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平井信二先生の樹木、木材研究

ナンキョクブナ属の樹木
7.Nothofagus cunninghamii OERSTED の概要
 Nothofagus cunninghamii OERSTED(異名Fagus cunninghamii HOOKER)はオーストラリアのビクトリア南部とタスマニアに生ずる。英名をmyrtle beech、Tasmanian myrtle、Tasmanian beech、myrtleという。
 高さ30~40m、直径1~1.5mにも達する常緑の中~大高木で、大きいものは高さ60m、直径2.5mのものが記憶され、また疎林あるいは標高が高い処の風衝地では小高木から低木状のものがある。好適地に生ずるものは樹幹が通直で、ときに僅かに板根があり 、また根元などの樹幹下部に不定芽の発生によって瘤ができるものがある。樹皮は褐色を呈し、やや繊維質で鱗片状となる。若枝は細く暗色の毛をもつ。葉は広がった小枝に多数つき、卵形ないし菱形またはほとんど三角形を呈し、長さ0.6~2cm、幅0.5 ~1.5cm、尖頭、基部は広い楔形を示す。上半部に浅い鋸歯をつけ下半部は全縁、上面は光沢があり下面は淡緑色を呈し、両面無毛、下面に腺点はない。葉柄はきわめて短く有毛である。托葉は幅が狭く膜質で早く脱落する。若葉はしばしば淡紅を帯びた ブロンズ色を呈する。
 雄葉は単出または3個が束出し、短い花柄があり、広い鐘形で6裂片からなる長さ2.5mmの花被と、8~12個の雄ずいとからなる。雌花は通常3個が、長さ1.5mmで先端が腺質の片からなる総苞の中にある。子房の稜の上に、微小で先端腺状の花被片3個と、 厚くて鈍頭の柱頭3個をつける。果実の殻斗は4個の裂片からなり、これら裂片は弯曲した歯状縁をもつ4~5個の層で構成され、中に3個の堅果を包む。堅果の外側の2個は3個の翼をつけ、中央にあるものは扁平で ある。
 この樹も寄生菌Cyttaria sp.がつき、枝に木質の瘤をつくり、また黄色でブドウ状のキノコを生じ食用とされる。  
8.Nothofagus cunninghamii Oersterの材の組織、性質と利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材はほとんど白色で狭く、心材は淡紅褐色から紅褐色を呈し、両者の間にこれより淡色の推移帯がある。生長輪は認められるが顕著でない。木理は直通または浅く交走し、ときに波状を呈し、肌目は精で均質である 。
 道管は単独および2~6個が放射方向に、ときに8個までが団塊状に接続し、分布数は60~90/mm2である。単独道管の断面形は楕円形などを呈し、道管の径は0.03~0.11mmである。せん孔板は少し傾斜し、単せん孔をもつ。道管と放射組織辺縁の大型細胞 との間の半縁壁孔対または単壁孔対は大きく、横長の楕円形ないし線形を呈し階段状などに配列する。
 材の基礎組織を形成するのは真正木組織または繊維状仮道管で、隔壁は見られない。径は0.01~0.025mm、壁厚は0.003~0.005mmである。
 軸方向柔組織はきわめて少なく、道管周辺を含めて単独で散在する僅かの柔組織と、放射方向に1~2細胞層、ときに分断するターミナル柔組織がある。柔細胞の径は0.01~0.03mm、壁厚は0.001~0.002mmほどである。
 放射組織は1~2ときに3細胞幅、4~25細胞高を示す。構成は異性で、単列のものおよび多列のものの軸方向両端の1~2層の単列部は直立細胞または方形細胞の層、他の大部分は平状細胞の層で構成される。細胞内には着色した内容物が多く含まれる。
 材の気乾比重に0.62~0.86の記載がある。その他の材質数値では、生材から気乾までの収縮率は接続方向6.5%、放射方向3%、縦圧縮強さ568kg/cm2、曲げ強さ1,096kg/cm2、曲げヤング係数14.2×10(4)kg/cm2、ヤンカ硬さ599kgの報告がある。
 製材はあまり困難ではない。乾燥は淡色材と濃色材とではかなり異なり、前者はやや容易であるが、後者は困難でコラップス、内部割れなどの損傷が出やすい。それで故乾燥前に原板を選別することが必要である。鉋削その他の切削加工は比較的容易で おおむね平滑な仕上げ面が得られる。接着、塗装、研磨はほぼ普通、釘、木ねじの保持は良い。曲げ加工は良好である。心材は耐朽性がややあるが長期間の使用は期待できない。辺材はヒラタキアイムシの食害を受ける。防腐薬剤の注入処理は辺材では容 易であるが、心材および推移帯ではむらがあって困難である。
 生育地付近ではかなり重要な一般材で多方面に利用される。すなわち一般および建築構造材、フローリング・パネル・窓枠・縁材などを含む建築内装・造作材、家具・キャビネット、工具の柄・紡績ボビン・ブラッシ背板・靴ヒール・銃床その他を含む 器具・機械材、車両、橋梁と埠頭の敷板・棚柱などを含む土木材、工芸品その他があり、これらはベニヤ・合板・旋削・彫刻・曲げ加工・寄木などの形でも用いられる。  
9.Nothofagus gunnii OERSTED
Nothofagus gunnii OERSTEDはオーストラリアのタスマニアの高地産で、英名をtanglefoot beech、tanglefoot、deciduous beechという。
 生育地によって小低木から小高木まであり、落葉性である。葉は卵形ないし円形で長さ約2.5cm、脉が深く凹入する。秋落葉前に鮮黄色あるいは黄褐色、胴色に黄葉する。花と果実は小さく不顕著である。
 心材は紅褐色を呈する。材はフローリング、家具、農機具、ボート甲板などに用いられる。  
10.Nothofagus brassi VAN STEENIS
 Nothofagus brassi VAN STEENIS(異名Nothofagus recurva VAN STEENIS)はニューギニアに生ずる。高さ45mまで、直径1mでになる高木であるが、ときに低木状のものもある。樹皮は褐色を呈し、割れ目が入って鱗片化して粗い。葉は長楕円形から卵形で長さ2.5~9cm、幅1.5~4cm、全縁である。中肋は少なくとも半長 までは隆条があり、側脉は7~9対、葉柄の長さは4~7mm、托葉は菱形で長さ5~10mmである。
 雄花はほとんど無柄で、1花序に3個つく。雌花も1花序に3個がつく。堅果は長さ6~10mm、幅4~6mmで、先端に明らかな翼をもつ。殻斗は成熟して幅を増し径約15cmとなり、4~5層になって、長さ5~15mmの果柄につく。
 材はNew Guinea beechにして利用される。  
11.Nothofagus carrii VAN STEENIS
 Nothofagus carrii VAN STEENISはニューギニアに生じ、英名をPapua New Guniea beech、インドネシア(イリアン・ジャヤ)でdierie、didame、taroという。
 高さ45mまで、直径1.3mまでになる大高木で、枝下は24mまでのものがある。葉は倒卵形、まれに楕円形で長さ2~6cm、幅1~3cm、全縁で中肋の下半部に隆条があり、側脉は5~7対である。葉柄の長さは2.5~5mm、托葉は卵形で長さ2~2.5mmである。
 雄花は長さ1~3mmの花序柄の上に3個が無柄でつき、雌花は単出する。殻斗は花よりずっと小さい層状の片に縮小しており、長さ1~1.5mmの柄につく。堅果は楕円形から卵状長楕円形で長さ7~11mmである。
 材はNew Guinea beechとして利用される。  
12.Nothofagus flaviramea VAN STEENIS
 Nothofagus flaviramea VAN STEENISはニューギニアに生じ、英名をPapua New Guinea beech、インドネシア(イリアン・ジャヤ)名をdiedame、essamene、snokkoという。
 高さが45mまで、直径1.5mまでになる大高木で、枝下が25mまでのものがある。葉は卵状長楕円形で長さ5~12cm、幅2.5~5cm、全縁、中肋に溝と隆条があり、側脉は8~10対、葉柄の長さは5~10mmである。
 雄花はほぼ無柄で1花序に3個ずつがつく。雌花は単出する。殻斗は無柄で、層状にならない微小な2個の片からなる。堅果は倒卵形で長さ9~10mm、先端は嘴状を呈する。
 材はNew Guinea beechとして利用される。  
13.ニューギニアブナの概要
 ニューギニアブナNothofagus grandia VAN STEENISはニューギニア産で、英名をNew Guinea beech、Papua Ne Guinea beech、インドネシア(イリアン・ジャヤ)名をdiri、taro、パプア・ニューギニアでgripeという。
 高さ45mまで、直径2.5mまでになる大高木で、樹幹は通直、ときに小さい板根が出る。樹皮は灰色を呈しほぼ平滑である。葉は長楕円形などで長さ4.5~10cm、幅2~5cmで鈍頭で微凹端、基部は広い楔形を示す。全縁で、中肋は少なくとも半長まで隆条が あり、紅染している。側脉は7~9対である。葉柄の長さは3~10mm、托葉は楕円形で長さ5~7mmである。
 雄花序は長さ2~9mmの柄があって、花を3個ずつつける。雌花は単出する。殻斗は広い楕円形で長さ13~17mm、2~4層からなり、無柄または長さ1~4mmの柄がある。堅果は菱形または球形で長さ7~10mmである。
 現地民は葬儀の後、死者からの病気の移りを消すために、この樹の葉をすりつぶしワラビ類pteridium aquilinum KUHNの葉と魚を混ぜて食べる習俗がある。  
14.ニューギニアブナの組織、性質と利用
 散孔材。心材は淡紅褐色から紅褐色を呈する。生長輪が認められる。木理はほぼ通直でであるが波状を示すものがあり、肌目はやや精である。
 道管は単独および2~3個が放射方向に、ときに6個まで団塊状に接続し、分布数は7~24/mm2である。単独道管の断面形は楕円形などで、道管の径は0.03~0.19mmを示す。せん孔板は水平ないし傾斜し、単せん孔をもつ。道管と放射組辺縁の大型細胞 との間に半縁壁孔対または単壁孔対は横の長方形などで著しく大きい。チロースが見られ、ときによく発達しているものがある。
 材の基礎組織をなす繊維状仮道管または真正木繊維に隔壁は見られない。径は0.01~0.025mm、壁厚は0.003~0.005mmである。
 軸方向柔組織では、単独で散在の柔細胞は道管周辺に他処よりやや多く存在し、ターミナル柔組織は比較的明瞭で放射方向に2~5、ときに1細胞層である。鎖状に連なる結晶を含む多室結晶細胞は20~30個の隔室をもつ。柔細胞の径は0.015~0.035mm、壁 厚は0.001~0.002mmほどである。
 放射組織は1~2まれに3細胞幅で4~45細胞高まであるが、20細胞高までのものが多い。その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの軸方向両端あるいはときに存在する中間単列部の1~5層は、おもに直立細胞、方形細胞またはこれらとほぼ同高の 大型の平状細胞の層、他は丈が低い小型の平伏細胞の層からなるが、これらの細胞の形は移行的である。細胞内には着色した内容物を含んでいる。
 材の気乾比重に0.64の記載がある。材は強度がやや大きく、切削加工などは比較的容易で仕上げ面は良好である。心材は耐朽性がややあるが、防腐薬剤の注入は困難である。
 パプア・ニューギニア地域の一般材の一つで、一般構造物、建築構造材、フローリング・パネルなどを含む建築内装・造作材、家具、工具の柄・紡績のシャットル・靴型などを含む器具・機械材、橋梁・埠頭用その他の土木材などに用いられる。樹は行 道樹、庭園樹に植栽されることがある。  
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