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平井信二先生の樹木、木材研究

ナンキョクブナ属の樹木
34.Nothofagus dombeyi BLUME の概要
 Nothofagus dombeyi BLUME (異名 Fagus dombeyi MIRBEL)はチリとアルゼンチンの中部・南部に生じチリではこの属の中で分布も広く量も最も多い。英名を chilean beech,チリで coigue,coihue,haga, アルゼンチンで coihue,coigue という。
 大きいものは高さ50mまで、直径2.5mまたは以上までになる通常常緑の中~大高木であるが、ふつうはずっと小さい。樹幹は一般に円柱状で比較的通直である。樹皮は灰色を呈し、やや薄く、長い割れ目が入って細い裂片で剥げる。若枝は細綿毛を被む る。葉は小枝にふつう密につき、長楕円状皮針形などで長さ1.5~3.5cm、幅0.7~1.5cm、鈍頭ないし鋭頭、基部は広い楔形を示す。革質で、不規則で細密な鋸歯をもち、上面は光沢があることが多く、下面は淡緑色を呈し黒い腺点がある。側脉はやや不 明瞭で、葉板の長さは2㎜である。雄ずいの葯は深紅色を呈する。  
35.Nothofagus dombeyi BLUME の材の組織、性質と利用
 散孔材。辺・心材の区別はほぼ明瞭で、辺材は灰白色で幅が広いものがあり、心材は淡黄褐色、淡紅褐色、淡褐色、紅褐色、褐色などを呈する。生長輪はふつう明らかである。木理は通直または交走し、肌目はやや精ないし精で、いずれも変化がある。
 道管は単独および2~4個が放射方向に、または4個までが団塊状に接続し、分布数は110~130/m㎡である。単独道管の断面形は楕円形から長楕円形のものが多く、道管の径は0.03~0.11㎜を示す。せん孔板は水平ないし少し傾斜し、単せん孔をもつ。道 管と放射組織辺縁の大型細胞との間の半縁壁孔対または単壁孔対は横長の楕円形から線状長楕円形を呈して大きく階段状などに配列する。チロースが存在する。
 材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊維状仮道管はときに端部近くに隔離をもつ。その径は0.01~0.25㎜、壁厚は0.003~0.004㎜である。
 軸方向柔組織はきわめて少なく、道管周辺を含めて単独に散在する柔細胞と、放射方向に1、ときに2細胞層、または欠如する部分があるやや不規則なターミナル柔組織がある。ときに鎖状に連なる結晶を含む多室結晶細胞が現れる。柔細胞の径は0.01~0 .03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜ほどである。
 放射組織は1細胞幅または部分的2細胞幅のもので、3~20細胞高である。その構成は異性で、単列部は方形細胞ときに直立細胞の層、他は平状細胞の層からなる。細胞内には着色した内容物が多く含まれる。
 材の気乾比重に0.47~0.71の範囲の記載がある。材質数値では、縦圧縮強さ222~488kg/c㎡、曲げ強さ343~802kg/c㎡、曲げヤング係数4.4~10.8×10(4)kg/c㎡、衝撃曲げ吸収エネルギー0.19~0.72kg・m/c㎡の報告例があるが、これらの数 値は比較的低いように思われる。
 材質に変化があるので、加工的性質もかなりいろいろ違っている。製材は普通、乾燥は困難で捩れやコラップスなどの損傷が出やすい。切削加工は一般にほぼ容易で、仕上げ面もおおよそ良好であるが、木理に乱れがあるものはむしれなどの欠点を生ず る。接着は一般に良好である。合板の製造はふつう可能であるがあまり良質ではない。
 最良の木材ではないが、南米南部では量的にまとまって出るので、北方的に重要な材である。総括的に用途をあげる。一般構造物、建築構造材、フローリング・パネ ル・階段板などを含む建築内装・造作材、家具、キャビネット、種々の器具材、船舶、車輌、箱、桶樽その他があり、これらにはベニヤ、合板、果成材で用いられるものもあり、またパルプにも使用される。  
36.Nothofagus glauca KRASSER と Nothofagus×leonii ESPINOSA
Nothofagus glauca KRASSER はチリ中部に生じ、同地で roble Maulino,roble colorado,kualo という。高さ30mまでになる落葉高木で、樹幹はときに捩れている。樹皮は薄く淡灰緑色を呈し粗?で、薄片状になって剥落する。若枝に粗毛を密布する。葉は卵形から楕円形で長さ4~9cm、幅5~6cm鈍頭、基部は不規則な心形を示す。波状または欠刻状の 重鋸歯があり、側脉は8~10対、両面とくに下面が青緑色を呈し、葉柄はきわめて短い。果実を含んだ穀斗は長さ10㎜または以上で、南米産のこの属の中では最も大きい方に入る。
 Nothofagus×leonii ESPINOSA は、Nothfagus obligua BLUME(roble)Nothofagus glaucaKRASSER の雑種で両者の中間の性質を示す。チリ中部に生じ、同地で kualo,huala という。高さ25~30mに至る落葉高木である。葉は卵形などで長さ3~10cm、幅2~4cm、鈍頭、基部は広い楔形からほとんど切形となる。重鋸歯は微小で側脉7~13対あり、下面無毛で、葉柄の長さは約10㎜である。  
37. Nothofagus nitida KRASSER
 Nothofagus nitida KRASSER(異名 Fagus nitida PHILIPPI)はチリ中部・南部に生ずる。Nothofagus dombeyi BLUME(coigue)と同一種とする見解もあるが、ここでは一応別種として扱っておく。チリで coigue coigue de chiloeという。
 高さ35mまでとなる常緑高木で、樹皮は Nothofagus dombeyi BLUME より厚く粗?である。葉は卵形ないし菱形で長さ2.5~4cm、鈍頭から鋭尖頭、基部は広い楔形から円形、切形を示す。革質で、鋸歯があり、側脉は5~6対、上面は強い光沢があり、下面に腺点はない。ほぼ無毛で、中肋と葉柄に黄色の毛を生ずる。葉柄は 紅色と帯びる。
 散孔材。辺・心材の境界は不明瞭で、心材は暗褐色などを呈する。材の気乾比重に0.71の記載がある。材は建築構造材・造作材、屋根板、船舶、枕木、電柱、パイリングなどの土木材その他に用いられる。  
38.Nothofagus obigua BLUME
 Nothofagus obligua BLUME(異名 Fagus obligua MIRBEL)はチリとアルゼンチンの中部に生じ、チリで roble,pellin,coyan,hualle,アルゼンチンで roble pellin,roble de Neuguen,coyan という。
 高さ40mまで、直径1.7mまでになる落葉高木で、枝下は長く、樹皮は暗褐色を呈して粗く、方形の裂片になって剥げる。小枝は無毛である。葉は卵形、皮針形などで長さ3~7.5cm、幅1.5cm~4cm、鈍頭または鋭頭、基部は広い楔形から円形を 示し左右不同である。縁に不規則な細鋸歯があり、下半部でやや欠刻状を呈し、側脉は8~11対である。両面無毛で、下面は青緑色を呈する。葉柄の長さは3㎜で紅色を帯びる。
 雄花は単出し、花被に囲まれて雄ずいが30~40個ある。果実の穀斗は4裂片 からなり、中に3個の堅果をもつ。うち外側の2個は3稜形、中央の1個は扁平である。
 散孔材。壮令木以上で辺・心材の区別が明らかになり、心材の暗褐色を呈する。チリで hualleというのは心材が発達しない若齢木で、pellin というのは高齢木の濃色の心材である。組織ではターミナル柔組織があること、多室結晶細胞が現れること、放射組織が1~2とされる細胞幅で単列のものが少ないことが記載されている。
 材の気乾比重に0.72の記載があり、緻密でやや重硬である。心 材は耐朽性が高い。重構造材、建築構造材、船舶、枕木、舗木、水工材、橋梁、柵柱などの土木材その他に用いられる。  
39.Nothofagus procera OERSTED の概要
Nothofagus procera OERSTED(異名 Nothofagus alpina OERSTED,Nothofagus nervosa DIMITRI et MIL.,Fagus procera PEOPPIG,Fagus nervosa PHILIPPI)はチリとアルゼンチンの中部に生じ、英名を chilean beech,South American beech,Chilean mahogany,チリで rauli,robli,アルゼンチンで rauli という。
 高さ40mまで、直径1.4mまでになる落葉中~大高木、樹幹は比較的通直で、枝下が18mまでのものがある。樹皮は厚く、縦の割れ目が入った広くて長い裂片になって剥げる。若枝には短い褐色毛を生ずる。葉は皮針形ないし狭い卵形で長さ3~10cm、幅2~4 cm、鈍頭から円頭、基部は広い楔形から円形、ときにほとんど切形を示す。細鋸歯があり、側脉は14~18対、上面とくに中肋上に微細毛があり、下面は淡色で中肋、側脉は有毛である。葉柄の長さは20~40㎜で有毛である。果実の穀斗は3~4個の裂片から なり、中に翼がある堅果3個を含み、中央のものは扁平である。  
40.Northofagus procera OERSTED の材の組織、性質と利用
 散孔材であるが、早材で道管孔が大きく数が多く環孔材に近いもがある。辺・心材の区別はときに明瞭、しばしば不明瞭、辺材は灰紅色など、心材は淡紅褐色、黄褐色、紅褐色などを呈する。生長輪はふつう明瞭であるが、ときにやや不明瞭なものもあ る。木理は通直、肌目は中位ないし精で均質である。
 道管が材を構成する割合が大きく、単独または2~9個までが放射方向、斜め方向ときに団塊状に接続し、単独のものは少ない。分布数は90~110/m㎡である。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.03~0.16㎜を示す。せん孔板は水平に近い ものからやや傾斜するものがあり、単せん孔をもつ。道管と放射組織辺縁の大型細胞との間の半縁壁孔対または単壁孔対は円形から横長の楕円形で、対列状、階段状などの配列をする。チロースがみられる。
 材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊 維状仮道管にはときに少数の隔離があり、径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.003~0.004㎜である。
 軸方向柔組織はきわめて少なく、単独で散在する柔細胞と、放射方向に1細胞層ときに欠如する不顕著で不規則なターミナル柔組織とがある。多室結晶細胞が存 在する。柔細胞の径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜ほどである。
 放射組織は1~2、まれに3細胞幅で、3~20細胞高を示す。その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの軸方向端部、まれに中間にも存在する1~2層の単列部は丈が低い直立 細胞、方形細胞または丈がこれらとほぼ同高の大型の平状細胞の層であるが、これらの細胞の形は移行的である。細胞内には着色した内容物を含む。
 材の気乾比重は0.52~0.61、生材から気乾までの収縮率は接線方向約6%、放射方向約3%、縦圧縮強さ508 kg/c㎡、曲げ強さ935kg/c㎡、曲げヤング係数9.3×10(4)kg/c㎡、ヤンカ硬さ366kgの記載がある。
 製材、切削加工は容易で、平滑な仕上げ面が得られる。乾燥はやや遅いがあまり困難でなく品質低下は少ない。接着、塗装、研磨、釘、木ねじの保持な どはふつう良好で、蒸し曲げ加工もやや良好に行われる。心材の耐朽性は一般に高いと評価されている。辺材はヒラタキクイムシの食害を受ける。心材への防腐薬剤の注入はやや困難である。
 南米南方地域の広葉樹材のうちで材質優良と高く評価され、 この地域の重要な材の一つであるが、これまでに多くが伐採されて、現在では量が少なくなっている。概活的に用途をあげると、一般構造物、建築構造材、普通およびパーケットフローリング・パネル・ドアー・窓枠・階段・モールディングなどを含む建 築由装、造作材、家具、キャビネット、荷車フレームなどの車両材、諸種の器具材、箱と包装材、桶樽その他があり、これらはまたベニヤ、合板の形で利用されるものもある。  
41.Nothofagus pumilio KRASSER の概要
 Nothofagus pumilio KRASSER チリとアルゼンチンの中部、南部、フエゴ島に広く分布し高地にも生ずる。チリで Lenga,rauli de cordillera、アルゼンチンでlenga,roble blanco,roble lenga,roble de Tierra del Fuego,roble という。
 高さ30mまで、直径1.5mまでになる落葉高木ときに低木で、樹幹は円柱状、比較的通直である。樹材は種々変化があって粗である。若枝は紅色を帯び白色の皮目があり、黄色の毛を密布する。葉は卵形、卵状楕円形などで長さ2.5~4cm、鈍頭ないし円頭、 基部は広い楔形を示す。縁に規則的な重鋸歯をもち、5~7対ある側脉の間に常に2個の鋸歯がはさまる。果実の穀斗は2個の裂片からなり、堅果1個のみを含む。  
42.Nothofagus pumilio KRASSER の材の組織、性質と利用
 散孔材。辺・心材の区別はやや明瞭または不明慮で、辺材は淡紅白色など、心材は淡黄褐色、淡褐色、黄褐色などを呈する。生長輪が存在する。木理は比較的通直、肌目は精である。
 道管は単独および2~6個が放射方向に、ときに13個までが団塊状に 接続し、分布穀は100~140/m㎡である。単独道管の断面形は楕円形などで、道管の径は0.03~0.10㎜を示す。せん孔板はやや傾斜し、単せん孔をもつが、その先の尾状部にかけてバーが4~5個の小さい階段せん孔がある。道管と放射組織辺縁の大型細胞と の間の半縁壁孔対または単壁孔対は円形ないし不規則な形の横の楕円形などで交互配列ないし対列状に配列する。
 材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊維状仮道管に隔離は見られない。その径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.003~0.004㎜である。
 軸 方向柔組織はきわめて少なく、単独で散在する柔組織と、放射方向に1、ときに2細胞層または欠如する部分がある不規則なターミナル柔組織とがある。柔細胞の径は0.01~0.035㎜、壁厚は0.001~0.002㎜ほどである。
 放射組織は1~2細胞幅で、単列のものが多く、3~20細胞高を示す。構成は異性で単列のものと多列のものの軸方向端部1ときに2層の単列部は丈の低い直立細胞または方形細胞の層からなり、他は平状細胞の層からなる。
 材の気乾比重に0.53~0.59の記載がある。材の乾燥性、切削加工性、接着性、釘の保持はほぼ良好で、合板製造にも適している。材はほぼ良好で、合板製造にも適している。材は建築構造材および内装・造作材、家具、器具、箱と包装材その他に用いら れる。
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