensis A.CHEVALIER(マメ科)である。木理はふつう通直で肌目は精。
 材の顕微鏡写.真があるのでそれについて記載する。道管は多く単独であるがときに放射方向に2~3個が接合し、接合したものも1としての分布数は3~6/m㎡。管孔は円形から楕円形で径は0.06~0.22mm、単せん孔、せん孔板は水平ないしやや傾斜する。基礎組織をなす真正木繊維の径は0.02~0.03mm、壁厚は0.002~0.005mmである。軸方向柔組織は周囲柔組織単独の形のものは少なく、多くは翼状柔組織から連合翼柔組織となりその存在は顕著である。横断面で見ると管孔の上下で放射方向に2~10細胞層、管 孔を含まない帯状部は輪廓波状で厚薄があり放射方向に10~35細胞層となる。その辺縁部、ときに内部に多室結晶細胞が混在する。結晶は軸方向に5~20個が鎖状に連なる。繊維組織の中に埋在する単独の散在柔細胞はほとんど見られない。柔細胞の径は0 .02~0.05mm、壁厚は0.001~0.002mmである。放射方向は1~3細胞層で1~2細胞幅のものが多く、5~25細胞高、構成は平状細胞のみからなる同性である。
 材はきわめて重硬で、気乾比重の値に1.00~1.20、1.01、1.15がある。加工はやや困難と考えられ、耐朽性はかなり高い。家具、車両、象眼などの細工物に用いられる。
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