v2.3

平井信二先生の樹木、木材研究

カキバチシャノキ属の樹木
12.キバナイヌジシャの概要
 キバナイヌジシャ(ナンヨウイヌジシャCordia subcordata LAMARCK(異名Cordia orientalis R.BROWN、Cordia moluccana ROXBURGH、Cordia rumphii BLUME)はインドからマレーにかけての地域の原産のようであるが、現在はアフリカ東部、インド、スリランカ、アンダマン、ビルマ、タイ、海南島、西沙諸島、ベトナム、マレーシア・インドネシア地域、フィリピン、パプア・ニューギニア地域、オース トラリア北部、メラネシア、ミクロネシア、ポリネシアの海岸に広く分布している。
 英名をsea trumpet、island cordia、island walnut、kerosene wood、タイでrampon、中国で橙花破布木、マレーでkalamet、インドネシアでsalimuli、klimasada、kanawa、フィリピンでbalu、banago、azot ot、koring korong、パプア・ニューギニア地域でisland cordia、island walnut、kerosene wood、ハワイでkou、フィジーでnawanawa、ケニアでmkomwe、mkete、mbongoloなどという。
 高さ20m、直径70cmまでになる常緑高木で、枝下は8mまでのものがあるがしばしば屈曲する。樹皮は灰色ないし褐色を呈し、浅い割れ目が入ってフレーク状と なる。小枝は無毛である。葉は互生し、卵形、狭卵形で長さ8~20cm、幅6~16cm、鋭頭または急鋭尖頭、基部は楔形から円形、まれに心形を示す。薄い革質で、全縁または僅かに波状を呈し、幼生では鋸歯がある。側脉は4~6対あり、上面に明瞭または不 明瞭な斑点が現れ、下面中肋に沿って細綿毛を密布する。葉柄の長さは4~12cmで無毛である。
 集散花序が葉と対生して出て開出し、その幅は12cmまである。がくは革質で同筒状、長さ約13mm、5個ほどの裂片は縁毛をもつ。花冠は漏斗形で長さ35~45mmで大きく、裂片5~7個があり円形、平展して縁が縮む。橙黄色、橙紅色を呈する。筒部の長 さは23~30mmで裂片より濃色である。石果は乾燥した堅果様で、球形ないし広卵形、長さ2~3cm、始め緑色、後に黄色となり、宿存して著しく肥大したがくに包まれる。  
13.キバナイヌジシャの材の組織、性質と材その他の利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色から淡黄褐色で幅が狭い。心材は褐色、暗褐色などを呈し、不規則な黒褐色の縞がある。道管が接線方向に配列する傾向から生長輪が認められることがある。木理はふつう浅く交走し、肌目はやや精ない しやや粗である。材面はやや光沢がある。特別な匂いと味はない。大径木ではしばしば心腐れが現れる。
 道管は単独および各方向あるいは団塊状に5個までが接続し、分布数は1~16/mm2である。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.04~0. 23mmを示す。せん孔板は水平に近く、単せん孔もつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、その径は0.006~0.007mmである。道管と放射組織の間の半縁壁孔対は、ほぼこれと同様であるが、また長楕円形に伸長して長径が0.012mmまでのものがある 。チロースの発達は少い。
 材の基礎組織を形成するのは繊維状仮道管で、長さは0.9~1.3mm、径は0.01~0.025mm、壁厚は0.003~0.004mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は完全ときに不完全に道管を囲み、0~2細胞層、また翼状柔組織あるいは 短い連合翼状柔組織に発達するものがある。独立型の帯状柔組織はほとんど発達せず、あっても不規則で、ときにややターミナル柔組織の形のものがある。柔細胞の径は0.01~0.03mm、壁厚は0.001~0.002mmである。一部の細胞中に菱形の結晶、柱晶、砂 晶が存在し、ときに1細胞中に2~数個の結晶が含まれることがある。
 放射組織は1~5細胞幅であるが、単列のものはきわめて少く、多くは3~5細胞幅である。3~50細胞高または以上を示す。構成は異性で、鞘細胞は比較的少く、不完全にしか放射組織 の外廓を包まない。軸方向両瑞の単列部1~2層と鞘細胞は直立細胞、方形細胞または丈が高く放射方向の長さが短い大型の平状細胞の層、他は通常の小型の平状細胞の層であるが、これらが不規則に混在するものがある。菱形の結晶、柱晶、砂晶が存在し 、シリカは含まれない。
 材の気乾比重に0.47~0.65の記載がある。製材、乾燥、加工は容易で、仕上げ面も良好である。心材の耐朽性は屋内使用では良いが、接地、外気条件ではない。また昆虫の食害を受け海虫にも抵抗性はない。
 材は建築構造 材、内装・造作材、家具、キャビネット、器具(鉢に用いて食物に匂いが移らない)、楽器、刀鞘、彫刻などによる工芸品その他の用途があり、また燃材に用いられる。樹が小さいので合板には適当ではない。パプア・ニューギニアでは2個の材片をこす って火を起こすのに用いるので、kerosene woodの名はこのことによるという。
 果肉、種子の仁は食用となる。タヒチではタパ(樹皮布)の紅色染料にこのものの葉とベンガルボダイジュFicus benghalensisの果実を混ぜたものを用いる。若葉をビンロウジbetel nutAreca catechu LINNAEUSとともに噛み料にする処もある。ハワイでは花をレイに用いる。樹は観賞用に植栽される。  
14.オシロイイヌジシャ
 オシロイイヌジシャCordia fragrantissima KURZはビルマ、タイに産し、ビルマでsandawaという。
 落葉高木である。葉は卵形などで長さ12.5~25cm、ほぼ鋭頭、基部は広い楔形を示す。葉身の基部近くから出る3~5脉があり、成葉の上面はざらつき、下面に灰色の星状細綿毛を布くが後に脱落する。葉柄の長さは1.3~2.5cmである。
 花序は2叉生の集散花序の複成したものであるが、花は分枝の片側にほとんど無梗に近く総状につく。花は小く白色を呈する。がくに著しい隆条はなく、花冠の筒部はがくと同長またはそれより短い。
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、心材は紅褐色、褐色を呈し、暗色の縞が出て装飾的であり、また芳香がある。
 道管はほぼ単独であるが、やや接線方向に並列する傾向がある。分布数は5~6/mm2である。道管の断面形は円形などで、径は0.19~0.28 mmを示す。せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ。チロースは著しく多い。
 材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02mm、壁厚は0.005~0.007mmである。
 軸方向柔組織は量が多く、道管を包含した帯状柔 組織ないし連合翼状柔組織になり、ときに分断し、輪郭は不規則である。放射方向に2~7細胞層で、その間隔は繊維の2~15細胞層、ときにより以上である。柔細胞の径が0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は4~5細胞幅、30~60 細胞高または以上となる。構成は異性で、鞘細胞があり、軸方向両端の1~2層の単列部と鞘細胞は直立細胞、方形細胞または丈が高く放射方向の長さが短い大型平状細胞の層、他はおおよそ通常の小型の平状細胞の層であるが、やや不規則に大型細胞層が 混在している。細胞内に菱形の結晶が現れる。
 材の気乾比重に0.77~0.82の記載があり、収縮は少ない。製材、乾燥、切削加工にはあまり困難がなく、仕上げ面は良好である。
 建築内装材、家具、キャビネット、ブラッシ背板、旋削品などに適しており、また化粧ベニヤにも作られる。ただし材の供給量は少ない。材が腐朽すると芳香が著しくなるので香木とされる。中国で棧密香というものはこのものと考えられている。ビル マでは材の粉末をおしろいと混ぜて顔に塗り、これをkalahmeという。  
15.Cordia grandis ROXBURGH
 Cordia grandis ROXBURGHはインド東北部、ネパール、バングラデシュ、ビルマに生ずる高木で、ネパールでasari、ビルマでthanatという。
 葉は互生し、卵形で大きい。上面に多数の隆起した白色盤状体があってざらつき、下面は一般に脉沿いに微毛があるが無毛に近 い。葉身の基部近くから出る3~5個の脉が目立つ。葉柄の長さは2.5~6.3cmである。
 集散花序は密に花をつけ、有柄の大きな円錐花序に複成する。がくに明瞭な隆条はなく、花冠の筒部はがくと同長またはそれより短く、花冠は白色を呈する。葉はビル マたばこの巻き葉に用いられる。  
16.Cordia monoica ROXBURGH
 Cordia monoica ROXBURGH(異名Cordia polygama ROXBURGHはインド中部・南部、スリランカに生じ、インドでpida、panugeli、タミール語でnaruviliという。
 樹形の不整な小高木である。棄は互生し、卵形または楕円形で長さ2.5~7.5cm、基部は楔形を示す。葉身の基部近くから出る3~5脉が目立つ。
 上面に隆起した小さく白い盤状体が多数あってざらつき、下面に僅かに細軟毛を生ずる。葉柄の長さは1.3~2.5cmである。
 集散花序は小さい。花は小さく白色を呈し、雄花と両性花とがあって別の枝につく。がくは倒円錐形で長さ6mmほど、花冠筒部は、がくと同長またはそれより短い。  
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る